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February 16, 2006

タロウのD通信第41号

――――― 拝金主義の落とし穴? ―――――

最近新聞紙上で北朝鮮の米ドル偽造のニュースを数多く目にします。それぞれの書き方は控えめであってもその内容は驚くべきものです。今までの情報を総合すると、北朝鮮が同国の造幣局で偽米ドル札を製造し、それを元手として堂々と商品の決済に使っていたことは間違いないものと思います。そしてその偽札を決済するための銀行をマカオに持っていたということです。ここで問題にしたいのは、個人ではなく、国家の犯罪として、実際に偽造した期間と使用した偽米ドルの総額は果たしてどのくらいなのかということです。先進国は米ドルを基軸通貨として、例年財務大臣会議を開催して各国の通貨供給量を正常運用できる範囲に調整しております。しかしこのように基軸通貨そのものがその調整の枠外で起こった偽札事案は、各国が自己責任で通貨の管理を行うという通貨管理制度の前提を根本から覆すものです。ある記事ではすでにこの偽札が、中朝国境経由で中国国内にも大量に出回っていると指摘しており、これらは、中国とロシア、カザフスタン、ミヤンマー、ラオスなどの周辺諸国との貿易の決済通貨とし長年使われていたことが読み取れます。とすればその総額は先日凍結されたマカオの残高である、数百万ドルなどといった単位ではなくその百倍、千倍の可能性すらあると思います。

ところでこの事実を米国側から見ると、仮に偽札であろうと米国はその自国通貨に対して信用を供与しておりますので、明らかに偽物と見分けられない限り、両替あるいは交換に応じざるを得ません。ということは、金融機関は正札として受け入れなくてはならないということになります。これは米国にとって通常の貿易や資本取引で流出した米ドルの総額に加えての対外債務となります。米国が米ドルの信用を真剣に守ろうとするのであればすぐにこのことを正式に各国に表明し、偽札を回収する作業をすべきです。しかしながらその動きは見られません。それはどういうことでしょうか?

先の金総書記の突然の広東・珠海(ここはマカオの隣接地です。)訪問の背景、またここにきての米国の急激な対中接近とこの二つの事実はこの問題の大きさを示唆しているのではないかと思います。米国にとって、重要なことは言うまでもなく、本件によるドル暴落の阻止です。そこで最もありがたいのは、偽札流通の最大の被害者である中国が本件に対しては、知らぬ顔の半兵衛を通してくれることではないでしょうか?一方で米国が中国の支持を得て北朝鮮に対して直ちに偽米ドルの発行を停止させ、本件を穏便に処理し、長期的に偽札を排除していくのであれば、この問題を顕在化させずに済みます。この結果、米国は一方で中国を敵視しておりますが、他方で米ドルの信用維持に協力してくれた恩人の中国に対して、譲歩をせざるを得ず、これは逆に中国にとっても6カ国協議や中米貿易交渉で主導権をとりアジアにおける自分の地位を安定化させるための切り札となる可能性があります。結果として米国はこれまでのように北朝鮮を高飛車には批判できないでしょう。さもなくば中国を敵に回してしまうからです。

ところで我々日本はどうでしょう、当然のことながら国内にも相当額の偽ドルが流通していると考えることが自然です。それは日本の銀行はしっかりと確かめもせずに高額の手数料を要求することで、ほぼ自由にドルの邦貨への交換に応じているからです。また政府もこの問題には手を触れずに相変わらず米国債を購入し続けるでしょう?偽札問題には敢えて手を触れずに。。。。

北朝鮮の行為はもちろん許せません。しかしドルの力を過信して今までのように拝金主義を推し進める米国がこれを機にこの偽札問題の背景および再発の防止を真剣に考え、自らの進むべき方向に修正を加えれば、将来に向けて安定はする可能性はあります。しかしながら相変わらず、ドルの基軸通貨の地位を利用したマネーゲームのみに走るのであれば、経済実態の裏付けのない紙幣だけが増刷される実態はとどまるところを知らず、その場をしのぐだけとなり、将来また、北朝鮮や他の反米国家が意図的にマーケットに対して、偽札供給をすることは否定できず、結果として破滅を迎えることが予想されます。これは歴史上経済運営の破綻から滅びた内外の数多くの王朝や政府が我々に教えてくれていることです。誰かがそれを食い止めることができるのか、あるいはそれができないのであれば、我々日本は、そろそろその破滅の道連れになるような愚な結末から逃れる手段を講じなくてはならないでしょう。

ここドイツではこの問題はほとんど報じられません。しかしながらかねてよりユーロ安の予想が続く中、最近になっても対ドルで1:1.2の強いユーロレートに一向に変化の兆しは見えません。80年代から90年代にかけて、ヨーロッパは拝金主義に痛めつけられた結果、ヨーロッパ人の自らの努力により手にした他者に振り回されない、安定した独自の基軸通貨ユーロを作った自信と成果が今まさに示されていると思います。

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