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September 18, 2006

タロウのD通信第66号

――――― ローマ法王の発言 ――――
先週ローマ法王が故郷であるドイツバイエルン地方を訪問した際、大学で行われた講演の内容についてイスラム教国家やキリスト教国家内からも数多くの批判・反応が出ている。これに驚いたローマ教皇庁は昨日声明を発表し、内容が正しく伝わっていないことを伝えるとともに法王自らが本件についての謝罪したとの報道が伝わっている。内容は法王がビザンティン帝国の末期の皇帝のコメントを引用し、イスラム教徒が聖戦(ジハード)を行う行為は非人間的で、邪悪であると暗に示したことによる。これに対して各国のイスラム教団体などから大きな、反響が出ているというのである。

実はビザンティン帝国については本稿第64号で、平和にキリスト教徒とイスラム教徒が暮らしている理想の形態として取り上げたばかりであり、これに対してキリスト教それも最大勢力のカトリックの法王自らがビザンティン皇帝の名を借りて、イスラム教徒を批判するようなコメントを出したことに対して、当方も意外であったが、実際に同じような考えを持つ多くのキリスト教徒の耳にも驚きをもって伝わったようである。しかしながら冷静に考えるとビザンティン帝国といっても引用された皇帝が存在していた、14世紀にはその版図は周辺のイスラム教国家の圧力を受け、大幅に縮小され今のイスタンブールと一部のギリシア側の領土のみとなっており、もはやその時代は1000年続いたビザンティン帝国の末期であり、当時の皇帝がイスラム教国家の侵略=オスマントルコに対して自身のふがいなさ嘆いても当然であるといえる状態であったことは理解しておきたい。これは当時の世界からすれば、強大化していたオスマントルコがビザンティン帝国に取って代わる時期であり、ある意味では滅び行くものの発言として理解すべきであると思う。しかしながら問題点はなぜこの時期にローマ法王は敢えてこの問題に言及したのかという点である。またこのことに言及することで自ら謝罪をしなければならない程の重要性の認識があったのかという点である。仮に法王ともあろう人がこの点で無認識であったのであればこれは大問題であるとともに、ベネジクト16世の能力・適性にも問題があると理解せざるを得ないが、そのようなことはありえないと信じたい。

そもそもキリスト教にはギリシア正教を中心としてロシアなどで普及している東方教会、ローマを中心としたカトリック教、またドイツなどで広く普及しているルター派プロテスタント、英国の国教会が認めるプロテスタント、またアメリカで共和党勢力を中心に主流となっているカルバン派やそれに続く清教徒派の流れを組むメソジスト派プロテスタントなどがある。その中で、911以後、アフガニスタン、イラクと一連の紛争の当事者となっているのは、現実にはアメリカプロテスタントとイスラム教徒それもアルカイダなどの過激派イスラム教などである。その中でカトリック教は常に両者間の平和的な解決を願い、キリスト教とイスラム教の共存を図ってきたと認識していた。少なくとも前法王の時代はそれが基盤となっていた。しかし新法王は自らこの路線に対して修正を加えつつあるのであろうか。実際のこの発言を聞いてドイツのネオナチを信奉する人々はより過激となったと聞いている。また保守的なイスラム教徒よりはローマ法王とブッシュ大統領は同じ穴の狢ではないか、といった発言も出てきている。

ドイツのおいてはシュローダー前政権に対してメルケル政権はその方向性を従前の反米路線から、親米路線へと転換を目指している、その流れの中でドイツ出身の法王がその変化に影響され宗教的に同調してしまえば、ますます米国とイスラム諸国の関係は悪化し、世の中は乱れるのではないかと危惧される。それだけに世界が平和であるためにも、ビザンティン帝国の国教であった、ギリシア正教とメソジスト派プロテスタントとの中間に位置している、カトリックのトップのこの発言は今後の動きを見るに非常に重要であることを認識すべきである。法王自らが異例とも言える謝罪の意を表明したことや、それに続くこの問題の幕引きがどのように行われるかについて注目していきたい。

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