タロウのD通信第67号
――――― 安倍新政権に思うこと ―――――
昨日安倍新首相の所信表明演説も無事終了し、アインシュタインの日本人感の引用やIT技術の最大限の利用の提言など現実的かつすばらしい表明と思う。それだけに52歳の首相の今後の舵取りが楽しみでもあるし、是非日本をよい方向に導いてほしいと思っている。ところですばらしい演説の中で内容をよく読むと、再チャレンジとか教育再生といった政策の表明があったが、これらに対してはどうもはっきりとその目指すところが分からない。何ゆえに今この時点であえてこのようなことを言う必要性があるのか、首相の説明を聞いただけでは釈然としない。
教育に関して言えば、そもそも勉強をするあるいは、しないは、個々人の自由裁量に任されており、また個々人はそれぞれに個性を持ち合わせているのであり、それらの個人の状況を勘案して、日本人として最低線必要な考え方や計数能力を教えるというのが義務教育の目的であると思う。その上で勉強をしたい人は自主的にしっかりとやり、したくない人は、それぞれの適性に合わせて、勉強はやらなくてもスポーツや他の技術会得すればよいというのが私の考え方であるし、これが一般的な考え方であると思う。然るに今回の所信表明のように個々人に対して規範意識が持てる教育を強制的に進めるということは、無謀でありその実現は不可能でないかと思ってしまう。むしろそのような強制化は結果的に過当競争を生み出し、社会の出来る出来ない者との階層化を促すのではないか危惧される。また同じく再チャレンジについても、なぜ必要なのかよく分からない、チャレンジすることはあくまでも個人の自由であり、その自信や勇気のある人は国がそのようなことを言わなくても自分の判断でチャレンジし、失敗したらまたどこかで力を蓄えてチャレンジするものであり、それを国があえて管理する必要は無いはずである。
しかしながらなぜこれらが政策の主軸として提言されるのであろうか? これは安倍政権の問題というよりも、今の日本が進もうとしている太平洋の向こうの国アメリカ発の2大政党化の方向性にこそ、その問題があるように思える。アメリカは自由主義、民主主義を謳っていてもそれは現実にはかなえられていない、有色人種やヒスパニックはいまだにいろいろなところで差別をされている。この事実を考えるとき、アメリカの言うところの自由主義、民主主義は実は国民すべてに対してではなく、WASP(White. Anglo-Saxon. Protestant) と称される白人、かつプロテスタントを信ずる一握りのアメリカ人のみあるいは、それと同等の教養をもっている選ばれた人々のみを対象としているのではないかと思う。アメリカのパブリックスクールでは落ちこぼれはそれとして容認している、しかしながら彼らはそれにより社会の下層部に一生暮らすことになる。そしてこの下層部を政治的に押さえ込む制度が2大政党政治のあり姿と見ている。即ち共和党政権でも民主党政権でも、WASP重視の本質は変わらないのである。実際に歴代の大統領の中でWASP以外の出身の大統領はただ一人カトリック教徒の故ケネディー大統領だけであったことを見てもこの問題の重要性は明白である。実際にアメリカが採用している2大政党制はこのように現在の社会的な構造を維持するには非常に便利な仕組みといえる、即ち社会の上層部のみが高等教育と再チャレンジの制度に守られて未来永劫に上層部の地位を確保し、それ以外は逆に一部の例外を除いて未来永劫下層部に安住し続けるということである。
当方が危惧しているのはそのような仕組みが果たしてこれまで単一民族国家として、また一貫して皆が稲作を生業にして協同作業により生産活動を続けてきた日本人に相応しいかということである。皆がひとつの仕事にそれぞれの立場から主体的に従事するには当然のことながらそれぞれの人が平等でなければ、組織はまとまらないし、相互信頼は得られない。そこにアメリカのように上層部と下層部を分ける仕組みを導入したら、この国はまとまらないのではないか、そんな気がする。
ヨーロッパではアメリカのような国内に二つの層を認めることを前提とした政策はもはや、古いやり方として、敬遠されつつある。それはそれぞれの国家の移民対策を見ればあきらかである。出身国はどこであれ、ヨーロッパにいる限りヨーロッパ人としてみなし、すくなくとも下等人種として差別をするようなことは受けいれない方向となっている。この点で我国ももう少し米国以外の国の仕組みを理解すべきと考えている。
今回の安倍首相の所信表明演説の背後には日本人の思考の根底にある、アメリカの占領、アメリカの主導、アメリカへの依存の考え方への肯定が強く感じられる。まるでそれが国民の総意に基づく、既定路線であるかのように、である。これは危険なことである。
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