タロウのD通信第79号
――――― 6カ国協議の休会とサハリン2の問題 ―――――
6カ国協議が何も成果なく終わった。新聞の報道によれば北朝鮮が所有する核の放棄をどのように進めるかについて話し合う場として用意された会議において、北朝鮮はその話合いの前提として金融制裁解除を持ち出したために、結果としてまったく双方の歩み寄りがなく終了したとのことである。北朝鮮の強気が効を奏したと論評している新聞もあった。これにより北朝鮮は新たなる核の開発に必要なさらなる時間を確保することができたことは事実である。一方時を同じくして日本の三井物産、三菱商事が推進していたサハリン2の天然ガスプロジェクトのロシア側への権益譲渡の交渉に決着がついて、国営会社のガスプロムが本事業における主導権を外資側から買い取ることが決まったとのことであった。即ち外資側が今まで投資した60億ドルの権益を75億ドルでロシアがプレミアをつけて買い戻すことで円満解決したとの記事であった。
一見この二つの事案はまったく関係が無いように見えるが、実際はその内側にある事情にはひとつの背景があるように思える。というのは北朝鮮が金融制裁解除にこだわる理由として発言した内容にそのヒントがある。それは先に報道されたように同国はアメリカが金融制裁をして外貨の送金をさせないから、しかたなく現金決済しかできなかった。その際たまたま、誰かがその問題を悪用して偽ドル札を流通させたことにより、意に反して決済に使わざるを得なかった、だからこれは北朝鮮が意図してやったことではなく、偽札が簡単に受け入れられるドル通貨の流通環境に問題があり、同国はむしろその被害者であるとの言い訳に、彼らの考え方の本質が見える。実際にこの言い訳に対して米国の正面からの反論は報道されていない。一方で非合法とか、犯罪行為として米国基準をもって抽象的に非難する発言は聞こえるが、残念ながら、それを持って世界各国の同意を得て、北朝鮮を納得させることはできないでいる。その原因はどこにあるのであろうか? 当方が考えているのは、アメリカを始めいわゆる先進7カ国は勝手に協定を結び、この20年来自国の通貨を打ちでの小槌のように増刷した結果、大量の先進国通貨が余剰となり、これが世界中で落ち着く先がなくなり、浮遊しているにも係らず、一向にこの問題を解決しようとせずに放置していることが問題の本質であるとおもう。それ故に今回の北朝鮮のように、先進国の無責任により多額の余剰資金を放置していることと比べれは小額の偽札の製造流通などは大したことでは無いと言った開き直りといってよいような論法が通ってしまうのである。結果としてそこをついた北朝鮮が持ち出した切り札が、その打ちでの小槌の廃棄こそが、核の廃棄に先立つものであるということであり、これに対して米国は何も反論できず、北朝鮮の期待するさらなる時間稼ぎを成しえた背景であろうと思う。
一方で今回のロシアのサハリン2天然ガス権益の問題もそれに類似している点がある、これは1994年に当時のエリチェン政権が経済の混乱の中、外資の導入を唯一のよりどころとしてロイヤルダッチシェル、三菱商事、三井物産の共同体(サハリンエナジーインベストメント)との間で結んだ契約であり、日本側が60億ドルを出資することで応分の権益を渡すこととした契約である。結果として外資側は本プロジェクトの主導権を握る形となった。しかしながらその後のプーチン大統領による、ロシアの国家主導の資本主義の推進は自主的な経済運営に自信を深め、かつ将来を展望するとよりいっそうの天然ガスの価格上昇が見込めることから、今般環境問題を持ち出し、強引に主導権を取り返したのである。その背景にはプーチン政権が、世界的に余剰となっておりいつ下落をしてもおかしくない、ドルを始めとする先進国通貨の危うさに気づき、過去に簡単に金の力で先進国に主導権を与えてしまったプロジェクトについて、強引にそれをとり戻し国益を保護することを重要な政策として実行していることが理解できる。まことに当を得たやりかたであると思う。
先進国7カ国の内で特に、米英日加の4カ国はこのような状況下でもかたくなに、米国主導の新自由主義の政策を採り続けており、世界の環境が変わってもこの路線に修正を加えようとしない。今の自民党即ち、安倍政権では特にこの傾向は顕著である。一方で時代は確実に変貌し、資源国はこの通貨のからくりをしっかりと認識し始め、自国の資源を戦略物資として先進国の通貨支配から脱しようとしている。この動きが強まれば強まるほど、石油などの資源の価格は高騰しつづけることになる。このままでは先進国自体の将来に必ずや多きな危機をもたらすものと思う。ここで気をつけなくてはならないことは、今の資源価格の高騰は実は高騰ではなく、先進国通貨の資源に対する価値の下落であるという事実なのである。一方で資源のない北朝鮮がそのよりどころを核兵器にもとめたことはある意味では自然の流れなのかもしれない。
今の為替レートは、円が対ユーロで155円、対ドルで118円という数字はいかに日本がこの問題に不誠実かつ怠慢をしてきたかを正面から表しているに他ならないと思う。もう打ちでの小槌は自らすすんで廃棄すべきときではないか? と真剣に考えている。いかがでしょうか?
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