« タロウのD通信第75号 | Main | タロウのD通信第77号 »

December 01, 2006

タロウのD通信第76号

――――― Intellectual Property Rights (知的財産権) ―――――
ドイツから見ても、最近の中国とインドの世界経済における台頭はすごいものが有ると感じております。それは毎日欧州から中国、インドに数多くの直行便が飛んでいることをみてもよく分かります。とくに両国はBRICsとして世界で注目を浴びている国の中でも、共に10億人以上の人口を抱えている大国であり、欧州人もこの両国といかにかかわりを持つかが今後のビジネスの成否を決めるものとして真剣に考えおります。その中でどちらを将来のパートナーとして決めるかについては、いわゆる知的財産権の保護の相違が大きな要因となっております。実際に両国がどのように異なりどのような結果となっているのかについて、私の従事している医薬・化学業界での動きを通してみてみましょう。

中国は確か21世紀になる直前(確か1997年?)に化学物質の物質特許の受け入れを発表しました。それまでは世界の最新商品について国内限定使用を名目としてほぼ自由にコピーをしてきました。しかし年々大きくなる貿易の拡大による諸外国との関わりの増大と、世界的に高まっていた知的財産権保護の動きに対抗できずにやむなくこれを受け入れをしました。そして実際にそれまで作り上げた、コピー商品を97年以降はその製造を自発的に取りやめるなどして、前向きに対応してきております。特に一部の医薬品や農薬などついてはこの動きは確かにありました。しかしながら開放政策の全中国への普及に伴い、地域間の格差が拡大し、統一の取れた、総合的な管理は現在でも困難であり、貧困地帯では国内限定を言い訳としての模造品の製造は活発に行われております。それは今でもよくニュースなどで取り上げられ話題になるコンピューターや映画のソフトなどと同じく一部の医薬品などでも模造品の問題が指摘される背景となっております。中国政府はこれらの取り締まりを年々強化しておりますが、13億の人口を抱える広大な中国では、すべての取り締まりは不可能として実質的には一部を黙認せざるをえないとしているのが現状です。一方インドですが、1995年の時点で2005年度の先進国基準による知的財産権の完全保護制度の達成を国家目標として掲げ、模造品の取り締まりに徹底的に取り組み、この10年間ほぼ完璧にそれをこなしてきました。実際にインドを旅行すると日本や中国で一般化しているアメリカ的なものたとえばマクドナルドを模したハンバーガーの国産版の会社などはほとんど見かけません。また映画やテレビ番組などのインド伝統のダンスをモチーフとした他には例のない豪快な番組などがあり、模造どころか、ボリーウッドなどといって、ハリウッドの向こうを張って、独自の地位を築いております。これは国家として徹底的に知的財産権の保護を進めた結果でしょう。その結果この政策を前向きに捉えた欧米の多国籍企業は、インドを信頼できるパートナーとして位置づけ積極的に自社の所有する鍵となる技術の提供をはかり、インド企業にての自社製品の下請け製造の事業化を進めました。また英語を解し、400年に渡っての英国統治の影響を受けているインド人にとっては欧米の技術、情報、スタイルの取得は中国人や日本人のように難しいものではなく、確実に欧米企業の提携先としての機能を強めていきました。その結果として欧米企業はITなどの最先端技術もインドに持ち込みまた我々がかかわっている医薬品事業においては最先端の医薬品の原末=APIの製造委託先としてその立場を強化しております。その上にそれらで得た技術を応用して、独自にオフパテントの医薬品も積極的に開発、事業化して今では世界に冠たるジェネリック薬の供給国となっております。即ちインドは知的財産の保護に真剣に取り組みそれを成し遂げたわけです。

以上が現状ですが、この両国の知的財産権の取り扱いの違いに気がつくことにより、このような違いが発生した背景には何が影響しているのであろうと考えると面白いものが有ります。中国は欧日の列強に侵略され、日中戦争後はアメリカと朝鮮戦争で戦い、その中で多くの困難に立ち向かいながら今の国家を作ってきました。またその中で国を維持発展することがもっとも重要な使命となり、特に開放改革政策が本格化する70年代以前は諸外国の先進技術を国家主導で簡単にコピーすることを奨励してきた事実があります。またそれが社会主義陣営として存在することで資本主義国の批判をかわし、許されたという背景もあります。一方インドは400年間続いた英国の植民地支配に自らが非暴力不服従の方針を貫き、見事にどうどうと独立を勝ち取ったという歴史があります。そこには類まれな意志の強さと、頑張りぬいたという輝かしい歴史があります。またその後も他国に頼らない自力更生の道を歩みかつ英国より移入した民主主義を確実に守り発展させております。

この場でどちらがよいということは議論をする必要はありませんが、その違いがそれぞれの国家の特長となり、欠点となっていることを我々は十分に認識してそれぞれに適した、安全・確実なお付き合いをしなくてはならないと思っております。いま中国、インドを初め、ブラジル、ロシアなどBRICS諸国のプレゼンスが年々大きくなる中、今までの考え方は通用しなくなりつつあることを我々は認識すべきと思います。

|

« タロウのD通信第75号 | Main | タロウのD通信第77号 »

アジア」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/76174/12880032

Listed below are links to weblogs that reference タロウのD通信第76号:

« タロウのD通信第75号 | Main | タロウのD通信第77号 »