タロウのD通信第81号
――――― 消費税増税の実感 ――――
2007年1月1日よりご存知の通りドイツ国内の消費税が従来の16%から19%に引き上げられた、これにより苦しい家計にますます追い討ちが掛かるかと悲観していたが、現実にはそれほどでもない、その理由は、実際に消費税が引き上げられたといっても家計費の大部分を占める食品については今までの同様に7%に据え置かれたままだからである。ドイツに住み始めた当初は16%の高税率や食品だけが異なることに若干の抵抗を覚えていたが、今では全く当然のこととして感じている。
というのは我々には庶民ならではの防衛策があるからである。例えば近くの日本食レストランに行ってたまには寿司でも食べて贅沢をしたいと考えるとまず懐具合を見る、もちろんたっぷりとキャッシュがあるときはそのままレストランに行って、美味いアルトビールを頼みながら寿司をつまむ訳であるが、これが財布の中身が乏しいときには、自宅より日本から持ち込んだ寿司桶を持参してここに入れてくださいといって寿司を入れてもらい家に持ち帰る。すると19%必要であった消費税が7%ですみ大幅に安くなる、またビールも近くの酒類ディスカウントスーパーで購入すれば中瓶一本で60セント(100円弱)であるのできわめて安くつくという寸法である。またEUが拡大したおかげで、南のスペインのかんきつ類や旧東欧のワインなどが関税なしで入ってくるので、手元に届く価格は産地価格と同等でかなり安い。したがいこれらの仕組みを併用すれば、今回の19%といっても、問題なく乗り切ることができるのである。もちろん会社の接待などでは接待費用は我々の使う金額程度なら基本的に会社の経費よりすべて控除されるわけにてこの消費税については気を使う必要はあまりない。今回の消費税の引き上げにより電気、水道代などのユーティリティーや子供学校、学習塾などはその分影響をうけるが、食費と比べれば一定かつ総額が少ないのであまり負担には感じていない。
それではこの値上げにより一番の負担を蒙るのは誰だろうか、これは世界各国からドイツの名勝旧跡を訪れる観光客の皆様がご負担されると考えればよい、もちろん高額のブランド品を持ち帰る際の消費税リファンドの仕組みはあるが、通常の宿泊代や食費、交通費などでしっかりと例外なく海外からの旅行者が負担してくれるからである。その結果どうなるかといえば巷のレストランなどは喜んでお金を使ってくれる海外の顧客に目を向けることになり、その結果デュセルでも多くのイタリア料理やドイツ料理店でも英語や場合によっては日本語のメニューを用意して準備万端でお客様をお待ちするのである。それだけドイツも含めて欧州の国々とって海外旅行客が落とすお金は重要であり、特に消費税率の高い国ほど観光客の重要度は高いということになる。結果として国を挙げて観光業の育成を目指し、サービスの向上に取り組むのである。それだけに極東の国からわざわざ高い航空運賃を払ってきてくれる日本を始め韓国・中国の観光客はまさに上客であるといえる。
ところで今回のこの時期に消費税値上げが決められた背景として、ドイツ経済の好景気があげられている、EU統合後ドイツからの域内輸出は関税が掛からないので欧州域内を中心に大幅に伸び、それが好景気をもたらせたとしている。しかし実感では、あまり好景気には感じられないが、あくまで統計上の数字だけなのかもしれない。それでは今回の増税分はどこに行くのであろうか、これは日本と違いはっきりとしている即ち国家財政赤字の穴埋めに使われるのである。それはEUの独自基準として各加盟国は例年の財政赤字の総額をGDPの3%以内の抑えることを取り決めている、実はドイツはここ数年これを守れずに、EUからはイエローカードを突きつけられていた。これに対して旧東ドイツの救済援助を、言い訳として持ち出し難を逃れてきたがいよいよ、これは通らなくなり今回のメルケル政権発足とともに増税に舵を切ったわけである。これに対して国民は仕方がないこととしてこの決定を受け入れている。
一方我祖国である日本は新聞記事によると本年の財政赤字増加率がドイツと同じ基準で見ると、GDPの6%を越えているというのに、これに対しては赤字国債の発行総額の減額のみでお茶を濁している、いやむしろ成果を誇っている。その意味では借金に対してきわめて不健全な取り組みをしているといわざるを得ない。ここでいう借金とは赤字国債や借入金それに類するものであり、これは実質的に余剰通貨として流通しうる部分であり、これの使い道を誤れば国家的な大インフレを起こす可能性を持っているものである。実際に財政赤字の累計額でドイツはGDP比約70%であるにもかかわらず、日本は200%と群を抜いているのである。本稿では前からこの点を提言してきたが、一刻も早くまじめに取り組まなくては国家破綻を招き次世代に対して大いなる負担を強いることになるのではないかと危惧している。これは小泉政権以来、アメリカ一辺倒の政策をとり続け、アメリカに右へ倣いで、現状の是非をよく認識しなかったことに起因している。結果として日本はアメリカ以上の借金を財政的に負担することになり、いまや国家地方を合わせて1000兆円に上る国民に対する借金がある。一方でアメリカの実情は財政赤字の総額は日本と同じレベルながら、貿易赤字を見るともっと悲惨である、調べた資料では過去20年間に渡る貿易赤字の累計(対外債務額)がなんと3兆ドル、360兆円となっており、仮に貿易黒字国である、日本や中国がこれを皆が帳消しにしてほしいと動いたら、状況は一気に変わることにある。実際にその一部は米国債の海外保有残高として反映されており、総額は7000億ドル(84兆円)といわれており、そのうちの2000億ドルが日本、1000億ドルづつを中国・台湾がそれぞれ所持しており、これらの国が米国国債を売りに出せば米ドルの下落を招き、世界経済はすぐに危機に瀕する状況となっているのである。つまり日本は自国の財政赤字を放置してもなお米国債を持ち続け米ドルの安定化に貢献してきたのである。
日本では消費税議論をタブー視する見方がある。確かに消費税を上げても米ドルの安定化に原資が使われるようでは、これでは国民の納得は得られないと思う。消費税から見ても日本に今求められるのはアメリカよりの自立であると思う。
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