シカゴでの休日 vol.82
仕事と休暇を兼ねて、アメリカ合衆国シカゴに滞在した。以前仕事で何度かアメリカは訪れているが、いずれもニューヨークが中心で今回のように大都市とはいえ地方都市にまとまって滞在する機会は無かった。それだけに今回はじっくり街並みや人々の営みを見ることが出来て有意義であった。ちょうど今週の日曜日にはNFLのナショナルカンファレンスの決勝戦があり、降りしきる雪の中でご当地のベアーズが優勝を果たし、来月フロリダで行われるスーパーボールへと駒をすすめることができ、大騒ぎであった。ドイツと比べてまず感じたのは、
当然のことながら街の看板もほとんどがローマ字で書かれているので、その点では大きな違和感はないが、デュセルドルフを始め多くの都市がそうであるように先の大戦により一度街並みすべてが廃墟と化し瓦礫の山となり、そこから立ち直り建設された新しい建物がほとんどである風景とは異なり、古い建物がそのまま残っている点が印象的であった。特にLoopといわれる環状高架鉄道のように今でもプラットホームやホームの柵などに木材が多用されていることに驚いた。まるで西部劇のセットのような情景であった。これとシェアーズタワーに代表される超高層ビルが渾然一体となっている風景が目に留まった。一方で失業者、特に黒人の街頭生活者が多いことにもびっくりした、週末彼らは寒い外気に触れないように地下鉄の車内に逃げ込んでいるようで、どこに行くのか目的地も無く一日中乗車している姿があった、大きくきらめいている超高層ビルで颯爽と働く人との間で大きな格差があることを浮き彫りにしていた。ところでシカゴは今では世界のどこにでもあるマクドナルドの発祥の地であるとの事で設立50周年記念店というのがダウンタウンにある。そこで働いているスタッフをみると、このファーストフードという文化は実は顧客を対象として発明された食文化ではなく、誰でも簡単に仕事に従事できることを考えて簡略化された、就業支援的な側面から発展した文化なのではないかと改めて思った。即ちファーストフードレストランのスタッフならば調理師の資格は無くても誰でも立派に食事を提供できるからである。結果として味覚などは画一化してしまい、食事としては物足りないものとなるが、それよりも雇用には大きく貢献することになる。先日読んだ新聞記事ではブッシュ大統領の大好物はハンバーガーとのことで、この文化が深くアメリカに浸透していることがよく分かる。しかし地球温暖化が世界的に叫ばれ資源の無駄遣いを減らそうとしているのにも拘わらず、大量のプラスチック容器の使い捨ては何とかならないものか、気になった。一方で日本車の比率が多いことにも驚いた、しかしながらよく見ると日本車でも新車の比率はあまり多くないようである、しかしながら型式の古い車の多くは日本車で、90年代に日本でも話題になったクライスラーのネオンのようなアメリカの中古車はほとんど見なかった。よく言われるようにアメリカ車の耐久性に問題があるのかもしれない。一方見るからに中古と分かるレクサスを颯爽と乗りこなす、当地の若者の姿は日本車の優秀性を物語っているのかもしれない。
今回は4日間の滞在ではあったが毎日街を歩きながら考えてみた、その結果今日本が迎えつつある、格差社会の一つのあり姿が垣間見られるような気になった、即ち政府は教育再生・再チャレンジなどといっているが、この国のように一度落ちこぼれてしまえば、自信を取り戻すことはなかなかできずに一生涯底辺の暮らしをすることになることの可能性があることを問題にすべきである。というのはファーストフードもそうだが、この仕組みでは個々人は努力をせずに生きるための最低線の賃金を稼ぐことができるが、これは逆に努力を通じて工夫する機会を制限する。結果として人々はその日その日を生きるための金を稼ぐためのみに働くことになり、労働は喜びではなく苦痛となってしまう。一度苦痛と感じてしまえばこれを積極的にやることができなくなり、結果として投げやりになってしまうのではないかと思う。昔のように徒弟制度の中で、最初は奴隷と同じように修行をしながら、その中で一つ一つ工夫することを覚え、それが自信となって自立し、新しい手法を発明したり、その道のプロとなる、このようなアップグレードができる仕組みの確保こそが、人々の喜びではないだろうか? これがひいては国家繁栄の基礎になるのではないかと改めて感じた次第である。その意味では今のアメリカの仕組みはちょっと違うと感じてします。
この国と日本との大きな違いは歴史的に支配者層と被支配者層がはっきりしていたことではないかと思う。即ちWASPは常に支配者層のトップに君臨しようとして、全力を上げる、一方黒人は機会が無いままに奴隷時代からの続く被支配者層に甘んじることを受け入れてきた。しかしいろいろな分野で変わってきている、今回のNFLでスーパーボールに参加するシカゴベアーズとインディアナポリスコルツが共に黒人監督であることが当地で話題になっている。このように時間をゆっくりとかけて本当に皆が平等な民主国家が出来るのかもしれない。その意味でアメリカはまだまだ発展途上であり、実験中の国家なのであろう。それだけに一辺倒でこの国の文化を受け入れる前に実態を良く知っておく必要があると思う。
最後に日曜日の地下鉄の中で、薬物常用者とも見える不健康そうな、白人が突然葉巻を吸い始めた、結構席が埋まっていた社内の中で、乗客はいっせいに彼に注目したが、表立って注意する人はいない、その中でサングラスの若者が大声ですぐ消せと注意をしてやめさせた。その時、一筋の光明が差し込んだように感じた。いろいろな問題はあるが、まだまだこの国はしっかりとしたものを持っているのではないかと。
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