最近の円安このままでよいのか? vol.90
本日も愛読紙産経新聞のWEB版に最近の円安は行き過ぎであるとのコラムが出ていた。当方も同感である。直近のユーロの対円レートは163円であった。これはG7を毎年開催し通貨協定を結び実質その通貨の価値基準を1ドル=1ユーロ=100円として計算していることより考えると、なんと40%近く、切下がっていることである。これにより日本製品の欧州市場での販売は好調であったが、ここに来て息切れを示しているようである。たとえば車については、昨年までは日本の工場で製造し高品質と斬新なフォルムで好調だったマツダ社の販売が落ちてきている、一昨年前にはあちこちで見かけ、多くのドイツ人が羨望のまなざしで見ていたのである。ところが最近ではさらなる円安にもかかわらず、見かけなくなってきた。このことは円安だけで輸出はできないということを示唆しているではないだろうか。
ところで当地から見るとこのような過度の円安はどのように映るのであろうか?まずもっとも感じるのは日本に一時帰国した際の生活コストの安さである、一旦成田の通関をでて、日本に入ると、宿泊費用、国内交通費また食費はすごく安く感じる。即ち一泊一万円のホテルに宿泊しても60ユーロ強にしかならず、ファシリティーの良さを考慮すると非常に得をした気分になる。しかしながらもっとも驚くのは食事のときである、例えば牛丼を食べると300-500円で一回の食事を済ませることが可能だか、これはなんと2-3ユーロということになり、当地ではサンドイッチひとつが買えるか買えないかのコストで十分に満足できるのである。ということは逆に言うと日本から欧州へ出張するビジネスマンは円安による価格高騰に悩ませられることになる。100ユーロのホテルといえばせいぜい3星の中下等クラスであるが、ここに泊まるのに一泊1万6千円以上の出費がかかることになる。またこのクラスのホテルでは日本で得られるような快適なインターネット環境にはほとんどめぐり合うことはできずに、日常の業務連絡に支障がでることは目に見えている。かりにインターネット完備の十分なファシリティーホテルを選んで宿泊すれば150-200ユーロは最低必要になる。また外食でも通常であればお買い得セットでも20ユーロ以上はするので、これにワインをつければ一人当たり30ユーロから40ユーロは覚悟しなくてはならない。40ユーロといえば6500円であり、これならば東京の中心でそこそこのイタリア料理ならば堪能できる価格である。
新聞などの論調によると、この円安は米国が日本政府に対して円を低金利に抑えことを要求しそれにより米国国債を購入しやすいものにした結果起きた副作用としている、また最近では円のキャリー取引なる言葉も一般化して、金利の低い円を金利の高いユーロや米ドルに交換して金利差を稼ぐための取引が活発化しておりそれにより円安が増進しているとのことである。そして行き過ぎた円安は永遠のものではなく、これが続けば経済のファンダメンタルに大きな歪みが生じるとの論調である。このことは上記に例をあげるまでもなく、我々の将来の安定的生活の確保に大きく関わっているのである。例えば先日日本ではガソリンの値上げが発表されたその理由は原油高と新聞、テレビなどマスコミは一様に発表したが、ここドイツでは全くそのような兆候はない、これは実質原油高の影響は一部であり、その多くは円安及びドルの対ユーロ下落の影響と私は見ている。即ち現在の原油の価格はユーロにリンクしており、ユーロでいくらという形で決められている、したがいドル建てではすでに対ユーロに対する下落分20%分が高くなり、ましてや日本円建てではこれに対ドル下落分の20%分が上乗せされ合計で40%大幅な原油高ということになる。実際ドイツではガソリンの価格上昇などといったことは全く起きておらずむしろ昨年末に比べてLiter当たり、10セント前後下落している現状だからである。
一方欧州と日本・アジアの架け橋の仕事をしていて、非常に気になることがある、それはこの円安が、日本企業が欧州から新技術やデザインの導入に大きなブレーキをかけていることである。日本企業はすでに製造コストでは中国やインド企業に敵わないので、最近ではデザインや新機能をどこよりも早く商品化することで高価ながらも良い商品を輸出してきた。しかしながら一口に新技術といっても簡単に開発できるものではない、それは欧米では埋もれている技術を、対価を払って導入しそれをより向上させることで品質・機能を向上させることが可能となり、世界に認められる商品を販売できることであった。しかしながらこの円安は新技術、デザインの導入を著しく妨げている、これは上記のマツダ車の不振の現状を示しているのではないか?一方実質的にユーロとリンクしている中国企業は日本を跳び越してどんどん欧州の一流技術を導入して、自国製品の強化に努めている。こうなるともはや日本の製造業は風前の灯ではないだろうか?ところで当地デュセルドルフには多くの日系の有名メーカーの支社があるが、最近多くの企業が自社の中国工場の製品を欧州に輸出していることはご存知であろうか?これはすでに日本国内での製造業の実質的な崩壊を意味しているに他ならないのである。日本の大メーカーは政府の無策に愛想をつかし自らの存続を懸けすでに日本を見限っているのである。この現象をこのまま放棄しておいて良いのであろうか?実際に現在の日本政府の動きを見ていると一体我国をどのような方向に導こうとしているのかが定かではない。アメリカやイギリスのようなドルやポンドといった基軸通貨は持たない日本が金融立国になれると思っているのであろうか?それとも見かけだけ独立している円をドルと併軌(同一通貨とすること)して本当の米国の属国になるべきと考えているのであろうか? 今危惧されることは、日本政府即ち日本人自体が自国の将来にしっかりとした青写真を描けていないことである。日本は金融立国ではなく、いままでのように技術立国、製造業立国を目指すべきではないだろうか?そこがはっきりすれば政策もクリアーになるはずである。そうすれば目的が曖昧な円低金利を元に戻し、自国の製造業の安定発展を図るべきではないだろうか?今ドイツからみると日本の存在が年々小さくなっているように見える。非常に嘆かわしいことである。
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