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June 09, 2007

これでもまだ躊躇するのか? Vol.98

先日NHKのクローズアップ現代で厚生労働省の事務方のトップである、事務次官が国民に対して、社会保険庁の年金問題について謝罪としどろもどろの弁明をしていた。内容は徹頭徹尾平謝りであった。事務次官が自ら出演し、自らの非を認め、抜本的な改善策を提示できないということは極めて異例である。実際に過去には職員の不祥事や個々の案件でのミスジャッジに対しての反省の弁ならばあったが、今回のように関係省庁の過去からの仕事全体に対する謝罪といったことは聞いたことがない。これは同省のトップが関連庁の存在理由そのものを否定したにも等しい発言であると思う。ところで私が驚いたのはその後の対応である。当然年金事件についてはその責任の所在をはっきりさせて、処分がある筈と思ったが、当の事務次官も含めてまったくそのような発言はない、またマスコミも何も話題にしない。一方で民間出身の同庁長官が丸の内で、これで禊が済んだとばかり自ら謝罪のビラを配布するといったパフォーマンスばかりが目立つ。これには違和感があった。

ところで現在国会で紛糾している法案に公務員制度関連法案がある、これは長年問題となっていた天下り問題に対して一石を投じる、安倍政権の根幹となる法案であるが、本国会も終盤になるにつれてどうもその行方が怪しくなってきた。成立の可否も問題であるが、その前に果たして実効性が得られるかが問題なのである。ここのところの自公政権を見ていると、現状の国家運営において、制度や運用には多くの問題はあるとの認識は持っているものの、それはあくまでも制度の問題であり、運営主体である役所自体には問題がないというスタンスを取っている。結果として新しい法案は数えきれないほど制定されるが、実際には本質論にはふれることなく、まったく実効性がなく現状の維持がなさせるだけである。上記に記載したが、先の厚生労働省の事務次官の謝罪という事実は、制度運用の問題ではなく、その役所の存在そのものの問題であることを忘れている。

日本は戦後臨時復興政権で、アメリカの庇護を得ることが可能であると分かると、すぐさまこれを受け入れ、経済の復興を旗印に掲げ猛烈に働き、組織を作り経済復興にまい進した、目標は国の形はともあれ、いち早く外貨を獲得でき、国民が安定した生活をすることが可能な仕組みの構築であった。この政策は多くの国民を納得させ、その支持を得てきた。その結果、国の役所は大蔵省、通産省、運輸省、郵政省などといった各事業目的別に細分化され、それぞれに東大を中心とするエリート大卒のキャリア官僚がトップとして仕切ってきた、またその役所の方針を民間企業に守らせるために、都市銀行を中心とした金融グループ化を推進して、金により各企業を銀行経由間接的に支配できる体制を作った。また国策に合致する事業にはより有利な条件で資金提供を行うことで、その影響力を保持し、一方では企業間や大企業と中小企業の格差が拡大した。また民間企業は少しでも有利な条件での資金獲得を求めて、こぞって国が何を考えているのかを知ることに腐心し、高級官僚と同じ大学の卒業生を大量に確保して、有益な情報取得に奔走した。結果として多くの大企業では個人の実力とは関係なく、学閥が出来上がったのである。これにより日本株式会社の組織は磐石なものとなり、企業間でも同じものさしでその優劣が測られることになった。この世界でもまれに見る株式会社日本の仕組みがもたらす高品質且つ廉価な商品は世界を席巻することになる。どこに行っても日本製品があふれ、多くの発展途上国からは羨望と将来の目標とあがめられたのである。

こんなことがあった、私が80年代の後半に新人商社マンとして中国の農業部(日本の農水省に相当)の局長クラスの役人を日本で案内する機会に恵まれた、彼女は30代中盤ながらすでに局長であり、将来を嘱望されていた。それだけに見るからに理知的であり、物言いにも分別があり、すばらしい人であった。私の仕事は通訳兼ツアーコンダクターとして時間通りに訪問先につれていくことと、その合間を縫って有名な観光地を案内することであった。ところで最初の2-3日は平穏に過ぎたが、4-5日目からその局長さんの様子がおかしくなった、何かいつも深く考え込んでいるようにて、私は心配になって、どうしたんですかと聞いたところ、実はということで突然話をはじめた。日本に来る前、日本は敗戦国として荒廃し、その後インフラが整わないうちに工業化をしたことによりあちこちで公害問題が起こり、人民が疲弊していると聞いておりました。しかしながらこの東京の繁栄と、人々の働き振りをみるにつけこの教育はまったくのうそであったことがよく分かりました。今私がやるべきことは日本がここまで復興した事実を正確に認識し、中国に持ち帰ることです。新人商社マンの私にもこの発言の重大性は分かった。即ち時の中国政府は経済優先政策を採用していないこと、その結果生活が貧しいこと。また自分が認識している以上に、当時の日本の経済的な成功は驚愕に値し、アジアをはじめ発展途上国の国々にとってはまさに成功への道しるべであることである。このとき私が感じたことは、日本人が戦後復興にかけてきた努力は確実に報われているといった前向きなものであった。またそれを支えた政治・官僚組織の有用性についてもいささかの疑念も持っていなかった。しかしながらその夢のような認識はすぐに崩壊した。それは85年のプラザ合意以降の大きく後退していく。アメリカは自国の生きる道を自国を製造業立国から軍事・金融業立国に変貌させていく、即ち日本や当時新興国家として成長していた、NIES(韓国、台湾、シンガポール、香港)に製造業では対抗できないと悟ったことで、にわかに基軸通貨であるドルを利用してのこれらの製造拠点の経営権の確保を目指し、自らは製造に関わらずに研究開発と経営のアウトソース方式での実権の確保を図ったのである。一方それをサポートするために積極的に知的財産権にこだわり、世界中の国々にこの権利を認めるように迫ったのである。即ち研究開発に投資して、実現性は別として先に特許をとり権益を確保した上で、後の製造は第3国に回すといったやり方である。また理論的にこれをサポートするためにグローバリズムや新資本主義といった新しい考え方を発表しそれを押し付けてきた。また時として国連の取り決めに従わない国家には勝手にならず者との烙印を押し、軍事制裁を課して、自国の軍事的優位を示威してきた。その結果プラザ合意以降の日本はこのアメリカグローバリズムの標的となってしまい、自らはなにも決定できず、すべて赤坂にある在東京アメリカ大使館からの指示・命令を待つ属州国家になってしまったのである。結果としてアメリカの独りよがりの考え方に翻弄され、自らは何もできずに、バブル発生そして崩壊を招いてしまったのである。これが政・官・業の癒着構造がもたらした負の面であり、今官の改革が必要とされる背景である。

振り返ると、2007年現在の政、官、業はいずれも過去の遺物である戦後復興型日本株式会社からいまだに脱却できずにいる。しかしながら、国民は今巷にあふれている一連の不祥事が起こる本質はこの構造に問題があることを気がつき始めている。今求められていることは、もう一度周りを冷静に見回して、古い仕組みを、新しい仕組みに変革する勇気ではなかろうか?欧州は民衆の自らの意志でこれを行っている、これは時代遅れのお役所ひとつつぶすことができない国との大きな違いである。

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