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July 17, 2007

外資襲来6 Vol. 108

持株会社(もちかぶがいしゃ):他の株式会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社である。ホールディングカンパニーとも呼ぶ。持株会社は一連の構造改革で新たに認められた会社形態である。従来は二つの会社が合併するときには必ず一方が存続会社となり、対等合併という形式はありえなかった。しかしこの制度が認められることにより対等合併が実質的可能となり、世間体を気にすることなく、企業再編ができる手段として活発に用いられている。

B社の経営権が外資ファンドであるウエスタン社に移り確実にリストラを進めている最中、LUの両親会社はもっと大きなうねりに巻き込まれていた。L社の系列の銀行であるWGK銀行は度重なる金融庁からの勧告により窮地に立たされ、何とか生き残りを図るために新たなる企業再編のパートナーを探していた、一方すでに再編をし終えた、S銀行とM銀行は新たにSM銀行を立ち上げ、その勢力拡大にWGK銀行の取り込みを狙っていた。それにより最大手のTM銀行との間で熾烈なWGK銀行の争奪戦が繰り広げられていた。一方最も小さな金融グループであるWGK銀行グループ内に商社だけで3社が存在することは異常であり、この再編も大きな課題となっていた。WGK銀行の系列商社といってもその成り立ちは複雑である。U社はWGK銀行が吸収したS銀行系であるのでその位置づけは比較的はっきりしていたが、一方のWGK銀行の主流である旧T銀行にはL社とM社という二つの総合商社があった。M社はT銀行系のI社とDKB銀行系のS社が合併した会社であり、規模からするとL社より大きい。しかしながらDKB銀行は他の銀行とすでに銀行グループを結成しており、その中にはM社を入れる考えを持っておらず、したがい自然な形で、WGK銀行主導でL社とM社の合併が協議されることになった。M社は以前からの野武士集団の商社として有名で、強烈な個性を持った社員が集まっている会社であった、またその個性により世界一のB航空機の対日代理店としてアメリカにもしっかりとした事業基盤をもっていた。また機械部門を中心に重工業や天然ガスなどの資源にも強く一時は最大手に追いつく勢いを有していたが、バブル時の過剰投資が逆風となってからは一挙にその存在が危うくなり、WGK銀行にとってお荷物となっていた会社である。一方堅実を旨としたL社は負債こそ少ないが将来に渡っての事業資産が十分でなく、総合商社として生き残るために両社の合併が最良であるとの考えで衆目は一致していた。結果として2003年4月に両社で持株会社LMをたち上げ、持ち株会社方式による実質的な合併を果たした。しかしそのためには大規模なリストラを求められることになり、最盛期には両社の従業員を合わせると1万人以上いたこともあったが、新会社はわずか2000人のスタッフで再スタートをすることになったのである。一方のU社には一時的にLMの事業統合に参加するとの憶測もあったが、結局それは実現せず、U社は系列のU自動車の金融部門が発展した商社U通商に吸収合併されることになった。U通商は実力世界一とも称されるU自動車の発展とともに順調に規模を拡大していた。そして2004年のU社の吸収合併により念願の総合商社入りを実現したのである。

このようにして、金融再編の余波である、LTU3商社の混乱は2004年を持って収束した。そして新たに発足したLMはダブルサンを新たな商号として順調にその業績を回復している。特に旧Mが持っていた資源関係の商権が中国を始めとするBricsの資源需要増大を見越しての価格高騰で、その業績回復に順調に寄与している。一方U通商もU自動車がその販売高世界一を伺う情勢下、その機能を高め順風をうけ業績を発展させている。WGK銀行は最大手のTM銀行に吸収され、日本の金融グループは3つに集約された。いまTM銀行では旧WGK出身の社員のリストラが猛烈に進んでいると聞いている。相変わらず大企業は企業自身の存続しか考えず、一従業員の雇用などを気にかけていないようである。

2006年末にB社社員にとって衝撃的な発表があった。それは大株主のU通商が突然事業ポートフリオの変更を打ち出し、精密化学品事業の見直し、B社の経営からの撤退を打ち出したのである。結果として2001年にU社が得た事業統合による事業譲渡益の半分を損失として計上し、設立時の半額でB社の持分である55%をウエスタン社に譲渡したのである。またその6ヵ月後、ダブルサン社も同様に自社の持分である35%すべてをウエスタン社に売却したのである。売却額は市場の混乱を見越して発表されなかったが、これもU社と同じく半額程度であると市場オッチャーは見ている。

結果として当初戦略的事業統合といわれたB社は敢え無く、100%ウエスタンの手におちることになったのである。ウエスタンは当初からLUが作成したDCFについて疑念をもっており、株式の取得による経営権の確保は考えておらず、事業資金の融資をすることを条件としてわずか10%の出資でその経営権を獲得した。その後B社の経営がうまく行かなくなると、これをDCFの評価方法が不正確であったこととして、結果としてU及びLの後継会社であるU通商とダブルサン社に減損処理を受けさせその上で、当初の約半分のコストでB社の全資産を自分の物にしたのである。誠に巧妙且つしたたかなやり方であった。それだけにLUが支払った代償は大きかった。

B社について話そう、B社のスイス人の社長はいまだにその経営権を取っている、しかしウェスタンの彼に対する評価は敗戦処理に等しく、彼は簿価が下がり売りやすくなった事業の切り売りを確実に実行できるように、より一層のリストラに取り組めとの指示を受けている。一方、本人はB社退社後を考え、自らの天職として考えている環境関係のビジネスを立ち上げるために、すでに準備を始めている。当初LU両社からの140名でスタートした社員は現在20名を残しているのみであり、他はすべて退社している。ちなみに設立当時の社員の内、若手を中心とする50名が同業他社に事業ノウハウとともに移った。管理職の30名のほとんどは競業避止の制約により、すべて異業種に移ったと聞いている。そのうち起業したのはわずかに一名だけとのことで、長年サラリーマンとして働いたものが起業することの難しさを改めて感じた。20名は嘱託などの特殊資格でU通商あるいはダブルサン社に再雇用されたとのことである。教育が必要な適齢期の子女をもつサラリーマンにとってまず優先されるのは子供教育の保証である。それだけにU、ダブルサンの若い管理職に使われる不安定な彼らの立場に同情を禁じえない。最後の残り20名については今のところ不明である。これがかつて商社は人なりと言われた会社のなれの果てである。

つづく。。。。

注:上記はすべて作者の創作によるフィクションです。登場人物会社名なども架空のものです。


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