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October 28, 2007

熱海温泉に現実を見た。Vol. 121

仕事の関係で、熱海温泉に宿泊する機会を得た。それも中国人の友人と一緒にである。といっても私は温泉ライターでもないし、中国人向けの観光ガイドをしているわけでもない。実は同じことを7年前にも経験している。その時は熱海温泉の水温が高くて中国の友人がせっかく楽しみしていた温泉に入れないといったハプニングがあったことを覚えている。ところが7年ぶりの熱海温泉の状況は変わっていた、水温は40度前後と低めに抑えてあり、同行の友人も十分に日本の温泉を堪能できたのである。ここに来てのこの変化には、なにか背景があるのだろうか?

ここドイツでも温泉はクアハウスとして知られ、健康増進の方法として活用されている、しかしながら水温は28度前後に低く抑えられており、我々日本人の感覚では低すぎて風邪を引いてしまうような感覚になる。一方日本の温泉は過去には水温が高いことが良い温泉のひとつの条件であったように記憶しており、見えないところで、ボイラーで加温しているところも多々あったように思う。しかしながら、温泉の表示についての偽装や関係法令の改正で従来は鉱泉といわれた水温の低いものでも温泉としての表示が可能となり、熱海では、もはや無理をして水温を上げることが意味の無いこととなったのかもしれない。とは言う私もだんだんとドイツの生活に慣れてきており、シャワー中心の生活となると最近では水温の高い温泉は苦手になってきており、その点では今の低い水温の温泉は非常にありがたいと感じている。

ところで水温以外に気がついたこととして、価格の安さが上げられる。宿泊したのがたまたま平日だったので特に顕著であった。バブル期には温泉旅館の価格は一泊2泊で2万円前後はしていたように記憶しているが、今は高いところはもちろんあるが、一般的な温泉では1万円前後が中心である。ただしそうかといって二回の食事の質が落ちるわけではなく、十分に堪能で出来る条件であった。一方で宿泊している客層を見ていると、多くの部分が時間が自由になる、年金生活者と思われる人たち、またたまに未就学児童をつれた、家族連れがいても自営業の人が多く、多くの普通のサラリーマンの人たちはこの恩恵をまだ受けられていないようにも見えた。いずれにせよ、部屋は相部屋という点はあるが、一泊2食、その上温泉があり、なおかつ緑多い快適な環境が得ることが出来て1万円とは合理的であり、今のユーロ高を考えると60ユーロ程度にてこれはものすごく安く、今後日本人だけではなく、好調な経済を謳歌している、中国やインドまた欧州の顧客を多く呼べばしっかりとしたビジネスが出来るのではないかと思った。実際に同行した中国の友人も600元(一万円)でこれほどのサービスと環境が得られるとは驚きと発言していた。

一方海外の情勢に目を向けるとドル安が一向に収まらない、ドル安ということは、実質的にドルにリンクしている円も、どんどんユーロや経済が好調な中国元やインドルピーに対して安くなっていることを意味している。先日も原油が1バレル当り90ドルを越えた、これも原油の製造コストには変化が無いがドルが安くなっていることの証明である。今後このようにドル安、円安が継続すれば日本のエネルギー購入力は相対的に弱くなり、また原油高により国内の物価は上がることになり、国民の所得が増えなければ経済は不況になるのである。一方で比較的競争力を維持している、日本の大企業は当面の円安は輸出に有利と短期的な視点でこの動きを容認している。結果として庶民はいつまでたっても豊かにならないのである。これが日銀や政府の発表する経済の情勢と一般の庶民が感じている実態との格差なのである。

上記の例でも原油高により燃料が高騰し、水温を無理に加温することをやめた結果水温が下がったのかもしれない、しかしこのまま物価の上昇が続けば、今の主要な顧客層である年金生活者の人たちにとっても今のコストは受け入れらなくなる、そうするとより一層の値下げか、あるいは思い切っての値上げをしなくてはならなくなる。結果として旅館業界はますます不景気となるのではないか?このような状況下、日本人はもう少し積極的に海外の旅行客の招致に動くべきかもしれない、幸いにも水温の下がった日本の温泉は、多くの海外の顧客に対して満足を与えることが可能だからである。今や日本はかつてのように製品の輸出だけでは国の運営はできないのである、それだけに智恵を使って現状に合わせて形にして、何とか生き抜くことが必要となってきているのである。自分の生存のために自ら動く時代が来たのである。

欧州ではご存知の通り消費税は20%程度が一般的である。日本も同じように消費税を上げても良いのではないかと時々思う、その上で我々は日本の独自性を打ち出して、外国人を多く呼び彼らに多くの消費をしてもらえればそれだけ税収が増えることになる。現実に日本には外国人が喜ぶ観光資源が沢山ある、身近にある山や緑またきれいな川などである。これらの貴重な資源を何もせずに放置することはないと思う。その上で20%の消費税を乗せても一万円の宿泊費は1万2千円以下なのでまだ彼らからすれば格安に感じるはずである。それにも関わらず、それらを意味の分からない乱開発で東京に様に無味乾燥な風景にしてしまうのはもったいないことである。その意味で熱海温泉は象徴的である、熱海の海岸沿いには大きなビルが立ち並び、どこも同じような温泉旅館が林立している、しかし一歩山に入ると豊富な緑がある。今この本来備わった資産に注目することが、将来へ向けての存続の方向性を示すことになるかもしれない。

これはまさしく今欧州がやっていることでもある。

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