遺伝子組み換え種子事実上の勝利? Vol.131
本日の日経ビジネス(NB)にニューズウイーク誌の翻訳記事が掲載されている。これによるとモンサント社が強力に推し進めているGMO種子の販売は好調であり、同社の利益拡大に大いに貢献しているとのことです。これは販売の対象を人が直接口にする食品からバイオエタノールや大豆油また家畜用飼料に限定することにより達成したとのことです。モンサントはこれにより、GMO種子が世界の市場で受け入れられたことは確かであり、今後は反対派が持論を証明すべきときであるとしております。一方ではまだ明らかになっていない安全性の問題などは置き去りにされたままであり、今後どのように展開するか注意すべきとのコメントです。弊ブログの120号ではモンサント社がこのビジネスに取り組む背景を記しました。今号ではその後の展開ということで少々長くなりますが、同記事を転載いたします。
遺伝子組み換え作物、事実上の勝利
安全性への懸念をよそに栽培農家は世界中で急増
• 2007年12月17日 月曜日
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医療・バイオ R&D 環境 米国
Brian Hindo (BusinessWeek誌、企業戦略担当エディター、香港)
協力:Joshua Schneyer (BusinessWeek特別特派員、リオデジャネイロ)
米国時間2007年12月6日更新 「Monsanto: Winning the Ground War」
除草剤・農業バイオ技術大手の米モンサント(MON)の会長兼CEO(最高経営責任者)にヒュー・グラント氏が就任した2003年5月頃、モンサントはその社名を文字って“ミュータント(突然変異体)”と呼ばれていた。
モンサント(本社:ミズーリ州セントルイス)が販売する遺伝子組み換え種子への批判は高まる一方だった。モナーク(大型のチョウ)を絶滅に追い込み、新たな悪性のアレルギーを発症させ、地球の農業の多様性を損なうというのが反対派の言い分だ。
米国の文明評論家ジェレミー・リフキン氏は著書の中で、遺伝子組み換え作物(GMO:genetically modified organism)は「資本主義史上、唯一最大の失敗」になるだろうと予言した。元ビートルズのポール・マッカートニーは、「遺伝子組み換え作物にノー を」と世界に呼びかけた。チャールズ英皇太子は新聞の論説で、遺伝子組み換え技術は「神の領域を侵すもの」であるとして、遺伝子組み換え作物への反対を唱 えた。
グラント氏がCEOに就任する前、モンサントの株価は1年で50%近く下落し8ドルになっていた。就任前年度の2002年の損失は17億ドル。「当時は財政的に極めて脆弱だった」と、49歳のグラント氏はスコットランド出身らしい軽快な口調で言う。
遺伝子組み換え作物を巡る論争の流れが変わった
しかし、その後5年も経たないうちに、モンサントはすくすくと育った。昨年の売上高は85億ドルで、純利益は44%増の9億9300万ドル。株価 は12月5日の終値が104.81ドルで、グラント氏の就任後1000%以上も上昇している。株価収益率は58.6と、米グーグル(GOOG)を約2ポイント上回る。
その背後では、モンサントが粛々と遺伝子組み換え食品の是非を巡る論争の流れを変えていたのである。
遺伝子組み換え作物への反対の声はいまだに根強いが、栽培農家の数は世界中で増えている。これは不思議でも何でもない。モンサントの種子には、害虫抵抗性と除草剤耐性の遺伝子が組み込まれている。そのため従来の種子よりはるかに育てやすく、費用も少なくて済むのだ。
米国産作物の半分以上は遺伝子組み換え作物だ。大豆はほぼ100%、トウモロコシは約70%である。中国、インド、ブラジルではほんの5年前まで遺伝子組み換え作物はほとんど栽培されていなかった。ところが、今、ブラジルでは内陸部の肥沃なマットグロッソ州から港へと遺伝子組み換え作物を運ぶための道 路建設が間に合わないほどだ。中国とインドでは、遺伝子組み換え作物の作付け面積が昨年1700万エーカーを超えた。
この3つの国は現在、作付け面積で世界の上位6カ国に入っている。自然食品が空前のブームとなっている中、世界の農地面積の約7%では“究極の反自然食品”ともいうべき遺伝子組み換え作物が栽培されていることになる。「作付け面積が10億エーカーを超えた時、遺伝子組み換え作物は、仮説ではなく現 実のものになる」とグラント氏は言う。
「農業の現場」で事実上の勝利を収める
つまり、遺伝子組み換え食品は、科学論文誌上ではともかくとして、農業の現場では確実に勝利を収めようとしているのだ。
食品と燃料に対する世界的な需要増加に伴い、農家は農地からの収穫量を高めようと躍起になっている。また遺伝子組み換え種子の栽培が始まって12年経った今も、反モンサント派の悲観的予測は現実になっていない。この動かしがたい事実が、モンサント首脳陣をいささか強気にしている。
同社幹部はBusinessWeek誌のインタビューで、反対派が唱える安全性への疑問を、「大衆の恐怖心をあおるデマ戦術」「悲観論者の三文芝居」「社会の害悪」「誤った情報」だと批判した。
モンサント幹部は遺伝子組み換え作物というものに宗教に近い信念を抱いている。「フランケンフード(人造食品)」と呼ばれ、人々の恐怖がピークに達していた頃、グラント氏をはじめとする幹部はリスクを伴う決断を下した。
売り上げの10%を研究開発費に充てることにしたのだ。また、商品数の削減という重大な戦略的決定も行った。消費者向け食品用の種子の販売をやめ、代わって動物用飼料、エタノール、コーンシロップなどを生産する農業関連事業向け種子のみに専念するようにしたのだ。こうした決断が、反対運動の勢いをそぐ結果となった。
根強く、過激な反対運動
しかし、遺伝子組み換え作物反対派の不安が的中するようなことがあれば、多角化を進めている競合他社よりもモンサントは大きな打撃を受けることに なる。現在、モンサントは収益の60%を遺伝子組み換え種子に依存している。これに対しスイスの農業関連企業シンジェンタは約20%、総合化学メーカーの 米ダウ・ケミカル(DOW)は10%に満たない。自信満々のモンサント首脳陣は、リスクをヘッジしないで自社技術に莫大な賭けをしているようなものだ。
モンサント幹部が自社の経営を危険な賭けだと思っていないとしても、遺伝子組み換え作物を疑問視する向きはいまだに少なくない。米スーパーマーケット大手クローガー(KR)は8月、搾乳量を増やすために遺伝子組み換えウシ成長ホルモンを使った牛乳の販売を中止した。この遺伝子組み換えウシ成長ホルモンは、モンサントが1994年から販売していたものだ。
フランスではこの夏、活動家が遺伝子組み換え作物の試験農場を破壊するという事件が多発した。遺伝子組み換え食品への反感はアフリカ、アジアの一部、西欧でも広がりを見せている。
こうした執拗な反対のため、米投資調査会社イノベスト・ストラテジック・バリュー・アドバイザーズはモンサントの格付けを最低ランクの「CCC」として いる。各社の信用格付けは、戦略的リスク因子に基づいたものだ。「モンサントは、厳重な規制がかかっているので作物は安全だと主張する。しかし、話はそれ ほど単純ではない」と、イノベストの調査担当部長ヘザー・ラングスナー氏は言う。
2002年にスピンアウト
しかしウォール街では、こうした疑念を抱く者はほとんどいない。モンサントはどんどん収益を上げており、事業の見通しは明るく、株価は右肩上がりだ。
同社106年の歴史において新たな章の幕開けとなった2000年からは隔世の感がある。当時のモンサントは、比較的小規模な農業部門を持つ大手化学薬品コングロマリットだったが、その年、旧ファルマシア・アンド・アップジョンに買収されたのである。買収話が持ち上がった時、バイオ技術事業の価値を マイナスと見積もるアナリストもいた。
ファルマシアが遺伝子組み換え種子の将来性をさほど高く買っていなかったことは確かだ。モンサントを買収した理由は薬剤化合物にあった。ゆくゆくは「セレブレックス」(COX-2抑制剤)のような人気商品を生むと踏んだのだ。
2002年、ファルマシアはモンサントを分離して農業に特化した独立会社とした。ちょうど遺伝子組み換え作物論争たけなわの頃であり、主要市場 だった中南米は近年にない大不作の年だった。さらには、当時売上の65%を占めていた除草剤「ラウンドアップ」の特許が切れた。2002年末までに総売り上げは14%減り、営業利益は半減した。当時のヘンドリク・A・ヴェルフェイユCEOは2002年12月に引責辞任した。
ヒュー・グラントCEOのモンサント改革
その後任となったグラント氏は、モンサントの営業マンからの叩き上げである。「よそよそしい前任者とは違って、人当たりが良かった」とアナリストや同社 幹部は評する。COO(最高執行責任者)を務めていた2000年には、米公共放送PBS制作「フロントライン」で放映された遺伝子組み換え作物論争の特別 ドキュメンタリー番組「恐怖の収穫」で、堂々と会社の“顔”を務めた。
その頃、悪材料は各方面に転がっていた。20年にわたって数十億ドルもの投資をしてきたにもかかわらず、モンサントの遺伝子組み換え種子事業は一 向に収益が上がっていなかった。独立したての会社にかなりきつい試練だった。戦略・業務担当上級副社長カール・カサーリ氏は、「助けてくれる親会社もなければ、ほかに頼れる部門もなかった」と振り返る。
グラント氏はやがて社長兼CEO兼会長となり、社内の引き締めを図った。社内各所に分散していた幹部職員を社長室があるビルの同じ階に集め、直接 報告させるようにした。また、月曜朝8時からの幹部会議を、それまでの気楽な集まりから、3時間にわたる密度の濃い運営検討会へと変貌させた。幹部は毎 回、新しい“案件リスト”を手に会議室を後にした。
グラント氏が目指したのは、「100%の説明責任を負うチーム作り」だった。また、毎年恒例の戦略的計画会議を廃止した。「パワーポイントを使った退屈なプレゼンばかりで、あんなものは何の役にも立たない」(グラント氏)。代わりに、半日の戦略検討会を6週間ごとに社外で開くことにした。
トウモロコシ、大豆、綿花、菜種油に集中投資
グラント氏率いる首脳陣はこうした検討会を経て、新たな戦略を実施した。計画の根底には3つの大きな決断があった。1つ目は除草剤事業で大幅な経費削減を断行すること。2つ目はバイオ技術への投資を維持すること。
そして3つ目が、トウモロコシ、大豆、綿花、キャノーラ(菜種の一種)という4種類の商品作物への集中投資だった。今になって振り返ると、これが最も重要だったことになる。
こうした作物の大半は産業用として農家から処理工場に運ばれ、動物用飼料やバイオディーゼル燃料となる。消費者が店頭で直接それらを目にすること はない。実際にモンサントが生産したトウモロコシを口に入れたら、吐き出してしまうだろう。スイートコーンと違って、そのまま食べられるような代物ではな い。
グラント氏の決断は、モンサントの研究者の多くにとって寝耳に水だった。遺伝子組み換え小麦、日持ちするトマト、葉枯れ病に耐性のあるジャガイモ、先天的にウイルス抵抗性を持たせたバナナといった食用生産を目指していたいくつかの研究が打ち切られた。
グランド氏にとっても苦渋の決断だった。「素晴らしい研究だった。特に遺伝子組み換え小麦の技術は極めて優れたものだった」。
モンサントの遺伝子組み換え作物は今でも食用に供給されている。ただし直接ではなく、コーンスターチ、コーンシロップ、食用油といった加工穀物製品に限られる。
ちなみに、米国保存食品製造業者協会(GMA)の調べによると、米国では「調合食品」――複数の原料を用いた加工食品――の約60~70%に遺伝 子組み換え作物が使われている。米国の食料品店で箱や缶に入って売っている食品には、必ずといっていいほどバイオ技術で作られた材料が使われているのだ。
モンサントが販売している消費者向け遺伝子組み換え作物食品は、ウイルス抵抗性スカッシュ(ウリ科の野菜)だけだ。2005年に野菜・果物種苗大手の米セミニスの買収に伴って引き継いだ商品である。現時点ではこれ以上、遺伝子組み換えの野菜を作る考えはないという。
「反対運動に屈服したわけではない」
会社の歴史に残るこの大きな方向転換について、モンサントの幹部は「成長分野に特化したのであって、決して遺伝子組み換え作物を批判する活動家に屈したわけではない」と強調する。だが、消費者の不安を考慮に入れたことは間違いない。2002年12月に退任した前CEOヴェルフェイユ氏は、退任の1週間前 にワシントン大学セントルイス校でスピーチを行い、オランダの環境保護団体グリーンピースなどによる反対運動の効果を過小評価していたと認めている。
グローバルマーケティングを担当しているデビッド・スターク氏は、食品企業の幹部とアポイントさえ取れないことがあったと振り返る。「私と話をしているところさえ見られたくないということだ。伝染病患者にでもなった気分だったよ」。
ところが、昨年、反遺伝子組み換え作物の牙城である英国で行われたある食品会議で講演した。「4~5年前なら招待されていなかった」とスターク氏は言う。
モンサントは、企業間取引を中心としたバイオ技術企業として原材料を生産し、産業用食品大手に供給するようになった。このことも、遺伝子組み換え 種子に対する消費者の嫌悪感が収まってきた一因だ。結局のところ消費者というものは、“突然変異トマト”には拒絶反応を示すが、直接目にすることがない “除草剤耐性大豆”にはあまり気にならないのだ。
「(遺伝子組み換え作物論争は)明らかに下火になっている。新しい論争の種はそれほど多くない」と、モンサントを批判してきた権利擁護団体、公益 化学センターで弁護士を務めるグレゴリー・ジャフ氏は言う。モンサントが消費者向け遺伝子組み換え食品から撤退したことこそ反対活動の成果だと考える活動 家もいる。
批判勢力への態度を軟化
一般消費者の関心が薄れたとはいえ、モンサントを批判する勢力は健在だ。だがモンサントは批判勢力に対する態度を軟化させ、風当たりを弱めようとしている。社内研究論文はかつては国家機密のように門外不出扱いだったが、その一部を学術誌に掲載するようになった。
「ヒュー(グラント氏)は、遺伝子組み換え作物反対派に対する態度を和らげている。“科学的に正しいのだから議論の余地はない”という以前の頑なさがなくなった」と、モンサントを1990年代後半から追い続けている米ゴールドマン・サックス(GS)のアナリスト、ロバート・クールト氏は言う。
グラント氏が考え方を変えたのは、彼がまだCOOだった頃だという。ある時、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの1人の幹部が、何人かのモンサント幹部に自分の経験談を話した。
話の内容は、使わなくなった海底石油掘削装置の処理を巡って、グリーンピースから激しい批判を浴び、結局、グリーンピースの主張を受け入れて装置を解体するはめになったというものだった。
「シェルの幹部は社会の変化を教えてくれた。もはや“ちゃんとやりますから信用してくださいよ”なんてことが通用する時代ではない」(グラント氏)
変化は表れ始めている。
1990年代初期の学会では、「リスクの話をする人は皆、業界関係者から敵意むき出しの質問を浴びせられた」と、米オハイオ州立大学の植物学者ア リソン・A・スノー氏は振り返る。「遺伝子組み換え植物が野生化すれば、強くなった雑草が増殖する」という研究結果を巡り、バイオ技術会社と論戦を交わし たことがある。最近ではモンサントはじめ業界各社の態度が「以前よりかなり丁寧になり、研究内容にも興味を示すようになった」という。
こんなに融和的な言葉が批判派から出ることは、これまでにほとんどなかったことだ。
モンサントは長年にわたり数々の論争を巻き起こし、その強硬な態度で知られてきた。2005年にはインドネシア高官への贈賄で米司法省から150万 ドルの罰金を科された(同社は、贈賄は個人がしたことで会社ぐるみではないと主張している)。モンサントの種子を違法に使用した農家に対する告訴は昔から 続いており、批判派はこれを“弱い者いじめ”だと言う。
初期の遺伝子組み換え種子による免疫不全や生態学的災害は今のところ起きていない。そのことで、遺伝子組み換え作物の安全性を疑問視する人の不安はいくらか和らいでいる。米非営利環境団体「憂慮する科学者連盟」のマーガレット・メロン氏は多くの科学者仲間と同じく、現在販売されている遺伝子組み換え種子はおそらく食べても問題はないという結論に達した。
しかし、アレルギー誘引や環境汚染の危険性を示す研究報告も頻繁に出ていると指摘する。「もっと綿密な検査が必要だ。安全性を示す材料はたくさん出てきたが、人体にアレルギーを引き起こすかどうかをきちんと調べる方法は確立されていない」。
中国やインドなどで家畜用飼料の需要が急増
論争が収まるにつれ、遺伝子組み換え作物に対する需要が一気に増えた。経済成長で豊かになった中国やインドでは、数十億人もの消費者が豊かな欧米の中流階級と同様に1日数回肉を食べるようになった。その結果、家畜用飼料の需要が急増したのである。
モンサントの種子は従来のものより1袋あたり数ドル高いが、ずっと簡単に栽培できるためどんどん売れている。
例えば最新のトウモロコシの種子は3種類の遺伝特性がある。(1)茎の中を食べるアワノメイガの幼虫に対する殺虫作用、(2)根を食べる根切り虫 に対する殺虫作用、(3)除草剤「ラウンドアップ」に対する耐性――である。この種子は普通のものより平均で1エーカーあたり36ドル近く高い。だが殺虫 剤や除草剤を減らせるため、その2倍節約できるとモンサントは言う。
ブラジルの農民にモンサントの大豆が大人気なのは、こうした生産性を高める効果が評価されているからだ。数年前は全く正反対のことが起こっていた。2002年の大統領選の頃、ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領の農業政策顧問は報道陣にこう語っていた。
「ブラジルは遺伝子組み換え作物を作らない国だということをアピールしていきたい。そうすればブラジル産の農産物は、遺伝子組み換え作物を作っている米国産やアルゼンチン産より高値で取引されるはずだ」
ところが、その時既に、遺伝子組み換え大豆はアルゼンチンとの国境からブラジル南部へこっそり持ち込まれていた。密輸種子の使用は激増し、遺伝子組み換え種子について明確な方針を持っていなかったブラジル政府はその使用を認めざるを得なかった。“遺伝子組み換え作物を作らない”という看板を下ろさなければならなくなるのは時間の問題だったからだ。
「遺伝子組み換え作物の作付け規模が大きくなりすぎて、拡大を防げなかった。どうすることもできなかった」とマトグロッソ州大豆生産者協会アプロソジャの事務局長、マルセロ・ドゥアルテ氏は言う。モンサントは密輸について、特許権の侵害であり遺憾の意を表明していた。
ブラジルでのロビー活動で有利な法律を成立させる
しかし、モンサントはそれを機に、遺伝子組み換え作物への理解を深めてもらおうと政治家を招待して現地視察ツアーも始めていたのである。ブラジリア在住のデビッド・フライシャー教授はそう指摘する。2005年にはブラジルで正式に遺伝子組み換え作物が解禁された。
ブラジルにおけるモンサントのロビー活動は今なお健在だ。今年2月、グリーンピースはある法案に対する反対運動を展開した。ブラジル政府バイオ技術諮問委員会で遺伝子組み換え技術導入の承認に必要な票数を、「3分の2」から「過半数」に引き下げる新法案だ。グリーンピースは政府高官との面会を粘り 強く訴え続けた結果、影響力の強い大統領府官房の官僚に会えることになった。
面会の当日、ブラジルで遺伝子組み換え作物反対運動を率いるグリーンピースのガブリエラ・ブオロ氏は、モンサントの一行と廊下でもう少しでばったりすれ違うところだったという。モンサントは一足早く官僚に会っていたのだ。
「遺伝子組み換え作物推進派に先を越されたことで、訪問が台無しになった。大統領府官房の官僚は既に遺伝子組み換え作物の規制を緩める方向へ傾いていたようだ」とブオロ氏は言う。その翌月、大統領の承認を受けて新たにバイオ安全保障法が成立した。
遺伝子組み換え種子が世界的に認められるのは単に時間の問題だ――。モンサントの幹部はそう考えている。2004年に欧州連合(EU)の遺伝子組み換え 作物の作付け禁止期間が過ぎた後は、ドイツ、フランス、ポルトガルのような反対勢力が根強い国でも遺伝子組み換え種子の使用が始まっている。
有機栽培の動きについては、「農作物の主要な栽培方法になることはない」と、モンサントの戦略担当、カサーリ氏は言う。「率直に言って不可能だ。有機栽培で米国、ひいては地球の人口を養うために必要な土地は、都市部を全部つぶして農地に変えても到底足りない」。
「農家はもう昔には戻れない」
現在、モンサントは他社への特許使用許諾を含め、世界に出回る遺伝子組み換え種子の9割以上を扱っている。今後も首位を明け渡す気はなさそうだ。同社の3000人の研究者が世界中で次世代の遺伝子組み換え種子の開発に明け暮れている。
その成果は今年8月、イリノイ州ディケーターで毎年開催される農業ショー「ファーム・プログレス・ショー」で発表された。有刺鉄線を張り巡らせた フェンスの中に、豊かな収穫を連想させる「ゴールデン・エーカー」という名の展示コーナーを設置。健康に良いとされるオメガ3脂肪酸が含まれる大豆や、干ばつに強いトウモロコシなど多様な試験作物が勢ぞろいした。同社の技術がカタチになったものである。
この農業ショーでのスピーチで、主任技術者のロブ・フレーリー氏は今後の「収穫高の段階的変化」について説明した。1970年には米国のトウモロ コシの平均収穫量は1エーカー当たり70ブッシェル(1ブッシェルは約25kg)だった。2006年の平均は1エーカー当たり150ブッシェル。2030 年までには1エーカー当たり300ブッシェル近くになるとフレーリー氏は予測する。
モンサントは現在、8種の遺伝特性を焼き付けた“究極の種子”を開発中だ。発売は2010年を予定している。遺伝子組み換え食品に関しての論争は まだまだ続くだろうが、グラント氏はこの新種の種子が最大の武器になると確信している。「農家がこの種子を知ったら、もう昔には戻れなくなるはずだ」。
■参考
遺伝子組み換え作物(GMO)と飢餓
環境保護団体のフレンズ・オブ・ジ・アース・インターナショナル (FOEI)は今年1月、『遺伝子組み換え作物で得をするのは誰か』と題したリポートを発表した。FOEIは遺伝子組み換え作物に対する批判の中でバイオ技術業界の“嘘”を指摘し、「遺伝子組み換え作物は飢餓を解消する上で何の役にも立っていない」と訴える。
立証責任
米調査会社ソレイユ・ガリー・アンド・アソシエーツのアナリスト、マーク・ガリー氏は9月24日付 の研究ノートで、「遺伝子組み換え作物が登場して12年たった今、立証責任は批判派の方に移りつつある」と書いている。モンサント(MON)株に対する投 資判断は“買い”だ。遺伝子組み換え作物は再生可能燃料の生産に役立つと主張する。「米国のトウモロコシ畑が巨大な太陽光エネルギー収集装置になると考え てみてほしい」。
〔一部割愛日経NB誌より転載〕
本ニューズウイークの記事の公平性についての議論については別の機会に譲るものとして、現状GMO種子が一定のビジネスとして成功していることは事実である。またブラジル、インド、中国などでその価値をはっきりと認識してしっかりと受け入れられていることも客観的に認識すべきであると思う。
ところでここで我々がしっかりと認識すべきことにGMO種子の登場により今の作物には、明確に食用と非食用或いは食用と飼料・加工業用といった二つのカテゴリー分けが必要となったことである。これは今までなかったことであり、それだけに我々は慎重に対処すべき問題である。オーガニック、ビオ食品派は加工食品用や家畜用の飼料用も最終的には間接的に人に摂取させるわけであるから、食品として規制すべきとの議論となるはずであり、一方でGMO種子賛成派は、これはいったん加工され、或いは家畜により消化され構造が変わるので、問題ではないと言い張るであろう。実際にこの議論を双方でやりあってもしっかりと結論を得るのは難しいと思う。この是非を判断することができるものはお金を出して製品を購入する権利がある消費者のみである。その上で供給者はしっかりとGMO食品使用とラベルに明言して、その分価格を抑え安全性に不明点がある点をリスクとして明示するべきではなかろうか?現在EU政府においてはこの事実に基づいて、食品についてのラベルの表示方法に付いて大いなる議論が行われている。それが確定した時点でしっかりとした情報開示の原則の上で消費者が自らの判断をもって、GMO食品と付き合うことができるのである。
一方でこの問題で注意をすべきは、せっかく政府が決めた表示義務を単なる目先の利益を求めることで意図的に怠ったたりすることが、毎日のように偽装事件として明るみに出る我が国の現状である。このような状況が続く限りにおいては、政府は安易にGMO食品の導入を絶対に許可してはならない。まずこのような安全性の不確かな商品を受け入れるためにはそれを使用していることを確実に表記するシステムの構築が第一であり、その結果コスト的に安いことを正確に消費者に知らせることが重要である。その点で今の日本政府は、米国政府の圧力の前で国民の利益を守ることができるかは、誠に心もとない、一番の問題は、米国産牛肉が持っている潜在的な、危険情報をあいまいにして消費者に訴えずに米国からの圧力に反論することなく、流通をさせてしまうやり方であり、このようなことが継続する限りは安易にGMO食品の導入は、すべきでないと思う。
ところで本日政府の肝いりで、食品表示特別Gメンという組織が作られることが決まったようであるが、このような組織こそ、世界が今どのように動いているかという事実を正確に認識した上で、それを時代にあった形で仕組みを一刻も早く作るべきである。このような多様性のあるものに対処する能力は本来日本人が備えているもっとも優れた点であるにも関わらず、今の政府はそれをしようとしない。何かを恐れているのか、あえてサボっているのか全く不可解である。日本国の消費者の一人として、国民のために本当に有用な政治を行ってくれる政治家を選び託すのが我々有権者の務めであり、我々は今後このGメンの動きなど政府の諸策を厳しい目を持って監視しなくてはならない。
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