身勝手な先進国、国家ファンドに制限 Vol.140
最近になって我国でもSWF(国家ファンド)の設立を衆参の国会議員が検討しているということであるが、本日の産経ビジネスアイによるとIMFが国家ファンドに対して行動指針を制定し、その活動を制限することを検討しているとの記事があった。私はこれを極めて身勝手な動きであると思っている。まずは記事を引用する。
国家ファンドに行動指針 IMFが導入要請へ FujiSankei Business i. 2008/2/27
欧米の大手金融機関などに大規模出資を行っている中国や中東の国家ファンドに対し、国際通貨基金(IMF)が、投資行動 のガイドライン(指針)を年内をめどに制定するよう求める見通しになった。指針の導入により、政治的思惑を込めた買収を阻止するとともに、透明性の向上を 促進する狙いだが、主要国家ファンドが受け入れるかは不透明だ。
AP通信などによると欧州連合(EU)欧州委員会のバローゾ委員長は25日、訪問先のノルウェーで「欧州以外の国家ファンドが不透明なやり方で地政学的 戦略に使われることは受け入れられない」と語り、国家ファンドは行動指針を導入し、それに基づき行動すべきとの考えを示した。
欧州委員会は世界2位の国家ファンドを保有するノルウェーが定めている倫理指針をモデルに、各国の国家ファンドがそれぞれ独自指針を導入する案を検討している。
ノルウェーの中央銀行の一部門が運営している国家ファンド「政府年金基金」の倫理指針では、年次報告で透明性を保つとともに、既存株主など利害関係者の 権利を尊重するよう定めた経済協力開発機構(OECD)の企業統治に関する指針などを順守し、外国での権利関係に十分注意を払うとしている。
同委員長は3月中旬のEU首脳会議で国家ファンドの協調性、予測性、説明責任の原則を討議した上で、IMF主導で国際的指針を制定し、主要国の国家ファンドに導入の働きかけが行われるとの見通しを示した。
米財務省も、1月にスイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)などの場で国家ファンドの透明性向上を求めており、EUが目指す国際的な指針制定案を支持するとみられる。
ただ、資源輸出などで蓄積した外貨準備を原資にして先に国家ファンドを設立したロシアは、国家ファンドによる戦略的買収で外国での影響力拡大を狙う方針を鮮明にしており、指針の導入を受け入れるかは不透明だ。
国家ファンドによる買収をめぐっては、米議会でも米国の基幹産業が買収され、政治的に利用されかねないとの懸念が高まっている。
■ノルウェーの国家ファンドの倫理指針(抜粋)
・非倫理的、反人道主義、人権侵害、汚職、環境破壊分野には投資しない
・国連の「自主行動原則」や、OECDの「企業統治・多国籍企業指針」に準じ行動する
・財務相は、ファンドの倫理委員会の推薦を元に、投資先の審査と排除を行う
・投資ファンドの倫理委員会は、年次報告書を提出し、活動を財務相に報告する
・年次報告に合わせ、中央銀行が株主の代理人として、どう行動したのか示す
・委員会は財務相の要請に従い国際法の下での社会的責任に反していないか助言する
※ノルウェーの政府年金基金のホームページを基に作成 一部割愛
ところで何故北欧の国のノルウエーが世界第2のSWFを持っていて、その内規が今回の行動指針の元になったのであろうか?これは言うまでもなく、ノルウエーは北海油田を有しており、昨今の原油高騰により多額の黒字を有しており、その黒字の運用先として中東の産油国などと共に積極的にSWFの運用を進めているからである。
最近になってSWFが騒がれてきた背景には、G7が進めてきた、金融政策の行き詰まりがある。これはドル基軸体制の中、これまで米国は際限なく米ドルを発行して、それを世界中にばら撒き、ドルによる世界制覇を企図してきた。また一方で米国以外のG6メンバーは米国の方針に従って、自国通貨をドルに対して一定の範囲でリンクさせる政策と取ってきた、しかし欧州は早くから、この米ドル支配体制の限界を感じ取り、ユーロを生み出し、ドルの影響を間接的なものに抑える仕組みを作り出し、その結果ドル支配から自らの経済圏を守る仕組みをつくりつつある、一方で日本はそれが出来ずに米ドルと同じだけの円を印刷して、常に円をドルの別働補助通貨としての機能を提供してきている。その結果日本政府は莫大な借金を抱えてしまった。
ところで日本は1000兆円もの円を国債や地方債などの借金として発行し続けたにも関らず、国内にはその円はあまり供給されていない、されたとしても箱物投資などに使われ結局その後は、自治体の借金が増えたが、現金の流通は存在しない、ではその現金はどこへ行ったのであろうか?仮に1000兆円もの現金がすべて日本国内で流通したら、日本は強烈なインフレ(ハイパーインフレ)となり、諸外国は日本に商品を販売することをためらい、日本国民はその日の食料を確保することさえも難しくなる。即ちたとえば、一日たてば半分の価値が下がる円での商売は皆好まなくなり、誰も販売はしなくなる。しかし現実にはそれは起きていない、では大量に発行された円はどこに行ったのであろうか?その答えは、国際金融資本市場という、米英が作り上げたもう一つの帳簿上だけの資本市場にその資金は移っているのである。この国際金融市場にある資金は通常庶民の前には姿を現さない、また国民経済を左右する、食料品や原油などには、本来入り込まないことを、自己規範として来た。というのは先進国の政府は国民の生活水準を維持発展することが役割であり、それに反する日常の必需品の値上がりは好まないからである。仮にそのようなことがあれば、その政府は国民の支持を失い、政権が維持できなくなるからである。そこで、国民の生活に変化をもたらすことなく、余剰マネーを運用する仕組みを米英2国が主導して創作したのである。これがいわゆる国際金融市場であり、具体的な運用は、投資銀行が役割を負っている。投資銀行は自己規範を守ることを条件として、先進国が発行した余剰マネーを極めて低利で入手して、それを配下のヘッジファンドを利用して、運用する、その結果運用益を得ることで、余剰マネーを有効に利用する役割を求められたのである。この仕組みは85年のプラザ合意以降、米英を中心として積極的に進められた。その主な投資先は先進国の株式、債券市場から始まり、その次は日本の土地へ向けられたり、また記憶に新しい、かつて高い経済成長を達成していた東南アジアの株式、債券などに向けられたのである。その結果、通常の事業会社も、本業による成果よりも、このヘッジファンドの投資による株高の方が簡単且つ確実に利益を得ることが出来るとなって、本業をおろそかにする企業が続出したのである。また日本のバブルのように、何もしなくても土地の価格が上がり、びっくりするほどの土地譲渡益を地主にもたらしたこともあった。しかしながら、結局それは実体を反映した、取引ではないことを人々は知ることとなり、多くの人は多額の損失を出し、結局それらの投資行為から離れていくことになったのは、皆様ご承知の通りである。その結果アジアでは、ヘッジファンドの運用は難しくなり、結果として米国国内に新たなる投資先を模索することになり対象とされたのが、米国の住宅への投資であり、その結果起きたのが、サブプライム問題である。
ところでサブプライム問題が発生したことにより、いよいよヘッジファンドは投資先がなくなって来たのが現実である。そこで今までは禁じ手としてきた、資源及び食糧にその矛先を向けたのである。ところでここで問題がある、資源のなかでも大きなものは原油であり、穀物である、実際にこれらが高騰して儲けが出るのは産油国や発展途上国で、先進国にはあまりメリットがないのである。そしてその結果世界における先進国の優位が失われる恐れがあるからである。しかしながらすでに国際金融資本の手元にある大量の資金は新たなる投資先の拡大を求めて臨界に達していた、結果として米国は資源への投資を認めざるを得なくなり、原油高、穀物高が起きたのである。その結果、急激に勢力を伸ばしたのが中東やロシアの産油国であり、中でも中東諸国は有り余る貿易黒字=オイルマネーの使い道を探すことに苦労することになるのである。即ち今まで投資先として選んでいた、先進国の投資銀行経由での、株式や債券市場だけではその資金を費消することが不可能となり、新たなる投資方法の獲得が急務となったのである。その結果彼らが目をつけたのは、同じく産油国であるノルウエーがやっていたSWFの手法を導入することとしたのである。
これに対して先進国は、自らの仲間がやっていることを否定するわけにも行かず、一方でこれらの動きを野放しにするわけにもいかず、今般米国が全面的な影響力を持っているIMFを通じて、国家ファンドの動きを制限する、行動指針を発表したのである。
ここまで背景を書いて来たが、ここまで書くと基軸通貨であるドルの将来について、本当に不安になる。米国がドルの下落を容認できる内は、まだ良いがすでにドルは対ユーロで60%という安さになっている、今後ドル安が際限なく進めば、産油国などの富裕国は自身の財産をドルで保持することをやめるであろう、そうすればより一層のドル安を生み、ドル基軸体制が崩壊することになる。昨今の国家ファンドの台頭とドルの下落は密接に関係しており、このまま先進国がG7体制を見なすことなく、通貨を増刷しつつければ、その膨大な余剰通貨を管理することが徐々に困難になることは明白である。もし先進国がこれらに対する対応を誤ると、世界経済の崩壊が起こり、それは政治的混乱をもたらし、その混乱を終結させようと、また悪夢の世界戦争が起きるかもしれない。我々は今、このままG7体制を継続することが危機に瀕していることを認識しなくてはならず、今こそ先進国の自らの身勝手なやり方を反省し、変革し、争いの災禍を未然に防がなくてはならないと思う。
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