サブプライム問題と原油・食糧高、原油本位制が始まる。 Vol.155
連日米大手証券会社の損失の発表が相次ぐ、昨日の日経WEBには米国の大手3社の3ヶ月の合計で5800億円という巨額の損失が計上されたとのことである。しかしながらいつも思うのは、この資金はどこから来て、どこに使われ、どうして泡沫化してなくなったのだろうか?ということである。まずは同記事を見ておきたい。
更新:06月19日 01:26
(6/18)米証券大手3社、サブプライム損失5800億円 3―5月
【ニューヨーク=松浦肇】ゴールドマン・サックスなど米大手証券3社の3―5月期決算が18日出そろい、3社すべての最終損益が減益または赤字となった。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した世界的な信用収縮の長期化を背景に、3社合計で約54億ドル(約5800億円) の関連損失を計上。市場取引や投資銀行など収益源の主力部門が不振だった。
モルガン・スタンレーが18日発表した3―5月期決算は最終利益が10億2600万ドルと前年同期比60%減少した。これまでに決算発表したゴールドマ ンは11%減益、リーマン・ブラザーズは上場以来初となる27億7400万ドルの赤字(前年同期は12億7300万ドルの黒字)だった。
ここでもう一度、どのような過程でサブプライムローンにより関連損失が出たのかについておさらいをしておきたい。それは今まで何回も言われているように、米国における土地の先行き値上がりを見込んで、証券会社は住宅ローン会社が供与したローン総額に対してその利息分の一部を受け取る権利を契約で認めさせ、それを条件としてこのローン総額を細かく分けた上で証券化して、その証券を購入してくれた顧客に対して、市中金利よりも高い配当金をつけることを約束する。そして同問題の破綻が起きる前に住宅バブル時には、いけいけどんどんで高額な配当金をしかも配当確約条件で証券を販売したのである。一方では、土地の価格が青天井に上昇すると期待した、ローン会社は、土地、建物の実質価格を上回る金額を将来の土地の値上がりを見込んで生活資金として貸与、ますますそのローン残高を増やしていった。またこれに乗じた証券会社もローンの発行残高にあわせた不動産担保証券をどんどん発行し、これを他の証券と織り交ぜ、優良ファンドとして世界中に販売したのである。しかしながら、米国の庶民の間に住宅購入への意欲が減退し始めると、状況は一転した。それはまず将来の土地、建物の値上がりを見込んでいた部分が、描いたとおり値上がりせず、それを見込んで追加融資した部分の返済が滞り始めた。そしてそれにより生活が苦しくなった借り手は追加ローンの部分のみならず、土地、建物の部分の借入金も返済できなくなり、結果として多くの返済が滞ることでローン会社が倒産していった。その結果ローン会社から証券会社への利子分与や委託手数料の支払いは停止したのにも関らず、配当保証をしていた証券会社は引き続き証券の配当をしなくてはならなくなったのである。結果として証券会社はサブプライムローン分の配当を自己所有している株式など他の証券を販売することで埋め合わせることになり、これが購入価格よりも売却価格の方が安いことにより大幅な赤字になったのである。
ところでここでもう一つ重要なことを記しておく、今先進国では、経済活動に実際使われている現金の割合は非常に少なくなっており、日銀の通貨供給量の発表資料を見ても通貨総額の5%程度が現金であり、それ以外は我々庶民の眼には直接触れない、預金や投資資金として動いていることである。この仕組みについては以前この稿で触れたことがあるが、仮に金融機関が1万円の預金を現金で受け入れた場合、その金融機関は10倍の10万円まで他社に貸し出すことが慣例化していることによる。これは裏を返すと、住宅ローンを融資した会社が、その融資資金1000万円を借り手に渡す際、銀行振り込みを利用するとすればその1000万円は一旦、借り手の口座にはいることになり、これにより銀行は新たに1億円の信用創造、即ち新規融資が可能となるのである。それだけに銀行や証券会社はこの住宅ローンビジネスを通して、我々の想像を絶する金額の資金を動かしているのである。そしてその資金がよりよい金利や配当を求めて常にうごめいているというのが、現在の状況であり、これがサブプライム問題の背景にあるのである。
次に掲題で触れたサブプライム問題と原油・食糧高の関係について述べてみたい。今まで先進国は上記金融の仕組みと各国政府の通貨管理制度をうまく融合させて、経済発展を導いて来た、またその動きを円滑にするために米ドルを世界の基軸通貨として認知して、世界的に通用するようにしてきた。その結果、先進国の経済発展は続き、BRICSなどの新興国も表舞台に登場した。また時として実体経済を超えて供給される資金の行き先については、インフレが発生し、庶民の生活が直接脅かされることがないように慎重に検討され、運用をされてきた。即ち米英の投資銀行が集めた資金の多くは株式や債券などに企業や国家が所有される対象に限定して、投資されるのであり、一般の庶民とは無縁のところで運用されて来た。その結果、世界各国の企業は株式を上場することで、国内の投資ばかりではなく、世界各国の投資家から資金を容易に獲得することが可能となり、その事業の発展に大きく貢献して来たというのは事実である。しかしその後、問題が発生した、それは歯止め基準が無く場当たり的に通貨が、制限無く供給された結果、その資金の受け入れ先が先進国では、なくなってしまったのである。そこでこの仕組みの推進国である米英は、次に行ったこととして、先進国以外にもこの資金の受け入れさせることを考えたのである。そのための格好のターゲットとなったのは、旧英国植民地で英語が通じる東南アジアであったのである。またあわせて中国にも積極的にアプローチを行ったのである。その結果一旦資金の受け入れ先のバランスは取れたが、結果としてこれらの新興市場の受け入れ能力もすぐに一杯になってしまった。本来この仕組みは自ら十分に慎重に通貨発行高と投資先を抑制すべきことが前提条件であるが、そこを米英は、この難局は新たなる受け入れ先を創出することで対応できると、たかをくくり、引き続き大量の通貨を市場に供給し続け、その結果サブプライムローン問題の発生を起してしまったのである。しかしサププライムローンへの資金流入は、今までの慎重さ、自己規律によりその仕組みを維持して来た、やり方に対する重大な挑戦であり、掟破りであった。即ち投資の対象が資金的に余裕のある、企業や国家の持つ株式や債券ではなく、普通の善良な庶民であったからである。結果としてローンの破綻で最初に被害を受けたのは庶民であった。ここに大きな問題があったのである。しかしそれにも懲りない、米英は日本や産油国・新興国を巻き込みこの問題により巨額の赤字を計上した証券会社や金融機関に対して、それを助けるという名目で今まで以上の資金を供給している、これが今の現状である。その結果サブプライム問題とは比較にならない、重大な問題を引き起こしてしまったのである。
原油や食糧は人間の最低の生活を保障する上でなくてはならないものである。それぞれの国家はこれらの安定確保を最重点の政策としている。また国民すべてに等しく行き渡らすために価格統制や補助金提供も実施している。また過去には各国政府はこれらへの投機資金の流入を断固阻止して来たという歴史もあった。しかしながら、サブプライムの破綻は、各国にとって他に有効な投資先が存在しないことを理解させることになった。そしてなし崩し的に原油や食糧の市場に資金が流れていった。本来原油や穀物市場は需給のバランスを調整する上で創設された、それは供給が多ければ、価格は下がり、供給が減れば価格が上がることで、常に供給側、消費側の需要が一致することを目的として機能していた。しかしこれが、中国やインドの将来の需要増という実需を無視した理由により投機の対象となったのである。しかしこれらの値上がりは、直接庶民の生活に関る死活問題である。即ち生活には問題なく、その上で十分な蓄えの部分を利殖する性質の株式や債券と違い、これらは生活費として直接必要な商品だからである。結果として多くの人々は生活費の高騰や発展途上国では食糧の確保すらままならない状況を、引き起こしてしまったのである。
ところで今原油や穀物は一進一退を繰り返しながら確実に高騰している、そしてこれは投資者から見れば確実にあがる限り損はしない。しかし今株式や債券にこれ以上あがる可能性が低い中で、投資家が原油や穀物に向かっている資金を再び株式や債券に振り向ける可能性はほとんど無い。これは新興国の株式の上昇率が滞っていることを見れば明白である。それではどうなるのであろうか、過去の例を見る限り、一旦原油や穀物に投資家が目を向けてしまった限り、これ以上あがらないところまでいき続ける恐れがある、或いはこの動きに各国政府が強制的に歯止めをかければ、今度は他の庶民の生活物資に投資資金が回るであろう。即ち、米英が自らの怠慢で放棄した慎重さと自己規律が今になって’’つけ’’として帰ってきたのである。こう考えると米英のドルによる世界支配は彼らの自らの失策により徐々に終焉を迎えていることがよく分かる。一方産油国は改めて、原油を有することのすごさと影響力を感じ取ったのであろう。また世界の人は、昨今の世界的なインフレにより、もはや大量に供給されてだぶついているドルに基軸通貨の役割を負うことができないことも認識し始めている。かつて金が世界の本位通貨であったように、信認を失った、米ドルに替わる基軸通貨に原油が取って代わることもあるかもしれない。
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