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June 28, 2008

テロ指定国家解除へ 米国、ベトナムに続き敗北? Vol.157

26日日本から見ればあまりに唐突に、かつ今解除する理由が分からないままに米国政府から一方的に北朝鮮のテロ指定国家解除に向けての手続きをとる旨の発表がなされた。米国を同盟国として頼って来た日本は、米国の勝手な都合で大事な拉致問題においての解決策を失うことになってしまったのである。図らずも米国は口先では同盟国と言って日本を立てるが実際はそれは違うことを万人の前に示したことになったのである。これに対して日本政府は相変わらず、根本問題には関心を払わずに国民の目をそらすことに注力しており、このまま対米関係を維持しようとしている。まずは同記事を産経WEBより引用する。

かすむ「拉致」福田政権打つ手なし 北朝鮮のテロ指定国家解除へ
2008.6.26 20:08 北朝鮮が26日に核計画を申告し、米政府は直ちにテロ支援国家指定を解除すると発表したことで、日本としては日本 人拉致問題解決への有力なカードを失い、大きな痛手となった。町村信孝官房長官は26日夜、首相官邸でハドリー米大統領補佐官と電話で会談し、北朝鮮のテ ロ支援国家指定解除について「日本国民はショックを受けている」と伝えた。自民党内には、北朝鮮政策で「圧力」より「対話」を重視する福田康夫首相の外交 姿勢に、拉致問題解決が遠のくとの悲観論も頭をもたげ始めている。(今堀守通)
 首相は26日夕、首相官邸で「指定解除は日朝交渉を進める テコを失うことにならないか」とする記者団の質問に「まったくそういうようには考えていない」と強調した。また、「(日米が)緊密に連絡を取り合うことが 非核化実現に必要だし、核問題も解決できる道が開ける」とも述べ、米国の協力も得ながら先の日朝実務者協議で合意した「再調査」を早急に実施に移していく 考えだ。
 

25日夜、ブッシュ米大統領は首相公邸にいた首相に電話し、「自分は拉致問題を決して忘れない。日本の懸念は十分理解しており、 日本と引き続き緊密に協力していきたい」と語ったものの、拉致問題の前進が何ら担保されないまま、指定解除の手続きが始まるのは事実だ。大統領の任期も半 年しかなく、政府関係者は「ライス国務長官は北朝鮮の核問題前進を『成果』だと強調する方針に変更はないだろう」と語る。
 「交渉がなければ(拉致問題は)、解決しないだろう」と語る首相。だが、自民党首脳は「米国は勝手なことをする。クリントン政権の失敗を繰り返そうとしている。米国にきちんと言わないといけない」と首相の姿勢に不快感を示した。(一部割愛)


記事から理解できる事実としては、日米同盟は有効であると日本政府は常に発言し、日本発展のよりどころとしているが、実際にはこの同盟はいかにももろく、簡単に米国の国益により反故にされる側面があることを皆に示したことであろう。ところで何故この時期にこのような決定が米国政府でなされたのであろうか?この点について言及するメディアはすくない。

ところで今回の問題が起きる前に米朝間で大きな問題となっていた偽米ドル札の問題はどうなっているのであろうか?私はこの問題の解決とここまでの取り組みが今回のテロ指定国解除の背景にあると考えている。再度簡単に同問題をおさらいしてみると、2005年の末に米国政府はマカオにあるバンコデルタの北朝鮮のドル口座を偽札のロンダリングの可能性があるとして差し押さえ、そして同時に北朝鮮が国家として偽札を製造して世界に流出させているという見解を発表した、そしてその金額は毎年1000万ドル以上であると発表した。そのロンダリングの実働部隊がこのマカオの銀行であるとして一切の口座を差し押さえると発表したのである。これに対して北朝鮮は結果として六カ国会議の参加を取りやめるといった反応を示したが、その後これにより北朝鮮が望むような米朝の直接対話が実現した。その後両国の直接対話により他の4カ国には対話の内容については間接的にしか知ることが出来なくなったということが2年半ほど前にあったのである。

今思うとこの報道のインパクトは非常に大きかった、それは、北朝鮮は悪い国家というイメージを世界に植えつけることは多少出来たが、問題はそれ以上に世界に流通しているドルには偽ドル札という大きな不安要因が存在しており、且つこれらの中にはスーパーノートといって本物以上に精巧であるものがあることを多くの人が知るところとなったのである。結果としてそれまでドルを無条件で信認していた人たちの間にドルに対する信頼が揺らいだという、米国にとって当初思っても見なかった現象が発生してしまったのである。ところで同じようなことは他にもある、2003年のイラク戦争でも米国が結果的にフセイン政権を倒したが、その後の米国の統治がうまく進まず、それまでは誰もが世界で米軍は突出したスーパーパワーとして恐れていたがその後は米軍はあまりたいしたことがなく、米国はイラク一国すら治めることが出来ないという実体を皆の前に暴露してしまったことがあげられる。これらの一連の失態により世界の人々は米国にはもはや以前のようにスーパーパワーとしての力はなく、これからは米国に頼るだけではうまくことが運ばないといった一種の懸念のようなものが発生したと思う。その状況の中で、今回の北朝鮮に対するテロ支援国家解除を考えると背景がよく見えてくる。即ち米国にとって既存の中東の対策即ち対イスラエル支援やイラクの統治、またイランとの交渉などを考えるとこれ以上他の地域の事情に関与することは物理的に無理であり、縮小或いは撤退しなくてはならず、その困難な状況の中で今回の決定がなされたということである。

ところでこの決定により、拉致問題を抱える日本とその家族は大きな岐路に立たされることになった。それは米国から加えられる圧力を頼みの綱としていた日本にとってその綱が切れたからである。結果として我々は今後自らの判断でこの問題に対処するしか方法が無いのである。果たして今の政府がこれを行う能力があるのか、ここはしっかりと見定めなくてはならない。

ここでもう一度偽札の問題について、話を戻したい。我々は米朝の直接協議によりこの問題は解決したかのような認識を持っているが、本当にそうであろうか?私はそうは見ていない、それはその後もアジア特に中国では偽ドルの流通は減っては居らず、むしろ確実に増えているという事実があるからである。実際にこの問題は深刻である、中国では日本と同様にドルは国際基軸通貨として認められており、どこの銀行でも人民元に交換してくれる。そして人民元への両替が面倒に思えば、直接ドルで決済をすることも多い。結果として仮に偽札が出回っていても実際の経済活動においては何の支障もなく使用できるのである。そしての其の背景にあるものは、中国や日本では両国政府が保証する形で、米ドル紙幣は無条件で自国通貨に両替可能という共通認識があるからである。それを良く知っている北朝鮮は中国との貿易の決済にこのドルを利用する、その上このドルは精巧であり、中国や日本の銀行に備えられている、偽札判定機では簡単に本物と認識され、お墨付きを持って人民元や円の正札に交換される。この事実が周知の事実となれば、敢えて正札にこだわる必要はなくなる。そして同国の偽ドル印刷業者から有利な条件で積極的にこのドルを購入しようとする動きが出てくるのは当然である。そしてそれが自然な形で、対中貿易などの国際貿易に利用されるのである。

ところでどうしてこのようなことになったのであろうか?というよりどうして北朝鮮は多額のコストをかけて偽札を作ることをプロジェクト化したのであろうか?この疑問の回答を考えると北朝鮮のしたたかさと、今回のテロ解除までの動きの背景が分かる。それは、こういうことである。米ドルは、1971年以前は一定量の金と交換できる兌換紙幣であった。したがいその時のドルはまさしく金と等価の価値を有しており、これに対して皆が信認し争うようにドルを獲得していった。しかしその後ドルの発行額が多くなり、米国にそれに相当する金がないことが皆にしれると同国政府は一方的にドルと金の交換停止を発表した。一方でこれにより起こりうるドルへの不安を抑えるために先進国各国と手を組み、ドルの価値維持に奔走した。その中で、米国ともっとも関係の深い、日本はドルの価値維持に全面的に協力することをいち早く願い出た。これは日本にとっても輸出で稼いだドル資産の目減りを防ぐためにも有効な方策であった。そして米国はそれまで国内の雇用が失われるとして猛反対していた日本製品の輸入を手のひらを返したように受け入れ、その決済に使われるドル紙幣を何の制限も無く発行しづけたのである。また時として米国の貿易赤字が問題にされドルの下落傾向が強まると、米国政府は日本政府に対してドルを下支えするために米国債の買い付けを要求し実施させた。結果として日本は米国に商品を売ることでドルを手にして、豊かになり、一方米国は自ら日本と対抗するような製品を製造しても勝ち目はないことを悟り、これを徐々に取りやめ、自らは製造には関与せずに日本から輸入する道を選んだのである。そしてこの日本の成功を目の当たりに見た、韓国、台湾、香港、シンガポールが同じくこのやり方に続き、その後はASEAN諸国や中国も同じやり方をとって、経済的に成長していった。特に中国がトウショウヘイの開放改革政策以降、積極的にこのやり方を推進したことは米国にとっても、この流れを決定的にし米国はもはや後戻りが出来ない、ドル発行地獄への道へと向かっていったのである。この間米国は中国との新たな関係作りの成功に意を強くして、ベトナムや北朝鮮の旧社会主義国に対しても同じ道をとるように圧力を掛けていた、結果として80年代末にはベトナムはASEAN諸国の一員としてこの流れに沿うようになっていた。しかしながら北朝鮮はこの動きには断固として乗らなかった、それも中国や韓国の度重なる誘いや支援を断ってまでである。しかしながら同国はしたたかであった、冷静に米国を分析した結果、米国経済の実体もはや存在しておらず、虚構の中で、米国において競争力があり、諸外国に輸出できるものはほとんど無く、ドル紙幣の政府保証による無担保での発行が無くては、とてもその膨大な輸入総額をまかなえず、同国は存在できないことに気がついたのである。そしてドルはすでに日本、中国や他のアジアの諸国の支持と信用なくしては、その価値を維持することは不可能であることが分かったのである。それを知った北朝鮮は自らの国体を変えて国家主席や首脳部の地位を不安定にしてまでも、米国好みの輸出経済体制を作り上げるより、もっと直接的に偽ドル製造に自前の経営資源を集中し、それも先進国の偽札判定機の能力を超越する高精度な偽ドルを流通させる方が効果が高いと判断したのである。これはある意味では当然の選択かもしれない。そしてもう一つの効果的なプロジェクトである、核兵器の自主開発に着手して、米国がよりどころとしている2大優位性を消し去ることに専念したのである。

結果的にはこの2つの戦略は大きな成果をもたらすことになる、それは北朝鮮が偽ドルスーパーノートを作ることや、核爆弾を作り上げる能力ががあることを示すだけで、それを実際に使用しなくとも、米国の一極支配体制に動揺を起させ、その結果同国の国体を変えることなく、その立場を安定させることに成功したのである。結果として世界はドルと核兵器の存在に対して今までのように重きをおくことに疑問を持ち始め、その結果米国はこのしたたかな小国のやり方に屈する形で無条件に受け入れざるをえなくなり、そしてその管理を中国に任せることでアジアへの関与をあきらめることになった。歴史的に、朝鮮半島の国家は島国の日本と異なり、ほとんどいつも大陸の大国の影響下でその国体維持を守って来た、時として大国に屈服しながらもその弱点を冷静に見つめ、朝鮮民族の国を維持して来た。この点で我々は改めて同民族に敬意を表すべきであるし、またアジア諸国の多様性を改めて認識すべきであると思う。そして、我国においても大国に従属するだけが生き延びる道ではないことを再度考えるべきであると思う。

ところで後世の歴史家は米国議会が北朝鮮のテロ支援国家解除を受け入れた時点で、米朝戦争の米国側の敗北による終了とするかもしれない、それだけ今回の事実は大きな歴史の転回点であると思う。

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