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July 18, 2008

ドル、原油に続き、核においても米国は覇権をあきらめ始めた。Vol.162

第2次世界大戦、そして冷戦の終結を経て、米国は世界唯一のスーパーパワーとして君臨した。その背景にあるものは米国が覇権国として世界中をコントロールしていた、ドル、原油、核の三種の神器の存在があったのである。そして1990年代には米英が組んだ、グローバルスタンダートを基準としたドルによる世界経済体制は、世界各国に未曾有有の繁栄をもたらしたと考えている。しかしながら、一昨年のサブプライム問題の勃発を契機に米国の世界覇権が音を立てて崩壊している。すでに本稿ではこれらの現実として余剰ドルによる世界的インフレの問題、また原油の高騰による米国の支配の終焉を説明して来た。そして核に関しても下記の通り米国の政策の変更が進められているのである。これも米国が世界の覇権国家として自らの意向どおりに動かない他の国家を一つ一つ力でねじ伏せ、従わせた時代の終焉を意味している。それでは7月17日の東京新聞のWEB版の記事を引用する。

イラン核協議高官派遣へ 米政府 『大きな政策転換』2008年7月17日 朝刊
 【ワシントン=立尾良二】米国務省のマコーマック報道官は十六日、イラン核開発問題をめぐりイランと欧州連合(EU)が十九日にジュネーブで開く 協議に、同省ナンバー3のバーンズ国務次官が出席すると発表した。ブッシュ政権はこれまで、イランがウラン濃縮活動を停止しない限り同国と交渉しない方針 だった。米メディアは「大きな政策転換」と報じている。
 

協議にはEUのソラナ共通外交・安全保障上級代表とイラン最高安全保障委員会のジャリリ事務局長が出席。米国を含む国連安全保障理事会常任理事国 とドイツの六カ国が六月にイランに提示したウラン濃縮停止に伴う軽水炉建設や経済支援など「包括的見返り案」について話し合う。
 同報道官は、バーンズ次官の協議参加について「一回限りで、交渉ではない。見返り案への返答を聞く」と述べ、イラン側との二国間協議の可能性を否 定。「イランが米国と交渉するには、まずウラン濃縮を停止すべきだという基本原則を伝える」と語った。ペリーノ米大統領報道官も「米国が外交解決を目指す 真剣さの表れだ」と説明した。
 ブッシュ政権はイランの核開発阻止に向け「すべての選択肢がある」と言明。武力行使の可能性も排除していない。これに対しイランは先週、ミサイル発射実験をするなど両国関係は緊張している。
 ただ、イランも欧米との交渉には前向きだ。三度の国連安保理制裁決議や各国独自の制裁が効果をあげており、米高官の協議参加は外交解決に向けた好機とみられている。

米国は、ドルにおいては他の先進国を仲間に引き込み、自国の通貨ドルを世界通貨に格上げすることで、世界の覇権を握った。しかしながら、冷戦が終了後、本来覇権国として自らに課すべき自己規律を放棄して、特権である通貨発行権を無制限に利用して安易な供給を行い、結果として余剰ドルの問題を生み、自らのドルの価値を弱めてしまった。また原油については、サウジアラビアを始めとする、中東諸国の原油の販売を実質的に独占しながら、一方では世界中には原油の便利な利用方法を広範に普及させ、米国の考えにあう、消費文明、物質文明を普及させ、世界に幅広く石油関連製品の市場を創出し、その上で原油価格をコントロールすることで莫大な利益を自国にもたらしていた。具体的に原油を利用して世界各国の産業界に直接かつ間接的に影響力を保持して、その上でドルを利用して株式投資や債権投資を組み合わせて、自らの考えに適う投資先を作り上げ利益を上げてきたのである。しかしながら世界の株式・債券市場が飽和状態になると、このドルの受け入れ先を意図的に作られた米国住宅市場に振り向けざるを得なくなり、本来ならば持ち家をもてない人に将来の住宅価格の上昇を担保に借金を負わせ、それを元に膨大な利益を上げていたのである。しかしながらこれについても、短期的な対応策に過ぎず、一旦庶民が現在の住宅価格が高すぎると感じ出すと、思い描いた通りには進まず、その仕組みの崩壊により膨大な金額の損失を招いている。その結果、米国が戦略物資としてその価格を常にコントロールしていた原油にその余剰マネーが向かい、今の原油高騰を招いている。この高騰は短期間のゆれ戻しなどはあるだろうが、米国の大手投資銀行が発表しているように200ドル位までは上昇するものと思う。

ところで今般発表された米国政府のイランの核に対する政策転換の背景についても、上記と同様に米国覇権の衰退を考えるとよく分かるのである。核については先に北朝鮮に対して、従来の強硬姿勢から柔軟姿勢に180度展開したが、これと同じことがイランについても言えるのである。核というと、すぐに核爆弾が浮かぶが、ここでいる核とは、天然ウランに0.7%程度含まれているウラン235の純度濃縮技術のことである。天然ウランには235のほかにその大部分を占めている238が有るがこれは核分裂反応を起さずに発電や核兵器には利用できない。そこでこの235の濃度を高めて2-3%にして原爆には利用できないが発電には利用できるウランを濃縮する技術が必要になるのである。米国は先の大戦中に原爆を製造した際に、すでに235の濃度を90%に以上に高める技術を有しており、その結果、この濃縮の技術を他国に渡さないことで、核における世界の制覇を意図したのである。具体的には各国が濃縮技術を手にしてしまえば、容易に90%以上の核爆弾用のウランを作ることができるので、世界平和が妨げられるという理由をとってつけ、この技術の独占かを目指したのである。このことは即ち原子力発電を世界中に普及させることで、濃縮ウランを作る技術を持っている米国のみが儲かることを画策したのである。しかしながら、この濃縮法について、その後の技術革新により、米国が開発したガス拡散法以外に遠心分離法が開発されると、米国の優位は崩れることになった。その後はこれらの新製法を持っている国々と共同作業を結ばなくてはならなくなり、今日まで来ている。しかしながら、このような情勢の変化にも米国は相変わらず、自国の原則を曲げずにここまで旧態依然とした政策を採り続けてきたが、結果として北朝鮮の原爆の開発やイランにおける独自の濃縮などが次々に明るみにでることとなり、米国自らでは対処が出来なくなったのである。

このような状況下ブッシュ政権は、北朝鮮の問題は6カ国会議のまとめ役を中国に移譲し、また今般のイランの濃縮ウランの問題についても国連や欧州諸国に預けることとしたのである。これも米国がこの分野においての覇権をあきらめたことを意味している。

さてこのような米国の衰退を世界中の人々が認識した中で我国はどのように将来を見据えて、自国の運営を継続させるべきであろうか?この点について、政治家よりなんら言及がないことは大きな問題と思う。EUが米国の覇権弱体化に合わせてその後の世界において、自らの繁栄を継続させるために、EUを組織して、設立させ、米国との一線を画した経緯をもう一度よく検討して、我国もそれに学ぶことは必要ではないかと思う。もはや、米国には日本を守っても得られる利益は限られており、そうであれば平気で彼らは対日政策を変えることが十分に予想できるからである。むしろ中国や韓国などの隣国と共同して自らの将来を切り開くことこそが重要であり、現実的ではないだろうか。

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