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July 22, 2008

食糧自給は安全保障の生命線 Vol.163

現在WTOのウルグアイラウンドに関する会議が開かれており、日本は農産物輸入において更なる自由化を求められそうな気配である。一方今回も米国は自国のやっている政策を棚に挙げて、国益を前面に出して、全体の調和を乱している。即ち自国の補助金政策を継続した上で、世界各国には自由貿易を求めるという極めて自分勝手な理屈を通そうとしているのである。ここでちょっと古いが5月23日の米国議会において可決した新農業法についての記事を改めて引用する。

米、新農業法が成立 大統領の拒否権覆す2008.5.23 10:39
米上院本会議は22日、ブッシュ大統領が拒否権を発動していた新農業法案を圧倒的多数で再可決した。下院も21日に再可決しており、同法は成立した。AP通信が伝えた。ブッシュ政権下で米議会が大統領の拒否権を覆し法律を成立させたのは2度目となる。
 新農業法は今後5年間の米農業の基本政策を定める法律で、生産農家に一定水準の収入を保証する補助金を初めて導入する。予算規模は5年間で約3000億ドル(約32兆円)に上る。 農産物の価格下落分を補償する現行の保護主義的な補助金も温存。世界貿易機関(WTO)農業交渉が大詰めを迎える中、欧州や途上国からは反発も出そうだ。(共同)
産経WEB 一部割愛

ところで食糧の確保は世界各国にとって自国の存亡を決定付ける安全保障上の生命線である。特に60年前まで戦争に明け暮れていた欧米先進国にとって、戦争により国民が飢えることもあった光景は深く脳裏に焼きついており、仮に戦争となっても国民が飢えることを絶対に避けるようにその確保を安全保障上のもっとも重要な課題として取り組んでいる。その結果、国内での農業を奨励し、主食については、なるべく輸入をしない仕組みづくりをしている。その結果多額の農業奨励金を出すことを認めており、その総額はEUでは年間4兆円、米国では年間3兆円といわれている。上記の米国の決定もこれと同じ線上にあるものである。その結果これらの各国の食糧自給率は最低でも70%を超えているのである。実際にドイツに住んでいた時に目にしたのは、ドイツの農家は自分ではほとんど農作業に従事はしておらず、その代わりポーランドなどのEUのほかの国からの季節労働者を大量に雇用しており、安価な労働力と多額の補助金を受領することで営農を続けている。そして国家は食糧の自給を確保しているである。一方我国の事情はお寒い状況にて米については、必要量を確保しているが、それ以外はほとんど輸入にて自給率は40%を割っていることはよく指摘されることである。このような状況下、今までより一層の自由化を求められる事になった場合、少なくとも今の自給率を確保してその上で、他の先進国並にすることは可能なのであろうか?

一方米国においては、現在自国農業の競争力向上のために、補助金政策の強化とともに、農業事業そのもののコスト削減も進められている。これは食糧の自給を達成した後の事業としての自国農業の競争力の強化が課題となっていることを意味している。農業の場合その競争力は、単位面積あたりの収入で測ることが出来る。即ち機械化や化学肥料、農薬を十分に使うことで、少ない労働力で多くの収量を手にすることが出来れば相対的に販売価格を抑制することが可能であるからである。そして輸出市場においては、この余剰食糧が取引されるのである。この分野では米国が推進する、大規模化、機械化、化学化、そして遺伝子工学によるGMO作物の普及により、同国の製品は価格競争力があり、一方で、それを自由貿易を推進する立場から世界各国に強引に押し付けるというのが米国の政策である。

当方が以前関った農薬業界については、別の事情があった。それは、米国は原油覇権を用いて世界を支配しようとしており、その上で米国はドルを無制限に供給できる唯一の特権を有していたので、自らが原油の最大の消費国になることで影響力の保持を望んだのである。その結果、車や航空機など原油を大量に消費する製品を数多く生産して、しかも国民に安価に供給する仕組みを作り上げ、世界最大の原油消費国になったのである。そして原油から燃油分を取り除いたナフサの有効利用についても積極的に国家政策として促進したのである。その結果、石油化学品としてプラスチックや化学肥料、化学農薬などが大量に製造され、比較的安価なコストで供給されたのである。そしてその物質的、使い捨て浪費文化をカッコの良い米国文化として世界に普及させたのである。その結果、農薬においても、本来必要が無いものでも大量に使用されたのである。しかしながらこのような浪費をよしとする文明は多くの矛盾を抱えることになる。実際に環境の悪化や子供アレルギーの問題などの副作用も多く生んできた。そして各国がその問題に気がついた時、欧州各国はいち早く、環境保護問題に取り組み、石化製品の過剰生産には規制をするようになった。また農薬についても減農薬や有機農法の普及に努めて、使用総量を規制している。一方米国はいまだに原油への依存が大きく、基本的にはなんら対策を講じていない。そして農薬に環境破壊などの、副作用が指摘されるようになったあたりから、その延長線上にある新ビジネスとして遺伝子組み換え技術を用いた、除草剤ラウンドアップ耐性の種子を開発して、利益を得るという方針に転換し、欧州市場への再参入を試みているのである。

今回のWTO会議の席上、ブラジル代表よりこのような米国のやり方に異議が唱えられた、即ち米国は自国の農業に大量の補助金を提供していることを棚に上げて、農産物の自由貿易のみを推進するならば、自国の農民に補助金を出せない新興国や発展途上国は平等な競争が出来ないという反論である。これに対して米国は多少の譲歩の姿勢を見せながらも、国連に圧力を掛けることで自国の方針を受け入れさせようとしている。また一方では自国で開発したGMO種子を安全の保証が無いままに世界中に受け入れさせ、本来補助金を受けられずに弱い立場の新興国、途上国の農家に対し、競争力のある農業を約束するものとして、販売し暴利を貪ろうとしている。これが現実なのである。

しかしながら、今米国はドルや核また原油それぞれにおいて自国の影響力を衰退させている。その中で食料についてもその影響力の低下は明白である。それだけに今回の会議では今まで以上に自己主張を行い、自国に有利にするように動くと思われる。

その中で日本は将来に向けてどのような方針を採るべきであろうか?日本はまず安全保障の確保という見地から一刻も早く、自国の食糧自給率を向上させる必要がある。そのためには他の先進国がやっていると同じような農業補助金の仕組みの制度化を検討すべきである。その上で競争力をつけた分野については、自由化を進めればよいと思う。もはや米国に頼るだけでは国民の食を守ることができないことを肝に銘ずる必要がある。そして出来る限り、安全かどうかが不明な米国産の農産物は購入しなくても済む、安全な食糧による自給体制づくりをしなくてはならないのではないか?実際現在でも表示義務のない加工食品には消費者が好まなくても米国産の牛肉や遺伝子組み換え食品が堂々と使われているが、一方で我々はその存在すら知るすべを制限されているのである。このまま、なにも対策を打たずに、食糧の海外依存を継続するのであれば、近い将来米国が進めているGMO作物や牛肉では、狂牛病の疑いがある牛肉などしか、輸入できなくなる時代が来るかもしれない。そうすれば万が一の際に、他の選択肢はなくなり、日本は危機になってしまうのである。それを避けるために食料の自給体制の確立は急務であると思う。今日本はこの分野でも米国からひとり立ちする、重大に岐路に立っているのである。

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Comments

 はじめまして、仙台のくまさん申します。

私は人生59年で次のことに最近気づきましたので、参考にされましたら幸いです。

http://seiiti-syouji.at.webry.info/200802/article_4.html

参考にならないようでしたら、このコメントを消して頂きたいです

Posted by: 仙台のくまさんです | August 27, 2008 at 04:26

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