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July 26, 2008

不換紙幣ドルの崩壊が始まった Vol.164

サブプライムローンシステムの崩壊以来、ドル安が続いている。いまやドルの帰趨は、最大の産油国であるサウジアラビアを始めとする中東産油国、また最大の対米貿易黒字国である、中国と日本がいかに米国国債や他のドル建て債権を所有し続けるかに掛かっているといっても過言ではない。即ち万が一にもこれらの米国建て資産の保有国がドルの先行きは暗いとして売却に動けば、一気にドル安の流れは加速するからである。ところで本稿では、以前より余剰ドルの問題について指摘して来たが、本日の産経WEBに田村編集員の記事が掲載されていた。分かり易いので引用する。

【経済が告げる】編集委員・田村秀男 ドルという飛銭と世界危機
2008.7.26 03:04  五輪メダルを彩る金、銀、銅は本来の貨幣だったが、唐の帝国は実物から遊離した紙のおカネ「飛銭」を発明した。それ を飛躍的に発展させた元は統一紙幣によって世界を支配したが、帝国は紙幣乱発とともに滅んだ。以来、近代の大英帝国であろうとも、金、銀の裏付けがある 「兌換(だかん)」紙幣でなければ世界に君臨できなかった。
 

兌換できない紙幣が世界通貨として復権したのは1971年8月のこと。ニクソン米大統領(当時)がドル・金の交換停止を発表して以来、米国は紙切れで世界を主導する歴史上2番目の世界帝国になったが、ドル危機は繰り返し起きる。ドルが暴落したらどうなるか。
  米兵は、値打ちがどんどん下がるドル札を那覇、東京・六本木のバーやホテルで受け取ってもらえなくなる。イラクでもアフガニスタンでもドルで物資を調達できなくなる。米国は全世界に張り巡らせた軍事基地を維持できず、世界の秩序は一夜にして壊れる恐れが生じる。だからまともな世界の指導者は何かあればドルを支える。
 昨年8月の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機に始まる金融不安の波は、米連邦住宅抵当金庫(ファニー メイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の経営不安の表面化でいよいよ本丸に迫った。両社は米住宅ローン総額の半分近い5兆2000億ドル(約 550兆円)を引き受けている。赤字国債を発行して公的資金を注入すれば米金融市場の要である米国債は市場で氾濫(はんらん)し、FRB(連邦準備制度理 事会)がドル札を刷って両社を救済すればFRBの信用がおぼつかなくなる。 
 「外貨準備を融通して米国の公的資金注入を支援することもありうる」(渡辺喜美金融担当相)非常事態だ。日本の外準は1兆ドルを超えるが中国は1兆8000億ドルもある。当座の公的資金必要額の数百億ドルは軽く賄える。「確かに中国も誘い込めば、米金融市場の動揺は治まる」(米国務省筋)
 だが、それも甘い考えかもしれない。今回のドル危機の構造は かつてのとはかなり違うからだ。米国は2000年初め以来の住宅ブームを原動力に、ドルを「デリバティブ」(金融派生商品)と呼ばれる金融市場で爆発的に増殖させてきた。デリバティブとは原油などの商品から金利、通貨、天候、景気指標などに至るまで、変動する事象の将来をすべて賭けの対象にするマネーゲームである。
 実は2社の赤字の大半は、住宅金融の焦げ付きからではなくデリバティブ取引の損失からきている。デリバティブの市場規模は昨年 末596兆ドルと実に世界のGDP(国内総生産)の10倍以上、胴元になっているのがJPモルガンなど米銀や欧州の大手金融機関、その主力の取引先が連邦住宅抵当公社2社。デリバティブ市場で動き回る余剰マネーは原油や穀物先物相場を高騰させては世界各地で暴動や農民・漁民のストを引き起こすかと思うと、 今度は住宅抵当公社の経営危機を引き起こし、とどのつまりがドルそのものを襲う。まさしく「デリバティブは大量破壊兵器」(全米一の投資家、W・バフェッ ト氏)である。
 現代のドル危機とは、しょせんは金銀との結びつきを断った「飛銭」なのに、束縛がないことを良いことにコンピューターという技術革新をベースに極端に膨張したことから生じている。ドルが暴落すれば世界が壊れる。さりとて暴落しなければ、その狂態は続く。今の世界不安は実はまだ始まったばかりなのだ。(たむら ひでお)

古来、紙幣は中国の発明といわれている、ここで言う飛銭とはまさしく紙幣の前身をさす言葉である。そもそもここで言う紙幣とは、金銀などの貴金属とそのままでは交換できない不換紙幣をさす言葉である。これは国家の信用によりその価値が保証され、発行され流通している貨幣である。実際に米ドルは71年の金兌換禁止以前は兌換紙幣であった、飛銭として分類されるのは金兌換停止以後の米ドルを指す。中国では唐の時代に飛銭が発明され、その仕組みを大々的に発展させたのがかの世界大帝国であるモンゴル帝国であるといわれている。同国はアジアから中央アジア、ペルシャ、ロシア、アラブそして欧州の一部まで支配した大帝国である。この大帝国が一つの不換紙幣を通用させたということは驚くべきことであり、それだけにこの飛銭は有用なものであったと思う。しかし同帝国も他と同じく、成立後の国内の制度疲労により官僚の腐敗、国家財政の浪費が相次ぎ結果として過度のインフレに悩むことになる。そしてそれにあわせて被制服民族は圧制から逃れることを考え、この飛銭の偽造を始めたのである。これはかつてより独自の文明国として君臨していた朝鮮やペルシャ人にとってはいともたやすいことであり、必然として起こった事象である。結果として大モンゴル帝国にこの偽造通貨が流通することでますますインフレが進み、地域経済が崩壊し、それがモンゴル帝国自体の分裂をもたらしたのである。この事実が示すように、不換紙幣の供給管理には甚大な労力と自己規律が必要となるのである。ところで中国には有史以来数多くの王朝が存亡していたが、そのそれぞれが紙幣の乱発による自国経済の破綻により滅び、一旦精算され、その後次の王朝が一から同じことを繰り返すという恒久普遍の歴史が存在している。

ところで欧米の事情はどうなのであろうか、私の知る限りでは、かのローマ帝国ですら銀や他の金属を材料とした硬貨の存在はあるが、不換紙幣が流通したということは聞いていない。むしろ代わりに奴隷が貨幣同様に利用されていたのである。即ち当時のローマは銀及び奴隷本位制併用経済であったのである。奴隷は敗戦国の国民である、当時は戦争に負けるということは一国の滅亡を意味しており、市民が容易に奴隷に変わることであった。そして奴隷一人一人が価値を持って流通していたのである。奴隷が通貨として都合がよかった点に奴隷は人間であるので寿命がある、その結果奴隷を本位通貨として使っている限り、インフレは起きなかったのである。この制度がローマ以降の欧州には色濃く残り、その後のスペイン・ポルトガルから始まり、産業革命期の英国ですら銀と奴隷を本位通貨とした経済システムを採用していたのである。ところで欧州はスペインによる中南米の占領以降、大量の銀の確保が可能となった、その結果自国の経済規模に比べて大量の銀がながれこみそれが通貨として流通し、インフレに悩まされて来た。そしてその後ユダヤ人が金融に深く関るにつれて、その経済規模を拡大し、インフレ懸念が増大した、そこでそれを解決するためにとった手法が帝国主義なのである。即ち自国経済のインフレによる破綻を起さないために自国の領土を広げることを考えたのである。その意味では発達した殺人兵器を有する欧州には有利に働いた、その結果欧州及びそれに遅れて国家統一を果たした欧州人国家米国はそれぞれに地球の植民地化をものすごい速度で目指したのである。しかしながら地球は有限である、列強は中国の向こうにある日本が米国の隣国であることを知り呆然自失となったのである。これ以上獲得すべき土地が存在していないことを知るのである。しかしながらそれまで欧米列強が増強に次ぐ増強を進めてきた軍備力を廃棄するといった発想は残念ながらなかった、そのまま制限することなく、増強を続けた結果、あの悲惨な同士討ちである二回の世界大戦を招いてしまったのである。その意味では世界大戦は経済運営の見地から見ると起こるべくして起きたものと考えることができる。

第2次世界大戦が終了して、米国が西側の盟主となると同国はドルによる世界覇権を目指した、そして欧州各国が戦争で焼け野原となり、まったく生産力を持たないことに対して多額のドルを貸し付ける形でドルの流通拡大を図った。その後欧州各国及び日本が復興を遂げても米国は今まで同様にドルを唯一の基軸通貨として強引に供給し続けていた。その結果ドルの供給量は過大となり、これに気がつき同国の経済が崩壊することを恐れた米国は時のニクソン大統領により金との兌換を取りやめたのである。71年のことである。その後初めてドルが、モンゴル帝国が採用した飛銭と同じ不換紙幣となったのである。その後米国はG5(今ではG8)を組織して各国が協調してドル経済体制の維持に努めたが、自国の製造業の衰退により追い詰められた同国は、今まで以上に金融業にシフトせざるをえなくなり、80年代後半より始めた新資本主義をによる、グローバル経済体制をもとにした金融立国をめざしたのである。そしてドルによる世界各国の株式・債券市場への資金投入による金融業にのめりこんでいくのである。一方このやり方も90年代にはピークを迎えることになり、それに替わる投資先をIT技術の進歩に頼った、人の頭を離れたデリバティブ取引に頼ることになったのである。しかし物事の判断をコンピューターに任せたことにより、デリバティブビジネスに一切の倫理的歯止めが利かなくなり、ドル建てのデリバティブビジネスの規模は鼠講的に拡大したのである。そして米国や先進国が自らの力量では、コントロールできない規模にまで膨らんでしまったのである。そしてそれに追い討ちを掛けるように起こった問題がサブプライムローンの破綻なのである。即ち米国及び先進国が作り上げた仮想金融受け入れ先であるデリバティブ市場が崩壊したのである。過去の中国の王朝が実例で示した通り、自国の貨幣経済をコントロールできなかった段階でその王朝は崩壊にむけって一気に没落する。そして一旦精算された上で、また一から始まった歴史が今、繰り返されるのである。今回のドル下落の問題は、まさしく不換紙幣の管理という基幹業務を自ら放棄して、コンピューターと一部の資本家に任せた米国政府の判断ミスにより起きたことを今我々は認識しなくてはならないのである。

ところで江戸時代の我国の経済体制は国民が飢えないための共通食糧である米と円滑な経済活動に必要な銀の両本位体制であった。大阪には国内最大のコメ市場が設けられ、常に米と銀を一定比率で交換していたのである。このことに注目すると、今世界での原油がかつての米の役割をになうのではなかろうか、原油ならば世界のどの通貨とも交換可能だからである。即ち原油は世界共通通貨なのである。とすれば江戸時代の日本に範をえて、衰退するドル経済を、原油を本位通貨として共用することで延命させ、世界経済の一気の崩壊を防ぐことが可能なのかもしれない。

今世界第2位のドル国債保有国である日本は、奇しくも最大の保有国の中国の隣国であること、また両国は漢字を通じて双方が理解しえる関係にあるという幸運を、もう一度認識し直し、お互いの共通資産である虎の子のドルの更なる下落を防ぐために、今後どのように没落途上にある米国とドル経済に付き合い、支えていくかを考える時期に来ていると思う。

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Tracked on July 26, 2008 at 13:17

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