不換紙幣ドルの崩壊が始まった4 ロシアの台頭 Vol.169
グルジア情勢が風雲急を告げている。昨日ロシアのメドベージェフ大統領が、グルジア領内の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国のグルジアからの独立を承認したというニュースが飛び込んで来た。ところでこの動きの背景を示している記事が日経WEBに出ていたので引用する。
BP、石油輸送を再開 グルジア経由のパイプライン 2008.8.26
英BPは25日、グルジア経由でアゼルバイジャンとトルコの地中海側を結ぶBTCパイプラインによる石油輸送を20日ぶりに再開した。ただ、ロシア軍は 停戦合意に反して石油などの輸出港である黒海沿岸ポチの占拠を継続。グルジア船を攻撃したロシアのミサイル艦が再び黒海に出動したとの報道もあり、グルジ ア経由の石油輸送を巡る情勢はなお不透明だ。BTCが停止したのは5日にトルコ区間で爆発が起きたことが原因だが、BPはロシア軍の攻撃を恐れ、12日からアゼルバイジャンと黒海沿岸のスプサを結ぶ別のパイプラインの石油輸送も止めている。こうした輸送網はロシアを通さず欧州までカスピ海産の石油を運ぶため、ロシアはグルジア侵攻で自国の影響外のエネルギー輸送を阻害する狙いとの見方もある。ロシア軍はアゼルバイジャンなどが石油・石油製品の輸出港として利用するポチの施設の占拠を続けている。24日にはアゼルバイジャンからの石油を輸送していた鉄道貨車がグルジア中部のゴリ近郊で爆発。同地域を占領していたロシア軍が地雷を敷設した疑いが出ている。(モスクワ=古川英治)(14:33) =一部割愛
この記事を見るとよく分かるが、何故米英はグルジアを支援するかといえば、ロシアの干渉を受けることなく、カスピ海油田を地中海に輸送できるBTCパイプラインの安全確保が目的であることが明白である。このパイプラインは2006年に英米が主導する企業連合がアゼルバイジャンのBaku,グルジアのTbilisi,トルコの地中海沿岸の都市Ceyhanを結んだ全長1768kmのパイプラインである。日本の伊藤忠商事も出資している。ところでアゼルバイジャンもグルジアも旧ソ連の国々である、91年のソ連の崩壊とともに分離独立した国である。一方でアゼルバイジャンには第2次世界大戦以前には世界最大の産出量を誇ったバクー油田があった、そして今もアゼルバイジャンには産出量が豊富な油田がある。この油田は1900年代初頭には世界の原油供給量の90%を占めるほどの産出量であった。そしてこの油田には当時のロシア帝国の外資依存による開発政策により、ユダヤ資本のロスチャイルド家が積極的に関与していた。そしてロシア革命の騒乱のなか、英国の傀儡政権である旧アゼルバイジャン共和国が設立され、ロスチャイルド財閥は巨万の富を得ることができたのである。しかしながら元はロシアの領土であり、ソ連は1920年に同地を再度占領し、その支配が91年のソ連崩壊まで続いたのである。その後ソ連の崩壊とともに、同地区には再び米英の干渉が始まり、結果としてアゼルバイジャンと隣接するグルジアには米英主導の傀儡政権が樹立されたのである。即ち今起こっているグルジアでの動乱は実は米英とロシア間が歴史的に繰り返して来た抗争の延長にあるのである。
ところで米国が、71年に金とドルの兌換停止を突然宣言し、ドルが不換紙幣になったことはすでに述べた。しかしその後ドルは現在に至ってもその実力は弱まったものの、世界の基軸通貨としての位置づけは確保している、その間どうして金兌換という裏づけが無くても基軸通貨として留まることが出来たのであろうか?この疑問に対して筆者は金に変わる兌換資産として米英が構築した、原油のドル建てのみによる独占的取扱権を担保として差し入れたと見ている。そして現在ドルの信認が揺らいでいる最大の原因はロシアの台頭による、原油業界における米英独占体制の崩壊がその背景にあると思っている。具体的に指摘をつづけたい。
古くから原油の存在は知られてはいたが、その産業化は19世紀の米国のペンシルバニア州のドレーク油田の発見まで待たなくてならない。人類はそれまでは灯油として鯨油を利用していた。19世紀にペルー提督が黒船で江戸幕府に開港をもとめたのも、捕鯨船の薪水の供給を幕府に認めされることが目的であった。それだけに人類が原油から灯油が精製されることを知ったことは画期的であった。その上、その分留物が今までの石炭に変わる燃料源としての機能があることを知ったことは20世紀の方向性を決めるほどの重大な転機となったのである。その後燃油の利用は船舶や陸上輸送においては無くてはならないものとなり、米国および世界中で原油鉱の開発が進められた。そして米国ではガルフといわれる、メキシコ湾沿岸地域やカルフォニア州で相次いで油田が発見され、欧州近隣では上記のバクー油田や中東の油田がつぎつぎと発見されたのである。そして燃油の重要性は戦争が起こるたびに、大きくなり一国の安全保障を決める生命線になったのである。日本においても明治維新を成功させ近代国家の一員となったのち、その立場を維持するために軍事力を強化する必要が生じ、国家予算の多くを掛けて軍艦などを建造したが、それとあわせて原油の確保が重要な課題となったのである。当時の日本は米国から原油の供給を受けて来たが、結果として米国がその供給を突然止めたことにより太平洋戦争に突入してしまったのである。それだけ原油の確保は安全保障上の重要事項であったのである。世界的には、この原油の確保は米英の独擅場となっていた、先の旧ロシア領のバクーに巨大な原油資源が有ると分かると英国はロシア革命の騒乱を利用して傀儡国家を建設して自国の権益とした。また中東地域に油田があると分かればフランスを引きつれ、それらの国を治めていたオスマントルコを打ち破り自国の権益下に置いたのである。そして世界中の原油を確保するという野望を実現したのである。一方遅れて国家統一したドイツは日本と同様原油の確保に苦労することになる。その結果オスマントルコの後継政権である新(世俗)トルコと友好関係を結び、共同でバクー油田を獲得しようと試みた、これが第2次世界大戦のきっかけのひとつである。それだけ原油の確保は重要であり、その確保については武力行使を辞さないということを、現代の歴史は教えてくれる。第二次世界大戦は原油の利権を握る米英が主体の連合国が勝利をした、そして戦後の世界は米国のもつ原油の利権を基盤とした覇権体制の構築へと向かうのである。
前号で述べた通り、米国では、民間企業である国際金融資本家が設立したFRBが米ドルの発行権を握り、且つ米国の強大な軍事力を背景にそのドルを世界中に流通させた。一方戦後自国内の製造業の衰退が著しく、米国には世界に販売する工業製品が無くなったことにより輸入に頼らざるを得なくなり、米ドルの発行数量が急増したのである。そこでその急増した米ドル残高の費消先に困った米国はその解決策を思案した、その結果、原油購買にはドルしか利用できない仕組みを作ることを思いついたのである。幸いにも世界の経済発展とともに原油の需要は急拡大し、かつ供給される原油は中東諸国に偏っており、これらの国が独立しても、政治基盤が弱い状況が続き、米国は英国に利権の一部を譲渡することを約束した上で、共同で中東各国を押さえ、同時に世界の石油資源の開発、支配に乗り出し一気に原油供給の独占体制を構築したのである。その実務を具体的に遂行したのが、セブンシスターズと言われえる国際石油資本(メジャー)である。メジャーは米英の軍事力を後ろ盾として、世界の産油国に片端から食い込み、採掘権としてわずかな費用を産油国に支払うだけで、巨大な利益を生み出して来たのである。そして60年代は原油の価格は世界的にドル建で表示され、ドルが無ければ原油を購入できない仕組みが完成したのである。
一方米国政府は国際貿易の進展により、同国の物資輸入がますます増大すると、相次ぐドルの発行に迫られていた、その結果ドルの発行総額は、米国政府が所有している金の総額をはるかに超過しており、建前上もドルと金の交換は不可能であることを宣言せざるをえなくなる、その結果71年にニクソンがドルの不換紙幣化を宣言するに至ったのである。しかしそれにより、ドルの価値が大幅に下落することを防止するために、同時に米国は産油国への締め付けを強化して、ドル以外では原油を購入できない体制を固めたのである。これに対して産油国は妥協を提案した、即ちドルのみによる決済を容認する代わりに、原油の価格をもう少し上げてほしいと要望したのである。これに対して、原油を世界に安価に供給することで利益を上げていたメジャーは難色を示す。その結果産油国が実力行使をしたのがOPECの設立なのである。その後OPECは自国の石油採掘からメジャーをはずし国営の石油会社を立ち上げ利益の確保を図ったのである。その後メジャーは中東の利権を失ったものの、北海油田やメキシコなどの新たな地域で原油開発を推し進め、OPEC国と非メジャー系OPEC国の並立の体制が20世紀末まで続いたのである。OPECは時として米英と対立することもあったが、その実体は米英独占による原油供給体制については全面的に協力をしており、ドル決済体制を英米とともに維持してきたのである。その結果、原油ビジネスにおいては、米国の意向がしっかりと反映され、原油の販売はすべてドルを持って決済され、世界各国に対して唯一ドルでのみ、原油の購入が可能であるという、原油とドルの兌換体制を保証するという原油ドル本位制が確立し、ドルによる国際基軸通貨体制の維持が可能となったのである。
しかしながら21世紀を前に、この動きを冷静に見ていた男がロシアにいた、それは99年に第2代大統領となったウラジーミル・プーチンである。彼はソ連崩壊後に米英がとった行動から米英支配の構図を学び、逆に米英の覇権体制に飲み込まれずに自国の独立を図るために何が必要かをしっかりと見極めていたのである。その結果、米英が築き上げた原油及びほかのエネルギー資源の独占とドルによる覇権体制の打破を目標に掲げたのである。そしてロシア国内での新規油田と天然ガス資源の開発を米英の手から国営に取り戻す作業を徹底的に行い、生産を安定させ、同国をサウジを抜いて世界最大の産油国となし、同時に欧州及びアジアの各国にパイプライン網を整備して独自の供給体制を確立するべく政策を遂行したのである。その結果ロシア原油は決済にドルを必要としない、非メジャー、非オペック原油という、新しく独立した原油資源として世界で大きなシェアを占めるに至っている。
ここで話をグルジア問題に戻したいと思う。ロシアから見れば、グルジアやアゼルバイジャンは旧ソ連領であり、米英がソ連崩壊の混乱を利用して勝手に作った傀儡政権に他ならない。 したがいこれらの国が建前として如何に民族自決や自由民主を掲げてもこれは偽りである。そうなると実力を回復したロシアが当然元の領土を取り返してもおかしくない。アゼルバイジャンにはバクー油田があり、グルジアにはそれを運ぶパイプラインがあるので、これはロシアの戦略上なおさら重要である。日本人は西側の一員として、欧米に偏って判断するにしても少なくとも、双方に理があることを認識すべきである。
ところでサブプライム問題の勃発によって、今まで各種証券に投資されていた余剰マネーが一挙に原油と食糧に回って来た、その結果、原油の価格が147ドルまで高騰した、本日現在110ドル程度であるが、極めて高い水準にあることには変わりはない。業界のトップによると、純粋にエネルギー源として原油を評価した場合、その機能や有用性を考慮すると原油の価格は70ドルが適正であり、それを超えると原油は高すぎて、経済的に割りに合わない資源となってマーケットが代替資源を探すといわれている。このコメントを元に考えると、過去には原油ビジネスの拡大を目指す、米英及びOPEC諸国により原油消費の普及を目指すことを目的として、意図的に原油価格が50ドル以下に押さえられていた背景が理解できる。そしてサブプライム問題の勃発により、米英の支配力が弱まった後、原油価格は一気に上昇し今の110ドルになったことにも合点がいく。そしてこれは米ドルの価値下落が起こったことを意味している。原油の価値が一定であるとすると、これが本来原油換算で一バレル70ドルの価値であったでドルが、米英の金融デリバティブの適正な管理の失敗により、国際金融マーケットに不安が走り、一挙にドルの価値が40ドル分(37%)下落したと言い換えることが出来る。もしグルジアで欧米がロシアに対して何も対策を講ずることができずにロシアの思い通りになったら、米英の原油への支配力の低下はますます明白となり、ドルの信認はもっと低下するであろう。それだけに米英そしてそれを支持する欧州各国にとって、このグルジア問題への対処は極めて重要なのである。そして米国が確立した、原油ドル覇権体制の弱体化を多くの人々の知るところとなれば、当然ドルの価値はより下落する。そうなると日本や中国の貿易黒字国や産油国が手にしているドル建て資産の目減りは避けられず、その影響を最小限に防ぐために他の資産への移し変えが必要となるのである。
不換紙幣ドルの価値を維持するために、原油を利用して来た米英のやり方が今、新興の原油供給国ロシアにより足元をすくわれつつある。こうなれば米英ができることは、思い切ってロシアを叩き潰すか、あるいは妥協を図り、双方で権益を分け合うくらいしかないのではないだろうか?このまま米英が金融デリバティブを野放しにして、規制を掛けず、あわせて無制限なドルの供給を続けるのであれば、不換紙幣ドルはその価値を維持することはできない。そしてそれが原油ドルの覇権体制の崩壊を招き、その時点で不換紙幣ドルは紙切れ同然となり、米国の覇権は終焉を迎えるのである。それだけ現在の世界情勢は緊迫しているのである。
この情勢下我国はいまだに米国に媚を売る政治家や官僚が政権を握って居り、米ドルの崩壊とともに我国も崩壊することは目に見えている。ここは何とか智恵を出して自国を救いたいものである。
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