もったいないの精神が、新資本主義を打ち負かす。 Vol.172
国内の自動車の販売数量が、落ち込んでいる。またその結果、軽油やガソリンを製造する国内の製油メーカーの処理量も大幅に減少しているようである。原油高により燃油の節約志向が大きく広まり、結果として消費量が激減している。本日の産経ビジネスアイの記事を引用する。
コスモ石油 9-12月分 原油処理量4%減産 FujiSankei Business i. 2008/9/12
コスモ石油は11日、9月の原油処理量を、前年同月比11%減にあたる25万2000キロリットル減産すると発表した。 10~12月分も前年同期比2%減らす方針で、9~12月では同4%の減産幅となる見通しだ。ガソリンなど石油製品価格の高止まりで国内需要が減少しているため。千葉製油所(千葉県市原市)、四日市製油所(三重県四日市市)、堺製油所(堺市)、坂出製油所(香川県坂出市)の4製油所で原油処理量を抑制する。
内需低迷に加え、中国を中心とする輸出も落ち込む中、すでに新日石が9月分から12万キロリットル(3%)減産しているほか、出光も10~12月分を120万キロリットル(14%)、昭和シェル石油は9~12月で40万キロリットル(4・4%)の減産を決めている。 一部割愛
上記の記事でもわかるようにコスモ石油に限らず、出光石油など大手石油精製メーカーは減産を続けている、これは即ち燃油の消費量が減少していることを意味している。一方でレジ袋を始めとするプラスチック製品への風当たりも強くなってきている。エコに対する認識が強まるとともに使い捨て文化に対して見直しの機運が一般化しつつある。これらの一連の動きをよく見ると、米英がこの150年に渡って作り上げた、原油資源を独占して、世界を支配するスキーム(構図)が音を立てて崩れつつあるように思う。それでは詳細について指摘してみたい。
本年2008年は米国ペンシルバニア州ドレーク油田で初めて原油を機械で採掘する工業法が確立された1859年から数えて、ちょうど150周年に当たる。その間世界の原油産業は米国内のガルフやカルフォルニアに置ける相次ぐ新油田の発見で潤った米国勢とカスピ海のアゼルバイジャンのバクー油田で潤った英国勢の2国によって独占されて来たと言っても過言ではない、両国は原油の支配権を2回の世界大戦を通じて強固にし、独占を続けて来た。そしてその覇権を維持するために、意図的に原油の販売価格を抑え、原油の消費国を世界中に拡大し、原油を通じて世界を支配する原油覇権の体制をこの一世紀半に渡り維持してきたのである。ところで原油の用途は大きく分けて2種類がある、それは所謂燃油といわれる、重油、軽油(ディーゼル油)、灯油(ケロシン=航空燃料)などと粗製ガソリンとも言われるナフサである。ナフサは原油から燃油分を取り除いた所謂残留物(糟)だが、これはもう一度加工してガソリンという乗用車用の燃油とオレフィンやBTXと言われるプラスチックやファインケミカル製品の原料に加工されるのである。そこでこの点をよく理解しておくと、物質文明といわれる、今の便利な時代の背景がよく分かる。即ち我々が20世紀に思い描いて来た、電化製品に溢れ、乗用車をもち、使い捨ての容器を使うという豊かな社会とは、実は原油が無ければ成り立たない社会である。これは戦争に敗北した日本が先進的として米国から受け入れた文化そのものであるが、実際は日本が自然に受け入れたというよりもむしろ米国の属国として、米国により意図的に導入されたと考えるのが、本来の姿であると思う。またこれらの物質文明に合わせて、同じことが、日本人の食卓にも及び、日本人は本来の米食から、米国からは安価な小麦や飼料用穀物が大量にもたらせられることで西欧風な食事を受け入れることになる。また農業においても機械化やグリーンハウスなどの温室栽培が推奨され、化学肥料、化学農薬の大量使用も含めて、総合的に原油資源が大量に消費される仕組みが普及したのである。その結果日本は世界で米国に次ぐ原油消費国となり、経済的には大いに発展することになったのである。一方で原油の大量使用による副作用も数多くあった。その最大のものは水俣病などの水質汚染や四日市や川崎など各地で発生した大気汚染などの公害である。また好きなだけ供給されたプラスチック容器は膨大な数量のゴミと化し、その処理に苦労することになる。処理の出来ない部分は埋め立てねばならなくなり、先祖より受け継いだ環境が破壊されるという、問題が顕在化している。しかしながら基本的に米国に従属している自民党政権は、原油の消費量増大を米国により押し付けられており、これを受けるためにこれらの環境破壊の問題に対しては場当たり的な対応に終始して、真剣に考えてはこなかったことは皆の知るところである。そして一方では、首都圏の一極集中を奨励して、地方の人間の首都圏への移動を画策し、地方を過疎化させ、食糧自給率を落として、その分を米国で石油エネルギーをたっぷりと使った穀物の輸入に切り替えていったのである。そしてその輸送にも大量の原油を利用したのである。即ち我々が目指していた文明社会、先進社会というのは一言で言うと原油消費依存社会であったのである。
米英は原油の国際流通を独占事項として他の国には開放しなかった、それも産油国に対してすら間接的にOPECを通じて支配を続けて来た。そしてそれ以外の国については自らメジャーを使って、直接原油を採掘することで影響力を保ち続けたのである。そしてその上で意図的に原油価格を抑えることと、IMFや世界銀行を組織して、国際的な金融の仕組みを拡充することで、新たなる購入国が増えることを画策したのである。その際のポイントの主なものをあげると下記の通りであった。
1. 目標国に火力発電の技術を積極的に提供し、電気の恩恵をうける社会を体験させ普及させる。
2. 道路などのインフラ拡充に積極的に協力し、自動車産業の活性化をすすめる。
3. テレビなどの、マスメディアを普及させ、ファーストフードなどの使い捨て文化とプラスチック容器の普及を図る。そして肉食文化を推進し、穀物の新たなる消費市場を拡大する。
4. 貿易の自由化を推進し、機械化、化学化、遺伝子組み換え化の大量生産方式による価格競争力のある、米国・カナダの農畜産物の大量供給をすすめ、生産から輸送まで原油を大量に使用する環境を整備すること。
5. 石油化学産業、ファインケミカル産業を新たに創出し、原油の副産物であるナフサの需要拡大を図る。
以上を基本方針として推進したのである。その結果その動きにもっとも従順かつ勤勉に取り組んだ国が日本であり、そして日本は経済大国として復興を成し遂げたのである。しかしながら戦後60年以上もたったにも関らず、日米安保条約を押し付けられ、米軍基地を各地に受け入れ、その上食料自給率も40%と極端に低く、独立国としての体裁を確保できずにいることも見逃すことが出来ない日本の現実なのである。
しかしながら上記の記事の通り、昨年来の原油の高騰は、原油が、従来より持たされていた格安の資源という最大の利点が失われることとなり、消費者の買い控えを生んでいる。その結果、今日本では基幹産業である自動車の売れ行きが落ち込み、代替エネルギーの開発が声高に叫ばれ、かつ食糧自給率の向上や有機農法の普及が求められている。これはまさしく、原油の価格があるべき普通の水準になったことで、日本国民にもったいないの精神が呼び起こされ、まともな議論が行われるようになってきているといえるのである。
前号でサブプライム問題の勃発が、世界中で余剰ドルを利用して活発に活動していた、国際金融資本家の生存を脅かし、彼らを救うために米英政府が彼らの原油、食糧への投資機会を開放したことを指摘した。そしてその結果、もたらされた原油と食糧の市場価格の高騰が今まで意図的に眠らされていた世界的な『もったいない精神』を覚醒させ、米英の本当の意図が暴露されたことは大きな皮肉であった。そしてその動きは、元来島国で限られた資源を有効に利用することで2000年の長きに渡り生き延びて来た日本人の琴線にふれ本来のあるべき姿を想起させたことは極めて幸運な事実であると思う。日本人はかつて高度経済成長の結果、これから豊かになるという時に金の逆襲ともいえるバブルに襲われ、不幸にも本当の幸せを手にすることは出来なかった、そしてその後小泉元首相が唱えた改革により、大きな格差社会を生じさせてしまった。また一方で金を手にした人々も本当に幸せかどうか疑わしい。このようななか、もう一度自らのDNAを見つめなおし、日本に相応しい社会を作り上げることこそ我々の使命ではないだろうか?
今回の自民党総裁選には多くの候補が立候補したが、残念ながら誰も米英の原油支配の構図については語っていない、またそれに対する政策も発表していない。もはや国民は今の問題の根本がどこにあるのかは明確に分かっているはずである。今こそ原油を通じた米英の支配構造から脱却するために、智恵をめぐらし政治的に米国から独立することを真剣に考えるべきであると思う。
「安全保障」カテゴリの記事
- 支配者にノー オバマ氏金融危機を追い風に有利な展開 Vol.182(2008.10.16)
- 三浦事件、テロ指定解除! 国民に冷淡、これで国民国家といえるのか? Vol.180 (2008.10.13)
- デリバティブ、拝金主義のまやかしに騙されるな。 Vol.179(2008.10.09)
- 何が詐欺で、どこが博打なのか?デリバティブ Vol.174(2008.09.17)
- お金と宗教の物語 Vol.176(2008.09.19)



Comments
とても解りやすいご説明、ありがとうございます。多くの人に読んでもらいたいです。特に地方の行政に携わってるかたがたの多くの人が経済のからくりを知り、米国をいかにりかいするかいなかでは、地方の生活二大きな違いが生じると思います。ここ東北の田舎では、国の行政に関心を持つ事はタブーとされる不思議な傾向があります。パソコンの出現で、私のようなものでも自由にいろいろな情報を得ることができました。
Posted by: 農婦 | September 13, 2008 at 10:45
農婦様、コメントありがとうございます。本日、ロシアとベネズエラの両国が軍事、石油で接近したという、衝撃的な記事が産経ビジネスアイに発表されました。ソ連の崩壊で一旦は米英陣営に組み込まれたロシアと、従来からOPECの一員として間接支配されていた、両国が反米英で協調路線をとりつつあります。私が思うに両国の歩みよりは反米英というよりもそれぞれの政府が、自国の資源をしっかりと守り、その恩恵を自国民に還元したいと考える、当然な動きと思います。しかしながら日本のマスコミは政府の意向を受けてこのような事実を積極的に報道しません。これからも限られた報道の中から重要な話題を選んで提供し続けたいと思います。宜しくお願いします。
Posted by: ドイツタロウ | September 13, 2008 at 11:12
ご返信ありがとうございました。自民党の総裁選の5人の討論を聞いてますと、私達国民は何もわからないから、こんなばかげたことばかりを言ってるのか、そもそも政治家が何も理解できてないのか、私達のほうが、理解に苦しみます。結局のところ消費税を10%にすれば国民の皆さん現段階を切り抜けられますよと、ばかげたことを考えているのでしょうか?昨日のBS.TVでロシアの大統領が「興味のある国が世界には存在している」意味深なことを言ってましたね。
Posted by: 農婦 | September 14, 2008 at 14:50