« お金と宗教の物語 Vol.176 | Main | 福田辞任の背景は米国の干渉であった。Vol.178 »

September 22, 2008

メラミン問題 冷静に背景を検討するべき Vol.177

中国の粉ミルクにメラミンが入っていたことにより複数の乳児がなくなったという、痛ましい報道があった。またメラミンが混入している乳製品が日本にも出回っているとの報道がなされ、大きな問題となっている。しかしながらここは冷静に対処してほしいと思う。実際このメラミンの問題がこれだけ拡大したことでもっとも驚いているのは中国の乳製品メーカーでないかと思っている。偏向報道により大きな誤解が生じ、社会的に問題が大きくなる前に指摘をしておきたい。まずは本日のMSN産経WEBの記事を引用したい。

【主張】メラミン問題 中国に毅然たる態度貫け2008.9.22 02:39
有害物質「メラミン」が検出された中国製牛乳を原料にしていたとして、丸大食品(大阪府)が菓子などの自主回収を始 めた。メラミンが含まれていても健康を害するような量ではないというが、これまでの中国食品の問題を考えれば、日本政府は毅然(きぜん)とした態度で臨むべきだ。特定の食品について中国食品の輸入を禁止する方法もある。すでにシンガポールやマレーシアは中国の酪農製品や乳製品の輸入禁止を発表している。メラミンは窒素を多く含む有機化合物で、接着剤、塗料、食器に使われる樹脂の原料となる。中国では水を加えて量を増やした牛乳に混ぜてタンパク質の含有量を多く見せかけ、価格をつり上げる行為が横行している。しかし、このメラミンを大量に摂取すると、腎臓障害を引き起こす。中国ではメラミン入りの粉ミルクで6000人以上の乳児が被害を受け、死者も出している。米国で昨年、中国製ペットフードを食べた犬や猫が相次いで死んだ事件もメラミンが原因だった。厚生労働省は全国の検疫所に中国製加工食品の検査強化を指示し、食品団体に自主検査するよう指導を始めた。当然である。
 

ペットフード事件以来、米国では中国産の原材料を使用していないという意味の「チャイナフリー」商品が人気だ。パナマでは昨年、中国から輸入した薬用甘味料から作ったせき止め薬を飲んで100人が死亡した。甘味料が安価な工業用の毒性物質だった。日本では中国産のウナギの蒲(かば)焼きから発がん性が指摘される抗菌剤も検出された。数年前にはやはり、中国産のホウレンソウから基準値を大幅に超える 残留農薬が検出された。殺虫剤のメタミドホスが混入していた冷凍ギョーザ事件では、食中毒が起きている。汚染米問題でもメタミドホスが中国産の米に混じっ ていた。 こうした問題でも日本政府は中国政府に及び腰で、厳しく責任を追及してこなかった。これが一連の中国汚染食品問題の背景ではないか。
 有害物質入りの中国製食品による甚大な健康被害は世界中に及んでいる。己の利益を第一に考える拝金主義が蔓延(まんえん)している中国には「食の安全」という概念が薄い。世界各国が厳しく対処し、中国に食の安全の重要性や大切さを示す必要がある。(一部割愛)


上記の引用記事ではメラミンを毒物のように決め付けて、それを公然と使用する中国の管理体制を非難しているが、果たしてこれをそのまま受け入れてよいのであろうか?検討を加えたい。

化学品業界に携わるものの常識の一つとして、取扱商品の毒性を表示する指標LD50(半致死量=50% Lethal Dose)は極めて重要である。これは実験用ラットやマウスに対して調査対象の化学物質を投与して、その対象個体の50%が致死する数量をLD50としてxxxmg/kgという、数字で評価して、これを人間に対する毒性の強弱を示す数字の代用とする指標である。そして規定では50mg/kg以下の物質を毒物、300mg/kg以下の物質を、気をつけるべき劇物と表示することになっている。具体的にどういうことかというと、50mg/kgとは体重60kgの成人男性が、3g以上摂取すると50%の人が死んでしまうだけの毒性ということである。ところでこの指標でいくと我々が日常摂取している砂糖のLD50は3g/kgであり、これは同成人男性が180g食べれば50%の人が死んでしまうということである。これは当然のことながら、いくら食品として認知されていても大量に度を越えて食べれば死に至ることを意味している。ところで問題のメラミンについてのLD50を調べてみると、1-3g/kgであり、これは砂糖とほぼ同じか悪くても砂糖の3倍の毒性ということである。上記の毒物や劇物のLD50の指標を見るまでもなく、メラミンという物質は安全な物質であることが分る。またメラミンは加工しやすいプラスチック原料であり、我々が社員食堂や小児用に使っているプラスチック製のご飯茶碗や箸はメラミンから重合されて作られているのである。その意味ではメラミンはむしろ人体に対して安全な物質であることをまず捉えておきたい。

それではどうして今回メラミンの問題が出てきたのであろうか、またメラミン混入については昨年度米国で中国製ペットフードに大量のメラミンが混入しており、これが原因で多くの愛する犬や猫のペットが死んだという痛ましい事故が発表された。この背景について検討を加えてみたい。まず指摘すべきは、メラミン自体は上記の通り、安全な物質である、そして形状は白色粉末であり、外観は粉ミルクを白くしたような物質である。この点を基本として押さえておきたい。それではどうして乳製品のメーカーやペットフードのメーカーがメラミンを添加するかであるが、これは一言でいうとメラミンを増量剤として利用することで重量当たりの製造コストをさげることが出来るということがあげられる。一方メラミンの化学的組成には、アミノ酸と同じ成分があり、検査方法によってはアミノ酸が多くあるような分析結果が出るというメーカーにとっては有利な点をあると聞いている。そして最も重要なのは、牛乳などに乳製品にこのメラミンをいれると、牛乳の濃度が増して、濃い感じになり、消費者は高級な牛乳であるというイメージを与えることができるのである。したがい、乳製品のメーカーが安全といわれるメラミンを増量剤として粉ミルクや牛乳、乳製品に添加することは、消費者をごまかす行為として、指摘は出来てもこれによって死者までが出ることを想定した、悪徳行為ではないといえる。

それではどうして今回の惨劇が発生したのであろうか、続けて検討を加えたい、それは増量剤として使用したメラミンそのものが問題ではなく、メラミンに不純物として混在していた、副生物であるシアヌル酸という物資が問題なのである。このシアヌル酸のLD50はなんと350mg/kgもあり、これは体重5kgの乳児が1.75g摂取すればその半数が死んでしまうという劇物に近い物質である。ということはどういうことであろうか、中国の粉ミルクの業者は、商売として儲けようとたくらんで、メラミンによる増量を意図したが、実際に使用したメラミンは純粋なメラミンではなく毒性の強いシアヌル酸を含んだメラミンであったということが推測できる。またこの業者はそのメラミンのシアヌル酸が含まれていること認識しないままに添加した結果、このシアヌル酸が問題を起こしたのである。ということは中国の乳製品の業者は意図しない形でこの問題に、巻き込まれたのである。一方食品添加用にメラミンを供給したした、メラミンのメーカーは用途が食品用であることを認識した時点で、しっかりと品質を管理して、シアヌル酸が含有している可能性を顧客に示し、その上で問題のあるシアヌル酸の含有が認められない高純度なメラミンを供給すべきであった。

ところで話が変わるが、この問題に接して日本で約50年前に発生した森永砒素ミルク事件を想起された方も多いと思う。概略は下記の通り示唆的である。
1. 森永乳業が、粉ミルクの溶解性を高めるために促進剤として第二燐酸ソーダを混入させて、解けやすい粉ミルクを製造し、販売促進を図った。
2. 一方この第二燐酸ソーダはアルミメーカーの日軽金から購入したものであり、この燐酸ソーダに砒素が混入していた。
3. 結果としてこの砒素により、1万3千名の乳児が中毒になり、130名が同中毒で亡くなった。
以上ですが、問題点は一般的にも安全と思われていた第二燐酸ソーダを添加することで、よく解ける粉ミルクをうたい文句として高収益を画策したことである。結果としてその後の裁判では森永は安全な物質である第二燐酸ソーダを添加したとの認識しか持っておらず、不純物の砒素については認識が無かったとして争ったが、結局原告団と森永の間で和解が成立したという経緯であった。企業が収益向上のために、使い勝手をよくしようと安易に工業原料の添加という手段をとった森永事件、一方で濃い牛乳として口あたりをよくすることで他社製品に差をつけることでメラミンに手を出した中国の企業、結局これらの事件は同根であり、このような顧客の安全をないがしろにする、利益第一主義を許す社会にこそ、問題の本質があることを認識すべきであると思う。

ここで主張したいことは、今回の事件については、メラミンが毒性をもっているのではなく、不純物であるシアヌル酸が一連の問題を起こしたことをマスコミはっきりと示すべきと言う事である。そして食品業界に対しては工業原料を安易に食品の応用することの危険性を喚起すべきではないだろうか。さもないと小児用や介護施設で重宝され、常用されているメラミン系の食器についても問題視をしなくてはならなくなるのである。そしてそれらの丹精込めて製造している真面目なメーカーにも大きな影響が出てしまうことなる、そしてなによりも金を儲けるために、新たな添加物を加えるような行為に対しての適切な規制をするすべが無くなってしまうことが問題なのである。一律に禁止しても土台無理な話であり、このような場合原料メーカーとユーザーがよく協議をおこない、潜在リスクをよく調査した上で事に当たりよりよい製品を作るべきであるということを喚起すべきである。さもないと今後同様な問題を繰り返すことを許してしまう恐れがある。

今回の事件が日に日に本質から離れエスカレートしてマスコミが取り扱い、これがあたかもメラミンそのものが毒物のような誤った認識が広められることで、最初から禁止物質の混入を認識していながら官民一体で起こした、汚染米の問題と同根に扱われる現実に大きな危惧を感じている。そしてなによりも最初に悪しき中国を持ち出し、それを例証するかのように強引に裏づけを取るようなマスコミの報道姿勢にはしっかりと異議を唱えたいと思う。


|
|

« お金と宗教の物語 Vol.176 | Main | 福田辞任の背景は米国の干渉であった。Vol.178 »

安全保障」カテゴリの記事

Comments

■<WorldNow>外国産牛乳を買い求める中国人たち―今後システムを変えない限り頻繁に起こり続ける不祥事!!

こんにちは。中国のメラニン牛乳、とんでもないことになっていますね。日本での汚染米もそうですし、中国のこの問題でも、やはり古いものは完全に制度疲労を起しているのだと思います。今後新たなシステム作りが重要になってくると思います。しかし、この新たなシステムづくり日本はさておき、中国は非常に難しいです。おそらく、そのまま放置され、社会不安を増幅し、中国の崩壊を助長することになるものと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

Posted by: yutakarlson | September 22, 2008 at 11:58

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/76174/42554174

Listed below are links to weblogs that reference メラミン問題 冷静に背景を検討するべき Vol.177:

» タンパク質が美肌の基本 [美肌を取り戻す20の方法]
お肌のためのサプリメントといってもたくさんの種類がありますが、特に摂取して欲しいのが、、肌の基礎となる「タンパク質」。それから、タンパク質の代謝を助けるビタミンC、ビタミンB、鉄分。... [Read More]

Tracked on September 24, 2008 at 16:49

« お金と宗教の物語 Vol.176 | Main | 福田辞任の背景は米国の干渉であった。Vol.178 »