« 巨大企業米国株式会社のリストラ Vol.196 | Main | 日米同盟だけでは食っていけない。Vol.198 »

March 20, 2009

ブッシュの痛恨事 Vol.197

BS放送で、イラク戦争発生6周年記念ということで連日同戦争の背景についてのドキュメンタリーを放映している。暇に任せて出来るだけ視聴するようにした結果、改めてその本質が分かりつつある。本稿ではこれまで視聴した結果を感想としてまとめてみたい。

まずは少し古い記事であるが、ブッシュ大統領が退任を前にした米国のマスコミに対するインタビューに関する記事をご覧頂きたい。

【12月3日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は1日放映の米ABCテレビとのインタビューで、「戦争への準備ができていないまま」大統領に就任したと語り、米国のイラクでの「情報活動の失敗」が「最大の痛恨時」と述べた。

 ブッシュ大統領は、ABCテレビの「ワールド・ニュース・トゥナイト(World News Tonight)」で幅広い話題に触れ、世界的な金融危機が起きたことについて「申し訳ない」と述べる一方、来年1月20日の任期満了時には「胸を張って」退任するだろうと予測してみせた。

 2005年にハリケーン「カトリーナ(Katrina)」への対応に遅れ激しい批判を受けて以降、ブッシュ大統領の支持率は低下した。また、長引くイラクとアフガニスタンでの戦闘、そして世界的な金融危機が起こるなか、ブッシュ政権が記録的な低支持率から抜け出すことはなかった。

 バラク・オバマ(Barack Obama)次期米大統領の就任式まで、残り約50日の任期となったブッシュ大統領は、「任期中の最大の痛恨時は、イラクでの情報活動の失敗」と語った。だが一方で、故サダム・フセイン(Saddam Hussein)元イラク大統領が大量破壊兵器を保有していないことを事前に知っていれば、イラク侵攻に踏み切らなかったのではという質問に対しては、「興味深い質問だ」と述べただけで、明確な返答を避けた。(c)AFP

この記事が示していることには、ブッシュ大統領が自ら痛恨事とした、イラクが大量破壊兵器を保有しているという証拠を手に出来なかった情報活動の失敗について言明している点が興味深い。これは見方を変えれば、2003年のイラク戦争(第2次イラク戦争)の開戦の理由は米政府が発表したイラクの大量破壊兵器の保持ではなく他にある可能性が示唆されており、他に本当の理由があると考えることができる。それではこの戦争がおきるまでの経緯を簡単におさらいして見たい。

第2次世界大戦中にサウジアラビアで発見された大規模油田の支配権を手に入れた、米国はそれまでの英国に代わって、積極的に中東の支配強化を進めてきた。そしてイスラエルの建国を支持することで軍事的に睨みを利かせるとともに、イランのパーレビ王朝を積極的に支援して傀儡化して、この東西の拠点を利用して実効支配を進めていた。しかしながら、イランでは米国の専横に異議を唱えるイスラム主義者が台頭し、79年にパーレビ王朝は打倒され、新たにホメイニ師が統治するイスラム主義国家が出来上がった。それ以後のイラン政府は米国の影響力を徹底的に排除するイスラム教国家となり、その後は中東の原油支配をもくろむ米国と常に敵対することになった。一方この反米の動きに十分な準備を怠っていた、時のカーター政権は駐テヘラン米国大使館占拠事件での人質解放に手間取っり結局選挙に負けることになり、その弱腰が米国民に非難された。その後米国は国内にイランと同じイスラム教シーア派を多く抱え、その統治に苦慮していた隣国イラクの若き英雄サダムフセインをけしかけ、大量の武器支援を行い80年にイラン・イラク戦争を起こさせたのである。これはイラク国内のシーア派教徒が、サダムフセインが国教とするスンニー派政権に対抗することを抑える意味で、効果的であると考えたサダムフセインがイランをけん制するために仕掛けた戦争である。しかしこの戦争は結果的にシーア派政権であるイランの新政権の結束を固めることとなり、10年に渡る戦争の結果双方に優劣はつかない形で終わったのである。その間サダムフセインは米国から武器の支援を受け入れてはいたが、自らはイスラム教スンニー派国家建設を考えており、徐々にだか米国から距離を置くことになったのである。その後米国がイランとの戦争の為に支援した経費の返還を求めると、サダムフセインの米国離れは決定的となり、米国の干渉やイスラエルの存在、そして隣国の親米国であるクエートやサウジアラビアに対する非難にエスカレートして、結果として、91年にクエートへの侵攻を行ったのである。これにはスンニー派による強固な独裁国家を建設するというサダムフセインの野望が背景にあったのである。

しかしながら国連はこの動きを一致して非難して、クエートを武力開放することを決議して、圧倒的な物量を誇る米国を中心とした多国籍軍による応戦をしたのである。これがいわゆる湾岸戦争(第一次イラク戦争)である。その結果はイラク側はあっさりと降伏したが、一方でサダムフセイン体制は存続したのである。即ちあまりにあっさりと降伏することで、サダム体制は延命を許されたのである。その後米国主導の国連はサダムフセイン政権に対して多額の賠償金を負わせた。また一方で経済制裁を実施したために、多くのイラクの子供が餓死するといった事態に見舞われた結果、国連は人道上必要な食料品や医薬品の購入に限って、イラク政府に原油販売を認めることにしたのである。これが石油・食糧交換支援プログラムと言われるものである。

一方このプログラムの発動はイラク側に販売する原油の価格を自ら決めることが出来るという権利を与えてしまったのである。即ち、イラクは販売する原油の価格を国際市場価格より意図的に安く決めた上で、特定の仲介人を介して、国際石油企業に販売し、その仲介人は国際価格とイラク原油の価格の差額を折半して半分をイラク政府に返却し、一方で残りの半分をさまざまな形で必要な人々に資金供給したのである。その多くが国連の担当者等に提供されたという、一大スキャンダルを招いてしまったのである。

ところでこのスキャンダルについては当初は国連内のスキャンダルとして問題視されていたが、ことの本質はどうも異なるようである。というのはこの7年に渡るプログラムが実施されていた期間、米国内の多くの重要情報がイスラム原理主義者に渡り、それが米国のケニア大使館やサウジ大使館へのテロ攻撃となったり、2001年の911につながる重要情報がテロリスト側に提供されていたと思われる節があるからである。特に911においては、WTCの2回にわたる航空機攻撃はマスコミでも大きく報道されていたが、一方同日に発生したワシントンの国防総省ビルの攻撃についてはそう多くは報道されていないことが気になる。実際この目で国防総省を見たことがあるが、あの5階ほどのそうは高くないビルに正確に航空機を突っ込ませるというには相当の技術と情報がなくては出来ず、この面で多くの秘密情報がテロリスト側に渡っていたと考えるのが普通ではなかろうか?

ここで想像を深めると、上記にスキャンダルによって多くの利益を得た、腐敗が進んだ米国国防総省内部の人間は極めて不用意にアルカイダ等のテロリストに対して自らの魂を売ってしまい、重要な情報を漏洩させていたとの解釈もなりたつ。実際に仲介人として動いたもののリストには、本プログラムの指定銀行が置かれた、仏の自動車会社とともに、国防総省と関係が深い、米国の大手自動車会社の名前が出ている事実を注視すべきである。そして彼らと組することで、国防総省の内部に資金を提供する仕組みを作ったのがサダムフセインであるとすれば、当時の米国政府が911の発生後なりふりかまわず、サダムフセインとアルカイダの関係を強引にでっち上げ、イラクを侵攻してサダムフセインを殺害したことが理解できるのである。即ち米国政府はサダムフセインがばら撒いた資金により極度に腐敗しており、その腐敗が911を発生させたのである。そして米国政府は911を経験して初めて、時の政権が腐敗に気づき、引き締めに転じた考えることが出来るのである。このことを直接示す資料はないが、80年代にレーガン政権によって始められた強い米国政策、そしてその裏づけとなっていたのは拝金主義万能主義、これが米国社会全体に蔓延したのが、911と第2次イラク戦争の遠因であると考えることは可能である。そして80年代より米国と同盟者としてそして敵対者として付き合ってきたサダムフセインは米国の弱点を見抜いていたと思われるのである。

米国政府は上記のブッシュ大統領の発言にもあるように、第2次イラク戦争において、CIA(米国中央情報局)の無能さをあえてコメントしているが、その裏には米国政府内の腐敗を見抜けなかったCIAの不作為を示していると考えることが可能である。そしてそれが当初の国連内部に限定された腐敗から、国防総省まで及ぶこととなった米国はここに至って危機感を深め、その規律と統制を復活させるために、イラクに攻め込みサダムフセインを殺害したのではないかと考えている。いずれにせよ、拝金主義を万能として容認した、80年代以降の新資本主義は、昨年のリーマンショックの発生を待つまでもなく、すでに多くの既存の組織に腐蝕をもたらし、崩壊を始めていたと考えるべきであり、その崩壊を食い止める過程こそがブッシュ政権の役割であり、それが歴史なのである。

それではこれを教訓として我々はどうすればよいのであろうか?少なくとも今すぐにやるべきは、米国の新資本主義に自制を求めることと、その共同運営者とも言える我国自体が、米国のやり方から一歩距離を置くことではないだろうか?結局のところ、日本は国民がせっせと働いて手にしたドルを自らの幸せに使うのではなく、米国が行う拝金主義政策失敗の埋め合わせに使わされている事実を良く理解しなくてはならないと考えている。さもないといつまでたっても我々日本人自身が今の不安定で、拝金主義のみが報われそれ以外の努力は一切報われない社会を容認している事になるのである。

ブッシュ政権が米国国内の腐敗を危機として認識し、その規律と統制回復に8年間を要したこと、これを前向きに理解した上で、改めて、その代償として多くのイラク人の尊い命が失われたことを認識し、このような拝金主義の行き過ぎがこのような多大な災禍をもたらすことを我々は理解すべきではないだろうか?さもなくばこれと同様なもっと大きな戦争がおきる可能性が危惧され、今こそ我々は自らが持っている智恵を振り絞って、拝金主義の蔓延を抑え、それに続く金目当ての殺し合い回避の道を探らなくてはならないと思う。

|
|

« 巨大企業米国株式会社のリストラ Vol.196 | Main | 日米同盟だけでは食っていけない。Vol.198 »

ポスト強欲資本主義」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/76174/44406462

Listed below are links to weblogs that reference ブッシュの痛恨事 Vol.197:

» 命を金儲けの道具としたアメリカ [晴耕雨読]
「アメリカの人工透析センターは早くから営利企業が参入、現在では70%近くが営利で運営されており、人工透析装置の再利用や透析時間の短縮、コメディカルの透析士を中心とした治療が行われている。 このためその臨床成績は年々悪化し、わが国の人工透析の生存率よりはるかに劣っている。 また、メディケアの医療費抑制政策のため、支払い制限が頻繁に行われたことも成績低下の要因となっている。 利潤を上げるために極端な制限医療と支払い制限を行っている。 人気blogランキング 引き続き「脳死」・臓器移植を問う市... [Read More]

Tracked on March 20, 2009 at 23:39

« 巨大企業米国株式会社のリストラ Vol.196 | Main | 日米同盟だけでは食っていけない。Vol.198 »