未曾有の金融危機の真犯人は。。。ユーロ2 日米安保の見直し Vol.205
前号で今回の未曾有の金融危機が発生した背景に、EU諸国が運用を開始した、対ドル、対新資本主義ブロック政策、すなわちユーロの運用開始があることを説明した。これは、当初米国の金融街の支配者達は、余剰ドルの受け入れ先として欧州市場に大きな期待を持っていたが、その後自国が本来持っている、このままでは通貨発行管理権を侵されると判断した、欧州大陸諸国がドルに対抗するために、自ら創出した新基軸通貨であり、その結果米国は欧州という大きな市場を失ったのである。米ドルはその後次のターゲットを求めて、漂流することになるが、結果として世紀の変わり目をはさんで日本の土地・株バブルを起こし、そして、東南アジアの金融市場になだれ込み大きな混乱をもたらしたことは記憶に新しい、そしてその後は日本に再度上陸し、小泉政権に対して外資の受け入れ条件の緩和を大幅に飲ませることに成功し、日本の有名企業をM&Aという手法を利用して買い漁さったのである。しかしそれらの市場は規模が期待した程大きくはなく、失った欧州市場の代替とはなりえないものであった。そこで余剰ドルは次のターゲットとして中国を選んだのである。もちろん米国が意図的に選ばなくても中国はBRICs諸国のひとつとして台頭しつつあったが、中国自体が米国マネーの導入は共産党政権の安定化に寄与すると考えて積極的に受け入れた背景があるのである。そしてその結果、昨年度には米国債の購入残高が日本を抜いて世界第一位となったのである。
一方この結果に満足した、米国はその後中国との関係強化を本格的に模索し始めたのである。そして中国との関係強化において何が問題で、何を推進すべきかを真剣に検討した結果が、現在すすめられている、中国と共同による北朝鮮の非核化、非軍事化の提案なのである。これについては下記に説明を加えたい。
日米戦争が日本の無条件降伏により終了した際の、東アジアは当初の米国がもくろんでいた状況とは大きく異なっていた。それは米国が戦前より一貫して支援して来た、中国国民党政権がその大規模な武器支援ににもかかわらず、毛沢東の共産党政権との内戦において劣勢を続け、49年にはとうとう中国大陸を明け渡して、台湾に逃避してしまったからである。米国の当初の目的は、蒋介石政権に支援を続けることで、全中国に米国の影響を及ぼすことができる傀儡政権を打ち立てることであり、その実現のために日本と4年間に及ぶ戦争を行ったにもかかわらず、結果として中国大陸は共産党政権に支配されてしまったのである。そして次に問題となったのは、共産主義陣営と資本主義陣営の境界線をどこに引くかであった。当然のことながら共産陣営であるソ連と中国は、日本を米国に譲ることは受け入れるものの、日本の領土であった全朝鮮半島は自分たちの勢力圏であると主張して、逆に自国の影響下であると主張する米国と真っ向から対決することになった。そして結果として発生した戦争が朝鮮戦争である。その結果はご存知の通り、両陣営痛み分けとなり、中間点である38度線をはさんで南が韓国、北が北朝鮮という、双方を代表する傀儡国家が設立されるという今の区分が出来上がったのである。そして東アジアにおいてはそれ以後、両陣営による勢力の争いが続いているのである。しかしながら、米国の本来の目的は旧大英帝国風の領土の拡大による植民地争奪ではなく、自国通貨ドルの流通地域の拡大、そしてドル基軸通貨体制の確立がその主目的であったので、その後の内陸への進出は考えていなかった。一方で同じ沿岸部ではベトナムでも勢力圏の確定が必要となり、そのための戦争に巻き込まれていった。その結果は意外にも米国の敗戦という予期せぬ結果となったが、一方では米国が強い影響力をもつドル体制を基盤とした、東南アジア経済共同体(アセアン)の設立その後のアセアンへのベトナムの加盟により米国が意図していた当初の目的は達成された。
ここで改めて米国という国について、検証してみたい。同国は中国とほぼ同じ面積を有するが人口はわずか3億人である。そしてその領土のほとんどは肥沃で農耕に適した温帯に属しており、食糧自給については極めて有利な条件を有しており、17世紀の英国のように衣食の原材料を求めて海外に進出する必要はない国家である。一方そもそもの移住者は英国国教会から破門された清教徒であり、欧州の伝統的なキリスト教会とは常に一線を画するという伝統は今でも続いている。その後米国建国時の東部13州から持続的に西及び南に拡大を続け、そしてアラスカを買収しハワイを併合することで今の領土を版図としたのである。そしてあわせてその広大な国土の維持のために積極的に移民の受け入れを図った、南のスペイン語圏の人々や、東アジアの日、韓、中、そして戦争や貧困から逃避してきた欧州の人々など多くの移民が米国に渡り、同国の豊かな生活を支える仕事についていることはご承知の通りである。その結果、米国は、工業・農業で他国とのつながりがなくても、完全に自給が可能となる、非常に恵まれた国となったのである。一方で米国は自国が好むと好まざに関わらず世界のうねりに巻き込まれ欧州諸国、アジア諸国と関係を持つことになる。そのきっかけは20世紀前半に相次いだ2回にわたる世界規模の戦争である。その2回の戦争はともに当時世界の先進国として君臨していた欧州諸国および日本が参加しており、戦勝国も敗戦国もともにその工業的生産力を戦争で失ってしまった。その結果戦争の被害がほとんどなかった米国が世界における唯一の工場として世界中に工業製品を供給する立場となったのである。また同時に欧州諸国や日本は戦争で富みも失っており、結果として米国からの工業製品や食料の購入の資金すら借金をせざるを得ず、その需要にあわせて米国はドルを必要とする国家に融資をしたのである。その結果、米国は貴重な教訓を得ることになる。すなわち商品を輸出するよりもドル紙幣を供給するほうがはるか簡便に儲かるということを学び取ったのである。これに自信を持った米国はその後旧大英帝国が七つの海を支配した絶頂期の再現を意識するようになる。そして自らが逃避した祖国を見返したいと考えるようになったのである。そしてそのやり方はドル供給による世界支配であった、我々は現在ではこの考え方をドル覇権主義と呼んでいる。
その後米国は戦後復興で世界を見る余裕がない、西欧諸国や冷戦の勃発により独自の路線を歩む東側陣営に対して、驚愕の発表を行う、それが71年のニクソン大統領によるドルの金との兌換停止なのである。これは相次ぐドルの印刷発行によりそれに見合う米国が所有する金の数量が足りなくなったというのが表向きの理由だが、実はこれにより発行総額の制限がなくなり際限なくドルを印刷できることになったのである。すなわち不換紙幣ドルを、世界中に供給できる体制をつくったのである。
しかしながらこのようなことを実現しかつ継続させるには、必要な条件がある。それは世界情勢の安定と金に変わる世界共通の換金商品の確保である。そしてこの換金商品として採用したのが、前号で指摘した通り原油なのである。すなわちドルの不換紙幣化により失った信認を原油の価値とリンクさせることによりその回復および維持を図ったのである。そして20世紀の米国の覇権を象徴するドル・原油本位制は始まったのである。ところで江戸時代の日本の貨幣システムにおいて、このドル・原油本位制との類似点が認められる。それは度重なる改鋳により金の純度が低下し価値が下がった一両小判の流通を維持するために、用いた換金商品としての主食である米の採用である。すなわち当時の日本が用いた貨幣政策は、通貨の価値を米の数量で示すことで、民心を安定させ、円滑な流通を促したのである。そしてそのために米の流通の市場と通貨の換金所(両替所)を大阪の堂島に置き、政府の一括管理の下で、統一された交換レートで全国に一律に適用したのである。これは現在のドルと原油の関係と相似している。即ち原油の相場はWTI市場やドバイ、ブレント(ロンドン)として世界に向けて毎日発表されているし、原油そのもの価格は常にドル建にて表示されている。そしてそれにより世界各国の人々はドルがあれば原油が自由に購入できるとしてドルに信認を与えたのである。
ところで先の条件としてあげた、世界情勢の安定について、米国は自国の軍事力を増強することで対応できると考えていた。すなわち他国に比べて圧倒的に有利な核兵器および電子兵器などの最先端の武器を大量に所有することで、常に周りに圧力をかけることができ、従わせることが可能と考えたのである。そしてその武力による影響力を効率的に示すために、欧州ではNATOを立ち上げ、旧東側をけん制したのである。そして東アジアにおいては、日本との間では、中国およびソ連の外の脅威に対抗することを目的に、日米安全保障条約を強制し同様な体制を組んだのである。しかしながら実態は米軍を受け入れた欧州や日本は自国対しても内向きな脅威を受け続けた結果自由な政治や経済活動が制限されたのである。即ち米軍の駐留は国家安全保障(ナショナルセキュリティー)という別の言葉に言い換えられ、米国の思うとおりの政策を進めなくては、ならなかったのである。そしてその真意はまさしく、世界各国に対する、米国の武力によるドル基軸体制の受け入れの強制であったのである。
しかしその後の状況は欧州で大きく変わることになる。90年代初頭に旧ユーゴスラビアで起こった民族紛争が発生した際に、米国はこれを自分が持つ武力を各国に見せ付ける絶好のチャンスと捉えていた、そして内紛の終盤のコソボ紛争では、民族主義支援の名目の元に徹底的な最新兵器による攻撃を加えたのである。他の欧州諸国はその攻撃には疑問をもっていた。どうしてそこまでやる必要があるかと。実際に旧ユーゴのセルビア人やクロアチア人、アルバニア人の多くは国外に住んでおり、西欧、米国にも多くの人が移住している、そして親戚や友人が数多く住んでいる旧ユーゴの地をいとも簡単に攻撃する米国の姿勢に極めて大きな懐疑の念を持ったのである。その結果欧州という自分の領土を土足で踏みにじる米国に対して、このまま米国の思うとおりに任せきりにすれば欧州の将来は大変なことになるとここで欧州人は悟ったのである。そして欧州人はこの時、米国が言っている安全保障の本質を理解したのである。その結果、欧州の米国従属からの独立のための具体的行動が始まったのである。
しかしながら当時すでに世界で唯一の超大国であった、米国の欧州大陸における影響力を弱めることは簡単ではなかった。そこで欧州国家が真っ先に取り組んだことは、今まで各国が共同で取り組んでいた統一経済圏の設立の取り組み、即ちヨーロッパ共同体(EC)を政治も含めた擬似国家=欧州連合EUへの格上げであった。これは米国という超大国に対して欧州国家個別に交渉したのでは、まったく効果がないという欧州国家の共通認識に立った上での英断であった。しかしながら古くからそれぞれの固有の言語と文化をもつ欧州国家が一つにまとまるということは簡単な作業ではなく、多くの労力を割かねばならなかった。しかしながら米国の干渉から独立自主を勝ち取るという崇高な共通目標達成にために各国は譲歩と協調を重ねついには欧州連合EUを樹立したのである。それは1993年のマーストリヒト条約の発効、及び2002年の共通通貨ユーロの運用を持って完成したのである。それではその意義はどこにあるのであろうか?これは如何に欧州における、米国の干渉を弱体化させ、自らの自主権を奪回してきたかという観点から評価すれば良く分かる。欧州国家はEUの機能を強化するにあって、自前の通貨と安全保障体制の確立が最も重要であると考えていた。しかしながらその二つを同時に成し遂げることは、超大国である米国との間に軋轢が発生し、同国を敵に回すことを意味しており、それは絶対に避けなくてはならないという慎重な対応を迫られてきた。そこで議論に議論を重ねた結果が、EUの現体制の選択であった。即ち、軍事力はロシア及びテロ支援国家を仮想敵国としてNATO体制の維持と推進、一方通貨のついては、ドル体制からの離脱を明確にしたのである。そして米国が標榜する新資本主義に代わる、経済発展の柱が欧州市場の統合による新規公共事業投資の拡大とそれを支援する域内通貨ユーロ体制の推進なのである。これは簡単に言うと、キリスト教という統一基盤の上に経済力やインフラに格差のある国家が一つの擬似共同国家を設立し、域内の発展途上国地域に優先してインフラ基盤を強化するための資金を投入することで、EU自体の経済を発展させるという、政策である。ただしその場合は成果の上がるインフラ投資を厳密に判断して、必ず効果が上がるプロジェクトに絞って投資するという、復興経済型の投資を優先するものであった。そして外需即ちドルによらない、EU内の内需の拡大による経済発展を目指したのである。
この壮大の取り組みの成否は今の所、はっきりしないが、少なくとも今回の米国発の不況に対する抵抗力を見る限り、成功していると思う。即ち欧州国家の米国からの経済的自立はユーロの正式運用をもって成功したと断言してよいと思う。
ここで話を東アジアに戻す。前号で示した通り、ガイトナー長官は米国政府の代表として単独で中国を訪れ、ドル国債の購入の拡大を依頼し、危機に瀕しているドルの信認への支持を懇願した。そしてそれに対して胡錦濤主席は前向きに応えたようである。中国としては14億の人民を豊かにするために、ドル体制の受け入れは極めて効果的であると判断しているものと思う。一方米国との関係強化を図るに当たり、米国が東アジアに確保している軍事基地の存在はきわめて大きな脅威である。しかしその撤廃を交換条件としてのドル体制維持をすることは、プライドの高い米国を刺激することとなり、好ましくないと思っている筈である。そして今両国の関係は一つの膠着状態を迎えている、即ち財熱武冷の状態なのである。
私はこの財熱武冷の歪な関係を打破することに、我国の役割があるのではないかと思っている。即ち財においては日本のとるべき道は米ドル基軸通貨体制を過去と同様に支持し当事者の一国として積極的に推進を図るとともに、一方で武において中国が最も脅威と感じている沖縄基地の縮小、撤廃を我国が主権国として米国に提案することが極めて効果的であると思う。そしてそれは、中国の参加を得て、ドルとユーロによる、二極指導体制という新たなる体制作りの序章となるものであると思う。そして日本の新たらしい役割は米国と中国という2大強国の間の緩衝地帯として役割を効果的に演出し双方の調整者として機能していくことではないだろうか?
中国と日本の間には1500年以上の交流があり、お互いに理解しあえる十分な文化的基盤があることは言うまでもない、一方米国との間の交流もすでに150年以上なり、とりわけ戦後の65年弱に渡って築き上げた、絆は厚いと思う。今こそ、日本は新たな時代のドル経済体制の構築を米中両国に提案し、EUに背をむけられた米国と中国も参加した形での共存する道を提案し、推進するべきではないだろうか?そしてドル、ユーロ、その他の体制が共存する多極化の時代21世紀を乗り切るべきではないだろうか?
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