« 新脱亜論 米国は本当に信頼を置くべき海洋国家なのか? Vol.201 | Main | やはり政府が嘘をついていた? 領海問題 Vol.203 »

June 04, 2009

何が詐欺で、どこが博打なのか? クレジット・デフォルト・スワップ Vol.202

GMが破綻した、巷では破綻の原因を評論する数多くの情報が交錯しているが、その中で6月3日の日経ビジネスに神谷秀樹氏のコラムは今回の破綻劇の真実をついていると思う。
下記にWEBアドレスを提示して置くので、参照いただきたい。

日経ビジネス 神谷秀樹氏 6月3日

ところで今回のキーワードとしてCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)というのがある。クレジットとは貸し手から見た債権のことである。一方デフォルトとは、これは借り手から見ての債務不履行を示している。そしてスワップとは交換という意味にて、債権とその債権の債務不履行を交換するという、我々庶民にはなんとも理解しがたい単語である。そこで具体的にどういうことかというと、ある特定の金融機関がある企業に融資を行った場合、当然その融資資金の返済を求めることになるが、昨今の経済情勢では貸し出した資金の返済が滞る事態もあり得る。そこで今までであれば、銀行は貸し倒れを見込んだ部分を別途貸し倒れ引当金として積み立ていざ債務不履行が発生した時に充当するために用立てて来た。しかしCDSではその貸し倒れ引当金の積み立ての代わりに、この債権を証券化して、そこにCDSという債務不履行時には、保険会社が債務者に代わって、全額を補償するという損害保険を付保することで、債権の保全を図る仕組みである。もちろん証券化した債権の債務者(会社)の財務内容によって保険料が異なり、いわゆる財務内容が悪い危ない会社の債権証券への保険料は高く、逆に財務内容が良い会社の保険料は低くなるようである。

ところで今回のGMについて言えば、神谷氏のコラムにあるように、GMの社債を購入した債権者は、購入と同時に社債金額の満額が保証されるCDSに入っており、その結果GMの社債が経営破たんに陥って、半額或いは一部しか償還できないことよりも、いっそGMが倒産して、その結果債務不履行に陥り、CDSの保証による保険金の支払いを受けたほうがましとの判断が働いたようである。結果として多くの債権者は満身創痍のGMが苦境に陥ったことに対し、ステークホルダー(同じ船に乗った仲間)として、救いの手を差し伸べ一定金額の債権を放棄することに同意はせず、GMの経営陣が訴える窮状にはまったく耳を貸さずに最後まで突っぱねたのである。報道によるとこれは米国政府が提出した妥協案により最終的には解決したようであるが、果たして実態はどうであるのか、いまだ不明点は多い。

事実は上記の通りだが、よく考えてみると不可解なこともこのCDS絡みに起こっている。というのはこのような債権の証券化により、果たして債務者であるGMの債務は解消されたのであろうか?或いはGMはどうして他人から借り入れた借金の返済を免除される権利が得られるのであろうか?本来ならば、GMが借り入れた借金の債務はこのCDSにより債権者から保険会社に渡り、保険会社が新たなる債権者となって引き続きGMから取立てを行うはずであるが、このことへの議論は皆無である。ということはもともと返済する気持ちがない債務をGMは負ったということになるのであろうか?ここに大きなモラルの低下を感じてしまう。

ところでこのCDSの発行者は一体誰なのか、それは一連の報道で明らかにされたように、保険会社であるAIGグループや住宅むけ金融機関である、フレディーマック、ファニーメイそして破綻したリーマンブラザースなどの投資銀行である。彼らは一応それぞれの業種別にくくられているが、金融業務の自由化が進んでいる米国では、たとえ投資銀行といえども保険業務を遂行できるのである。ただしCDSについていえば当然のことながら、その性質から言って、保険会社のAIGがその元締めとして、最も大きな市場シェアをもっている。その結果先のリーマンショックの際に多くの債務不履行が発生したために、CDS保険を発行した、AIGには多額の保険金の求償が一挙に集中し、結局米国政府の救済を仰ぐことになり、それにより皆一息ついた経緯があることは既報の通りである。

ここで少し考えるともう一つおかしなことがあることに気がつく、それはなぜ自己責任を常に標榜している米国政府がことAIGや同様にフレディーマックやファニーメイについてはすぐにあたかも準備していたかのように救済を発表しそれを実行に移したのであろうか?ここになにか背景となる裏事情が存在していると思わざるを得ない。基本的に保険の仕組みというのは、過去に発生した損害を招く事故の発生率をもとに、それに事故の補償料の総額そして利益や手数料を加えた上で、保険金金額を取り決め、それを需要家の販売するというものである。という事は事故の発生率が過去の実績内であれば、保険会社が破綻することは通常ありえない。そしてその計算上の事故発生率に対して、実際の事故の発生をその圏内に納める為の環境作り、即ち安全保障と危機管理は、基本的に国家の仕事である。これはたとえば、航空機事故についても各国政府は航空会社に対して国の規定に基づいた安全管理マニュアル準備させ、それを決められたとおり履行させる義務をおっている。その結果発生する航空機事故の発生は抑制され、想定外の事故以外は防げるということになる。そしてこの安全保障環境が保証され、業務が正常に運用されて始めて保険業が事業として成り立つのである。それならばCDSについても、しっかりとした金融市場のルールをつくり、その運用を徹底させることは各国政府の役割であり、それが正常に運用されることで初めて金融における事故即ち債務不履行の発生が規定の数値内に収めることが可能なのである。

しかしながら現実は違った。GMについて言えば、米国政府はGMという巨大会社がどんどん資金を使用して海外に投資することを奨励した、そして同社のトップはいつも口では技術革新とか省エネ車の開発をすすめていると大見得をきっていたが、実際は何もしていなかった、しかし米国政府は同社に資金を提供し続けてきた。どうしてそれができたか、それはCDS保険を最大限利用したからである。しかしどう見ても経営の改善が望めない会社にCDSを付保して資金を貸し付けることは、それが近い将来の破綻を招くことは予想しなかったのであろうか、そしてそれをどうしてコントロールしなかったのであろうか?ここに大きな疑問が残る。そしてその疑問は、こう考えると回答を得られる。即ち米国政府の本当の目的は製造業であるGMの経営安定よりも、GMを破綻させないこと或いは破綻をできる限り遅らせることでCDSを発行しているAIGや住宅金融会社の経営をできる限り拡大させ、長期に安定化させることにあったのではないだろうか?ではなぜそこまでして、彼らを守る必要が有るのであろうか?

もう少し現状への理解を深めてみたい。日本でも今や債権の証券化は常識となっており、当然CDSも広く普及している。しかしそれらのCDS供給先の大半は米国のCDS保険がそのまま使用されているのである。そして本来国内の円建てである債権が証券化によってドル建てに変えられ、CDSの付保を受けているのである。結局日本の銀行が借り手である顧客に融資をした部分が証券化され、外資系の投資銀行に証券としてわたり、そしてそれにCDSが付保されているのである。このことは日本の金融ビジネスは多くが米国金融街が提供するCDSのシステムに依存しており、本来日本の金融機関が伝統的手法で手にすべき富の多くが米国に持ち去られていることを意味しているのである。そしてそのことを見てみぬ振りをして容認しているのが今の自公および親米派官僚により構成されている政府なのである。一方邦銀はこの制度の受け入れにより、不況下でも貸し倒れのリスクから解消されたものの、巨額CDSの保険料や証券化の手数料を外資に支払いを余儀なくされており、経営を圧迫させられているのである。

先にAIGに巨額な支援をした米国政府はどういう意図のもので資金を供給したのであろうか?当時を思い起こすと、もしAIGが破綻して同社が付保を受け入れたCDSが無効となったら世界中の多くの証券が無価値となり、大きな問題となるとのマスコミ発表があり、その結果世界中が大騒ぎをして、米国政府の支援が何の反対もなく円滑に進んだことがあった。しかし今思うとそのやり方は大きな間違いであったのではないだろうか?結果としてその救済によりAIGは生き残り、いまだに世界中の金融機関から巨額の保険料をもらい続けているからなのである。そしてすでにそのからくりに気づいた、即ちAIGは絶対につぶれないという神話の存在に気がついた、世界の金融機関や投資家は、一斉に何の躊躇もなく、彼らがGMに対して行ったように、多くのまじめだが、経営が苦しい企業に金銭的、精神的な支援をして自助努力を期待する、やり方を無駄と感じ、逆に積極的に倒産を勧め保険金を獲得するように誘導し、目先の利益の確保に努め始めたのである。

ここまでこの稿では、CDSが如何に深く世界の金融市場に食い込んでいるかについて、事実を指摘してきた。その結果理解できたことは、かつて世界が受け入れたかに見えた新資本主義の目的とは、唯一の超大国である米国が所有する圧倒的な軍事力を背景として、米国政府とニューヨークの金融街の支配者が共謀して、グローバルスタンダートという米国基準の安全保障体制と危機管理方法を一方的に他国に押し付け、その上で各国の金融市場を強引に開かせ、同時に金融街の保険会社と投資会社がそれぞれに市場に乗り込み、独占的にハゲタカの如くすべてを食い荒らして金儲けをたくらむ、米国の政保投による支配体制の構築であったのである。いやもっとはっきりと指摘しよう、米国はドル金融支配者が大統領をそして政府を操る、まさしく金融帝国主義国家なのであり、決して我々が教科書で教えを受けた、民主主義国家ではないのである。実は米国が先の大統領選で初めて黒人の大統領を受け入れた背景もここにある、ブッシュ前大統領の数々の判断ミスにより世界は金融恐慌に陥り、ドル金融体制が大きく揺らいだ、このことを教訓として、ドル金融の支配者は、それまでのアングロプロテスタント絶対至上主義に限界があることを悟ったのである。すなわちWASPでは彼らが期待する、米国の金融帝国主義の維持は適わないと判断したのである。そして彼らの野望を彼らに代って実現する、執事であり下僕である国家の領袖に黒人であるオバマ大統領を受け入れたのである。これはまさしく反対側の隣国のかつての領袖の有名な言葉である、白猫、黒猫論とまったく同じことである。すなわち従来の白猫では必要とする役割をまっとうできないことが分かったドル金融の支配者は、今その役割を黒猫に求めたのである。

しかしながら、リーマンショック以来、世界は大きく変わりつつある、今まで世の中の主流をなす企業は、米国性善説の立場をとり、この米国が提唱する新資本主義を通じてドルの覇権体制を受け入れてきたが、米国政府の安易な保険会社救済をきっかけに、その本質が暴露され、今まで世界の金融市場において保たれていた規律と調和が一挙に崩れ始めている。その結果、それぞれが世界のドルに対する信認は急速に低下して、それぞれが自分にとって都合の良い好き勝手な方向に進路を切り始めたのである。そうなると今までのウオール街による世界金融の一元支配は難しくなり、米国政府やその傀儡の日本政府はその体制維持のために、今まで以上にドルや円資金の投入を余儀なくされる。そしてその結果ドル国債自体が過度の赤字債発行により破綻を招き、債務不履行となる恐れがあるのである。しかしその時には、すでに米国債にCDSを付保する保険会社は破綻して存在していない。そうなるとドルの価値は暴落し、国家破綻を除くと唯一の合法的に不履行を容認する手段である、戦争による免責を求めるしか策はなくなるのである。この事実を知るにつけ、今後の世界に対して極めて大きな不安を感じるのは私だけであろうか?

|
|

« 新脱亜論 米国は本当に信頼を置くべき海洋国家なのか? Vol.201 | Main | やはり政府が嘘をついていた? 領海問題 Vol.203 »

ポスト強欲資本主義」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/76174/45229638

Listed below are links to weblogs that reference 何が詐欺で、どこが博打なのか? クレジット・デフォルト・スワップ Vol.202:

» ディズニー クレジット [ディズニー クレジット]
ディズニー クレジット [Read More]

Tracked on June 07, 2009 at 18:06

» 自転車でエコ生活! [自転車でエコ生活!]
自転車を使ったエコ生活を紹介するブログです。自転車のエコ生活を楽しむための知識やノウハウなどを初心者にも分かりやすく解説しています。 [Read More]

Tracked on June 16, 2009 at 07:50

» ジテツー [ジテツー]
ジテツー(自転車通勤)の良さは、身体の健康、心の健康、環境にやさしいの3つです。ジテツーの楽しみ方を紹介するブログです。 [Read More]

Tracked on June 16, 2009 at 16:18

» エアコン 激安 [エアコン 激安]
エアコンの激安情報を多数掲載していきます☆ 一年を快適に過ごすためのエアコンを激安で購入しちゃいましょう♪ [Read More]

Tracked on June 16, 2009 at 20:00

« 新脱亜論 米国は本当に信頼を置くべき海洋国家なのか? Vol.201 | Main | やはり政府が嘘をついていた? 領海問題 Vol.203 »