やはり政府が嘘をついていた? 領海問題 Vol.203
本日の信濃毎日新聞に驚くべき記事があった。それは我国の領海規定において、政府は米政府の意向を受けて、同国の原子力艦艇の周辺域の自由な航行を認めるために、意図的に当時少数派であった領海3海里を国民に提示して、彼等の自由な航行を保障したという記事である。まずは同記事を転載する。
核通過優先で5海峡の領海制限 元外務次官証言06月21日(日)16:27
政府が宗谷、津軽など五つの重要海峡の領海幅を3カイリ(約5・6キロ)にとどめ、法的に可能な12カイリ(約22キロ)を採用してこなかったのは、米軍の核搭載艦船による核持ち込みを政治問題化させないための措置だったことが21日、分かった。政府判断の根底には、1960年の日米安全保障条約改定時に交わされた核持ち込みの密約があった。複数の元外務事務次官が共同通信に証言した。
これらの海峡は、ソ連(現ロシア)や中国、北朝鮮をにらんだ日本海での核抑止の作戦航行を行う米戦略原子力潜水艦などが必ず通らなければならないが、12カイリでは公海部分が消滅する海峡ができるため、核が日本領海を通過することになる。
このため、核持ち込み禁止などをうたった非核三原則への抵触を非難されることを恐れた政府は、公海部分を意図的に残し核通過を優先、今日まで領海を制限してきた。表向きは「重要海峡での自由通航促進のため」と説明してきており、説明責任を問われそうだ。
外務次官経験者によると、領海幅を12カイリとする77年施行の領海法の立法作業に当たり、外務省は宗谷、津軽、大隅、対馬海峡東水道、同西水道の計5海峡の扱いを協議。60年の日米安保改定時に密約を交わし、米核艦船の日本領海通過を黙認してきた経緯から、領海幅を12カイリに変更しても、米政府は軍艦船による核持ち込みを断行すると予測した。
そこで領海幅を3カイリのままとし、海峡内に公海部分を残すことを考案。核艦船が5海峡を通過する際は公海部分を通ることとし、「領海外のため日本と関係ない」と国会答弁できるようにした。
現在中国とは東シナ海の海底油田において、虚実織り交ぜた交渉を繰り広げているが、実際に領海の問題というのは国民の財産である資源の確保という意味合いで極めて重要な事案である。しかしながら上記の記事が事実であるとすると、時の政府は国民に嘘の説明をした上に、国民の貴重な財産までも米国の利益のために放棄したということであり、上記記事が指摘する通り、これは極めて大きな問題である。
一方でどうして当時の日本政府は、そこまで国民を軽視した政策をとらなくてはならなかったのかと考えれば、日本が米国の要請に基づき、日米安全保障条約を締結したことにより、日本の安全保障を米国軍を受け入れる形で確保したことにより、その結果として日本の経済発展を意図したものと理解することは可能である。実際1960年代といえば、冷戦という東西対立が最も激しく、西側諸国にとってもソ連や中国の軍事的脅威に常に備える必要が有り、その意味では地理的に直接ソ連、中国という2大大国に対峙している。日本の安全保障を確保して経済発展優先政策を採ることは、お隣の韓国、台湾とともに極めて重要な政策であったことは理解できる。そして政府はことの軽重と自ら判断して、国民に対して嘘をつくことも辞さないという決定を下したものであるとして好意的に捉えている。しかしながらそのことは今、冷戦が終結し、東西対決もなくなった今、今後は日本国の独立自主の確保という点で大きな障害となっていることは、事実であるし、これが今の日本に閉塞感をもたらしている最大の問題点であると思う。
実際ソ連、中国という目に見えた敵国がいなくなった後の日米安保条約は基本的に意味を成さなくなり、巨額な費用を掛けてまで米軍を駐留させる必要性がなくなっている。現在北朝鮮の核兵器および大陸弾道弾ミサイルの開発問題に対して日本政府は大さわぎをあおっているが、実際にそれらが使用されるということは即、同国の滅亡を意味していることは誰の目にも明らかであり、逆にそのためだけに安保条約を維持して、米軍の日本駐留を認め、かつ多額の資金を支援することが目的とすれば、現在の赤字財政下の日本には極めて大きな負担を強いるものであり、今のように費用を掛けず、軍事費を外交にお聞かせ経費を節約した、日米安保に代わる新たなる国家安全保障政策をとることが急務になっていると考えるべきではないだろうか?
実際に米国および世界はベトナム、アフガン、イラクという合い次ぐ軍事侵攻の失敗(アフガンはまだ継続しているが)により、もはや軍事力だけで自らの思いを実現することはできないことを良く分かった筈である。その上、経済においては、サブプライムローンよる住宅バブル頼みの、米国の金融政策もリーマンショックを持って破綻し、今米国が頼れるのは、それでもドル国債に信認を持ち、売却せずに購入してくれる日本と中国のみなのである。特に現在でも高度経済成長を実現している中国の存在こそが米国にとって重要であり、そうなると日米安保による、中国の仮想敵国視は現在では意味を持たないばかりか、米国にとっても障害となっているのではないであろうか?
実際に最近の米国は北朝鮮に対しても宥和政策を採り続けている、結局これは米国が積極的に政策転換をしたというのではなく、金融危機の正しい対処による米ドルの価値維持に全精力を傾けなくてはならず、北朝鮮のことなど構っていられないというのが本当のところであろう。
私たち40代の世代は、外国といえば米国と教わってきた、そして米国の標榜する自由と民主主義の社会は絶対であると信じさせられてきた。そしてすべての教育はその米国の関係維持をすべてに優先した偏ったものであった。今になってそのことの行き過ぎに気がつきつつあるが、一つの考え方を絶対視したことで貴重な時間と機会を逸失してしまった。即ち米国とも仲良く適切に付き合いをしながら、他の周辺国とも同様に付き合いをしていく術と智恵を忘れてしまったのである。
今世界は米国一辺倒で行き詰まりを見せている日本国民が次の総選挙でどのような決断をするべきかを固唾を呑んで見守っている。そして仮に政権交代が実現した場合、米国とどのような距離を保ち、近隣諸国とどれだけ近づけるかに注目しているのである。そのためにはまず政権交代ありきではなく、外交においても明確なメッセージの発信が必要なのではないだろうか?民主党は敵失ばかり狙っているのではなく、外交において一歩進んで自らの方向性を皆に見せるべきであると思う。
この稿の最初に戻りたい、今になって当時の複数の外務次官経験者が我々およびその後の世代のために勇気を持って事実を伝えてくれたことを我々は賞賛し、これに真摯に応えるべきである。そして我々の近隣諸国が我国の領土に米国軍が無条件で居座り、我国の政府と国民がこれを容認していることが、如何に大きな脅威を与え、その結果正常な国交関係が保たれないのか、この点を理解すべきである。そしてそれが障害と分かれば、ここは国民の智恵を結集して日米安保体制の見直しをして、改善を図るべきではないであろうか?これこそが戦後の総決算であり、21世紀を日本が生き延びるための方策であると考えている。
| Permalink
|
「ポスト強欲資本主義」カテゴリの記事
- 足るを知らない米国が恐れる、刷り過ぎ、作り過ぎ、掘り過ぎ。Vol.220(2010.03.28)
- 金融街が狙っている日本の破産 Vol.219(2010.03.13)
- なんとも歯切れが悪い竹中節 Vol.210(2009.08.07)
- こうして、マスコミは世論を誤った方向に誘導する。Vol.209(2009.07.20)
- どこまで能天気なのか? 防衛白書 Vol.208(2009.07.18)



Comments